第52話 合宿の成果と決着
最終回。5回表、1軍の攻撃。
マウンドに上がったのは、春日とバッテリーを組む野村先輩だった。
一軍側ベンチで見ている俺の目にも、先輩の投球は冴えて見えた。テンポよく投げ込み、緩急でタイミングを外す。鬼島監督の指示でスタメン以外と入れ替わった一軍打者たちは裏をかかれ、あっという間に三者凡退してしまった。
春日のミットは、淀みなく野村先輩の球を受け止めている。
(……やっぱ、うまい)
配球の意図が分かる。ちゃんと打者の傾向も読んでる。俺と初めてバッテリーを組んだ時よりも確実に散歩して見えた。
そして、5回裏。1点リードのまま、試合は最後の守備を迎える。
ゆっくりと息を吸い、吐くとマウンドへと歩みを進める。
合宿前なら、ここで緊張に足がすくんでいたかもしれない。でも今は違う。走り込みも、ブルペンでの反復も、フォーム修正も、全部が繋がってる。体が、ちゃんと前より応えてくれる。
佐野先輩が構えた位置に、狙い通りの球を投げ込むイメージを重ねる。
一人目。初球、インコース高めのストレート。
「――ッ!」
俺の腕から放たれた球は、ビュッと鋭く唸りを上げてミットに突き刺さる。明らかに、以前より速い。リリースで詰まっていた力が、今は指先を通じて一直線に伝わっている。
バッターのバットが遅れ、空振り。
二球目は、同じ腕の振りでジャイロカッターを投じた。ストレートの軌道から突如変化する。
バットが空を切る。
三球目は、カーブを外角一杯に投げ込み――三球三振。
(よし……)
二人目。ここは真っ向勝負と決めた。
アウトローに構えたミットへ、真っすぐを叩き込む。グンと伸びる直球に打者は差し込まれ、芯を外した。
カツンッ。
打球はサード正面のゴロ。俊敏に処理されて、一塁へ送球。アウト。
そして、最後のバッター。
ここで俺と佐野先輩が選んだのは、急速が増したストレートで押し切る選択だった。
全ての球を渾身の力でストライクゾーンへ……しかしバッターは、3球ともバットに掠ることも出来なかった。
「スリーアウト、ゲームセット!」
佐野先輩のミットが、俺の球をしっかり受け止めていた。
ベンチに戻る途中、後ろから先輩にポンと肩を叩かれた。
「お前……ホントに良くなったな。球、伸びてるし、ストレートの質が明らかに上がった」
「……ありがとうございます」
心の奥がジンと熱くなる。
あの合宿の一球一球が、全部、今日のこの瞬間に繋がってる。
グラウンドに全員が整列し、鬼島監督が口を開いた。
「よくやった。短いイニングの中でも、今のお前たちの立ち位置がよく見えた。成長している者、足踏みしている者、まだ気づいていない者――それぞれが今後の自分のために、今日の試合を覚えておけ」
言葉は多くなかったが、重みは十分だった。
合宿は、これにて終了。
道具を片付け、荷物をバスへ運び込む。
1軍、2軍それぞれのバスが用意され、選手たちは別々に乗り込むことになっていた。
風間が乗り込む直前、背後から声がかかった。
「――風間!」
振り向くと、2軍のバスの前に立つ春日がいた。
「お前、マジで良かったな。今日は正直完敗だった」
「ありがとう。でも、そっちも……すげえリードだった」
俺は言葉を選びながら、正直に続ける。
「初めて試合で相手にして……やっぱり“脅威”だなって思ったよ。リードも、雰囲気も」
春日は少し照れたように鼻をこすった。
「俺はまだまだだ。でも――」
目をまっすぐに風間に向ける。
「また、絶対バッテリー組もうな。今度は一軍で」
「ああ」
短くうなずいた。
その握手は、堅く、熱かった。
春日が戻っていき、俺も1軍バスのステップに足をかける。
走り出すエンジン音の中、前を見据える。
次に春日と並ぶ時、どんな景色が見えるのか。
それは、今よりもっと高い場所であることだけは確かだった。
【合宿、終了】
【評価:A】
【鬼島二軍監督の評価が上がりました】
【一軍選手達からの評価が上がりました】
【ノビ◎を獲得しました。ノビ◎:打者の手元までストレートのスピードがほぼ落ちなくなる】
<ステータス>
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名前:風間 拓真(Kazama Takuma)
ポジション:投手(左投左打)
球速:134km/h
コントロール:D(51)
スタミナ:D(55)
変化球:ストレート2,カーブ2,
スクリュー2,
ジャイロカッター1
守備:D(50)
肩力:D(56)
走力:D(54)
打撃:ミートD(50)、パワーE(48)
捕球:D(50)
特殊能力:元天才・逆境○・
ピッチングの心得(Lv2)・
継続○・意外性・対強打者○・
打撃センス○・
ノビ◎【new】・
強心臓・
スライディング・
未来への一歩・
選球眼・リベンジ・
負けないエース
成長タイプ:元天才型
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