第59話 試合当日
試合当日の朝。
普段よりも早く目が覚めたのは、遠足の子どもみたいに浮かれていたからじゃない。胸の奥に、ざらりとした不安と緊張が張り付いていたからだ。
洗面所の鏡に映る自分の顔を見て、思ったより冷静な目をしてるな、と思った。
(やれる。ちゃんと、やれる……)
呟くようにして自分に言い聞かせ、ユニフォームに袖を通す。いつも着ている筈なのに、先輩たちの今後にも関わる可能性があるからだろうか、普段よりも重く感じた。
◆
バスでの移動中、チームの空気は普段とそれほど変わらなかった。
猫宮先輩が何でもないような顔でチョコレートを口に放り込み、佐野先輩がそれを注意しながらも笑っている。後ろの席では金城先輩と神宮寺先輩がタブレットで相手校のデータを見ていた。
そんな中で俺だけが、ひとり空気に溶け込めていないような気がしていた。
けど、不意に――
「なぁ風間」
隣の席の佐野先輩が、俺の肩を軽く叩いた。
「顔こわばってんぞ? お前が緊張してると、こっちまで固くなる。そんな気張らなくていいから、俺たちを信用してリラックスしろ」
「……すみません」
苦笑いしか返せなかったけど、心の中で少しだけ力が抜けた気がした。
(俺は一人じゃない)
◆
球場に着くと、北西高校のバスもほぼ同時に到着していた。
荷物を下ろして整列している中、ちらりと視線を感じた。
そっちを向くと、いた。
安藤――俺にとって因縁深く、アイツにとっても俺や早実は忘れられない相手だろう。
奴は北西の選手たちに囲まれて中心に立ち、俺を見つけるなりにやりと笑った。
そして、声を張るでもなく、こちらに聞こえるようにだけ、ぼそっと口にした。
「……今日が一軍デビュー戦らしいな。精々恥かかないように注意するんだな!」
すれ違いざま、肩がかすかに触れる。
「まあ、お前のことはよく知ってる。だからこそ、さっさとぶっ潰してエースを引きずり出して、俺を追い出したことを後悔させてやるよ」
憎悪のこもった声に、思わず顔をしかめるが、俺は言い返さなかった。
(こいつとここで、言葉で勝つ必要なんてない)
今の俺が見せるべきは、口じゃなく――マウンドでの姿だけだ。
◆
グラウンドに出ると、スタンドには早実の応援団の姿が見えた。
その中には、二軍のメンバーである春日、大野、そしてマネージャーである小春の顔も見える。
春日が気づいて、軽く拳を突き上げた。俺も、小さくうなずき返す。
(……やるしかない)
この場所に立たせてもらった意味を、俺が証明する。
安藤の言葉も、上層部の思惑も、すべてを結果で黙らせる。
そのために、俺はここにいる。
(行くぞ)
ゆっくりとマウンドへ向かう。
スパイクが土を噛むたびに、体の芯が研ぎ澄まされていくのを感じた。
今日――すべてを塗り替えてやる。
<ステータス>
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名前:風間 拓真(Kazama Takuma)
ポジション:投手(左投左打)
球速:134km/h
コントロール:D(53)
スタミナ:D(55)
変化球:ストレート2,カーブ2,
スクリュー2,
ジャイロカッター1
守備:D(53)
肩力:D(57)
走力:D(54)
打撃:ミートD(51)、
パワーE(49)【↑】
捕球:D(51)
特殊能力:元天才・逆境○・
ピッチングの心得(Lv2)・
継続○・意外性・対強打者○・
打撃センス○・
ノビ◎・
強心臓・
スライディング・
未来への一歩・
選球眼・リベンジ・
負けないエース
成長タイプ:元天才型
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