第56話 宿敵
試合を終えた翌日、俺と春日は次戦の対戦校の偵察として、近隣の球場に足を運んでいた。
陽射しは強く、汗が首筋をつたう。観客席に座ると、ちょうど試合の中盤に差し掛かっていた。
「結構点差ついてんな……あっち、今リードしてるのが北西か」
隣で、春日がスコアボードを見上げながら呟く。
「ああ。……3対0。なかなか守りが堅い」
マウンドに立つ投手のフォームに目を凝らした瞬間、心臓がひとつ大きく跳ねた。
（……あれは）
少し長めの前髪をキャップの下から覗かせながら、鋭く腕を振るその姿。
――安藤。
同じ早実の二軍として入った同級生であり、俺にとって――絶対に負けたくない相手。
「ん？もしかしてアイツ……」
春日が俺の表情の変化に気づいたのか、ジッとマウンドを見て目を見張る。
「……ああ。まさか、こんな所に居たんだな」
言葉にした瞬間、喉の奥に苦味が広がった。
「……因縁ってやつだな」
春日の口調はいつもと違い、苦々しげだった。
「以前と違いフォーム、無駄がないな。球も切れてる。……俺たちも、かなり分析しねぇと」
スライダーで三振。
伸びのあるストレートで内野ゴロ。
最後は、ナックルで空振り三振を奪い、あっさり三者凡退で抑えてみせた。
「相変わらずナックルの落差はすごいな。キャッチャー誰なんだ？ 構えも結構独特だな……」
春日が目を細めて観察している。
試合終了のコールと同時に、北西高校の応援席から拍手が巻き起こる。
「どうする？ 帰るか？」
春日が立ち上がりながら言う。
「ああ……」
そう言った直後だった。観客席から立ち上がり、グラウンド脇へと向かう俺に、低い声がかけられた。
「……嗅ぎまわっている犬が居ると思えば、てめぇらだったか」
背後からかけられた声に振り返ると、タオルを首にかけた安藤が立っていた。
以前より身体が一回り大きくなっている。だが、その目は相変わらず、挑発的で――冷たい。
「しっかし、てめぇも大変だな。実力も無いくせに1軍なんて上がっちまって」
皮肉たっぷりに言いながら、口角をわずかに持ち上げる。
「せいぜい公式戦では、お飾りでもやってろよ」
喉の奥が熱くなる。悔しさが、背中をじわじわと押し上げてくる。
だけど俺は、言い返さない。ただ、じっと相手の目を見据えた。
すると安藤は、少し顎を引きながら一歩近づいてきた。
「いいか、風間。次の試合で、俺たちがテメェラに勝ったら――今度は俺が注目される番だ」
その目には、ただ勝ちたいだけじゃない、もっと深くて尖った感情が宿っていた。
「お前が持ってる“期待”も“注目”も、俺が全部ぶっ潰す。……それと、俺を追い出した“早実”もな」
安藤の声は、低く静かに、だが鋭く突き刺さってくる。
「じゃあな。テメェは精々ベンチでも温めてろよ」
そう言って、安藤は肩をすくめるようにして去っていった。
胸の奥が、冷たくなる。
言葉よりも、その背中の余裕が――何より悔しかった。
（……奴が言うようにまだ、公式戦では何も証明できてない）
歯を食いしばる。
（俺も、絶対にマウンドに立つ。――お前を、真正面から叩き潰すために）
静かに、拳を握りしめた。
「風間」
ふいに背後から声がした。振り返ると、少し離れた位置で春日が立っていた。
「……アイツが追い出されたのは自業自得だ、気にすんなよ」
「……ああ」
苦笑混じりの声。でもその中に、明確な怒りがあった。
「言われっぱなしでお前が悔しいのもわかる。でもな、風間――」
春日は一歩、俺の隣に立って、真っ直ぐ前を見た。
「お前ならきっと、あんな奴より上に行ける筈だ」
その言葉に、胸の奥がかすかに熱を帯びた。
「……ああ。必ず」
声に力を込めて返すと、春日はニッと笑って背中を軽く叩いてきた。
「よし、じゃあさっさと帰って、準備しようぜ」
夏は、まだ続いている。
そして、戦いも――まだ始まってすらいない。
<ステータス>
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名前：風間 拓真（Kazama Takuma）
ポジション：投手（左投左打）
球速：134km/h
コントロール：D（53）【↑】
スタミナ：D（55）
変化球：ストレート2,カーブ2,
スクリュー2,
ジャイロカッター1
守備：D（52）
肩力：D（57）【↑】
走力：D（54）
打撃：ミートD（50）、パワーE（48）
捕球：D（50）
特殊能力：元天才・逆境○・
ピッチングの心得(Lv2)・
継続○・意外性・対強打者○・
打撃センス○・
ノビ◎・
強心臓・
スライディング・
未来への一歩・
選球眼・リベンジ・
負けないエース
成長タイプ：元天才型
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