第57話 鬼島監督が見た上層部の闇(2)
薄暗い会議室に、重苦しい空気が漂っていた。
長机の先には、教頭をはじめとする上層部の面々。そしてその脇には、一軍監督の平間が静かに座っている。
俺は、2軍監督として黙って着席した。
これが、次の試合のメンバー選考を含む“確認会議”であることは分かっていた。だが、それ以上に――何か嫌な予感があった。
「さて、次戦は都立北西高校ですね」
教頭が開口一番、そう口にすると、平間がうなずく。
「ええ。夏予選でも一定の成績を出している学校ではありますが、格下であることに違いありません」
その言葉に、俺はほんのわずか眉をひそめた。
しかし、会話はさらに続く。
「北西高校といえば……たしか、以前こちらにいた特待生が在籍しているんでしたかね? 鬼島監督」
別の上層部の男が、そう口にした瞬間――背筋がこわばる。
「安藤、ですね」
平間が口を開いた。
「素行不良で処分となり、特待契約も解除していますね。最終的に転校。いまは北西のエースとして活躍している……とのことですよ」
言葉に感情はない。ただ、報告書を読み上げるような調子。
「それなら、ちょうど良い。話題性もある。安藤と因縁のある選手……風間くん、でしたか? 今ネット上でも話題を集めているあの子を先発させましょう。1回戦で彼を出さなかったことで、スポンサーからも苦情がきてましたしね」
教頭のその提案に、平間は作り笑顔になりながら大きくうなずいた。
「それは名案です! 風間は将来有望ですし、今のうちに注目を集めておくのもきっといいですね! 流石は教頭先生!」
俺はそんな教頭を全肯定する言葉に、低く、だがはっきりと声を発した。
「……待ってください。風間はまだ、調整段階です。まだ公式戦での経験は無い。安藤との因縁だけで先発させるのは、リスクが大きすぎる。その上、彼は安藤との一軒で心に傷を負っているかもしれないんですよ」
だが、その忠告に、誰一人として真剣に耳を傾けようとはしなかった。
「リスクや心の傷? 何か問題でも?」
「きっと大丈夫ですよ、仮に風間なにがしが安藤とやらに負けても、金城へ交代すれば余裕でしょう。彼なら、1点たりとも許さないでしょうし、ウチの打線なら特待崩れの1年生如き、簡単に打ち崩すでしょう」
「むしろ、そうであって貰わなければ我々としても安藤を切った意味がありませんしね。精々選手達には頑張ってもらいましょう」
そんな風に笑い合う上層部の男に、言葉を失った。
風間も、金城も――選手達一人一人が、真剣に野球に向き合っている生徒たちだ。
それを「話題性」だのなんだのと、まるで道具のように語る大人たち。
気が付くと拳が自然と握られていた。だが、それをぶつけたところで何が変わる。自分が所詮は二軍監督にすぎない事が悔やまれた。
深く息を吐き、唇を噛みしめながら、最後にひとことだけ告げた。
「――あなたたちは、選手を“人”として見ていない」
それだけを残し、俺は椅子を立った。
背後で誰かが「まあまあ」となだめる声が聞こえたが、もはや耳に入らなかった。
廊下に出ると、冷たい空気が肌を刺した。
(……風間。俺は、お前を守りたいと思ってる。だが同時に――)
拳を握り直す。
(お前がこの状況を、力で覆してみせるなら。それもまた、正しい戦い方だ)
<ステータス>
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名前:風間 拓真(Kazama Takuma)
ポジション:投手(左投左打)
球速:134km/h
コントロール:D(53)
スタミナ:D(55)
変化球:ストレート2,カーブ2,
スクリュー2,
ジャイロカッター1
守備:D(53)【↑】
肩力:D(57)
走力:D(54)
打撃:ミートD(50)、パワーE(48)
捕球:D(50)
特殊能力:元天才・逆境○・
ピッチングの心得(Lv2)・
継続○・意外性・対強打者○・
打撃センス○・
ノビ◎・
強心臓・
スライディング・
未来への一歩・
選球眼・リベンジ・
負けないエース
成長タイプ:元天才型
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