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元・天才ピッチャー、転生先では俺だけが見える“野球スキル”で無双する 〜ケガで終わった俺が、ざまぁと完全試合で夢を取り戻す〜  作者: 猫又ノ猫助
新しい世界で

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第50話 合宿2日目と肝試し

 合宿二日目。午前の練習が終わったグラウンドには、汗と土の匂いが立ち込めていた。


 いつもの球場ではなく、山奥のグラウンド。周りには自分たち以外の人の気配はまるでない――だからこそ、目の前の白球と向き合うには十分すぎる場所だった。


「……風間、ちょっと球速上がってねぇか?」


 ブルペンで投げ終えた後、キャッチャーを務めてくれていた佐野先輩がぽつりとつぶやいた。


「え、そうですか?」


「なんか、球が重くなった。……たぶんコーチたちの指導で、地盤が出来てきてた体にフォームが合うようになったんだな」


 自分でもその事は、うすうす感じていた。


 今まで無意識に投げていたリリースポイントが、少しずつ定まってきている。軸足の粘りもついてきた。


 夏の大会はもうすぐそこだ。今、自分はちゃんとそのスタートラインに立ちかけている――そんな実感があった。


 1日目同様、殺人的とも言える練習を終えて倒れていると、2年の先輩たちがなにやら裏の林に消えていく。軽い談笑のあと、手には白い布や棒のようなものを持っていた。


「……何してたんですか?」


「ん? ああ、ちょっとしたイベントの準備だよ! 楽しみにしててね~」


 そう言ってにやりと笑ったのは、2年の猫宮先輩だった。


 俺たち1年生は蚊帳の外。けれどその“準備”の正体は、夕食後に明らかになった。



「――というわけで、野球部の伝統行事、夜の特別メニュー。“1年限定肝試し”を開催する! はい、拍手―」


 食堂に響く佐野先輩の声に、1年生はざわめいた。


「ルールは簡単。グラウンド裏の神社の前に置いてある“お札”を回収してくるだけ。ペアは、くじ引きで決めてくぞー。なお、道中には何か仕掛けがあるかもなー?」


 そう言って差し出されたのは、手作り感あふれる割り箸くじ。割りばしには番号が書かれている様で、番号が同じ人同士でペアを作るようだ。


「まずは、2軍に上がってない1年からいこうか」


 そうして同級生たちが、次々とくじを引いていく。そのあとに、2軍組の1年、そして最後に俺。


(ま、誰と当たっても別に……)


 そう思って最後のクジを引こうとした所で、くじを持った佐野先輩がにやにやしている事に気づく。


「なににやついてるんですか?」


「いんや、気にせず引いていいぞ」


 そう言われて首をひねりながら引いた割りばしを見ると、番号は28が書かれていた。


「はーい、それじゃマネージャーの皆はこっちの引いてねー」


 猫宮先輩が別で用意していたらしいくじを持って、マネージャー達に差し出すと、1年生男子達はその光景をかたずを飲んで見守った。


(考えてみれば、男子に比べてマネージャーの方が圧倒的に少ないから殆どが男同士で回ることになるのか……)


 そんな事を考えている間に次々クジが引かれていき、その結果が読み上げられると男子女子共に一喜一憂していて、これだけ見ていると昼間のトレーニングが無かったかのように活気づいていた。


 そして最後、小春が引こうとした所で、猫宮先輩と佐野先輩が目配せしている様に見えたのは気のせいだろうか。


「……あっ、28番だ」


 そう言って彼女が手に持つくじを読み上げると、周囲から「くそーっ」や「おい、誰だよ28番」と言った声が上がってくる。


「あー、28番は俺だ」


 周りから落胆の声が聞こえる中前に出ると、小春が小さく笑って、こちらを見上げた。


「改めてエスコートよろしくね、風間くん」


「お、おう」


 思わず戸惑いながら、頷いた。

 


 一帯が真っ暗になった中、次々と1年生たちが出発していく。


 どうやら番号順に出発するらしく、俺たちは最後の様だった。


 ペアの小春が他の女子たちと何やら話しているので、出発を待つあいだ、俺は2軍の大野と回る事になったらしい春日と話していた。


「お前小春とか、ズルいな~。てかあれ、絶対佐野先輩と猫宮先輩が操作しただろ」


「……まさか、そんなこと……」


 そう言いかけた所で、2人のあのやり取りを考えればやっていないとは言いきれない。


「いや全然あり得るぞ。あの人達、妙にノリ良いし」


 そんな会話をしながらふと隣を見ると、大野が無言でこちらを見ていた。


「あー、どうかしたか大野?」


「……もしかして、怖がってる?」


 そう言われて思わずビクリと、体が震える。


「いや、別に?」


「ふーん」


 それだけ言って、また視線を外される。


 ――相変わらず無口だ。けど、多分あれは心配してくれてるんだろうか? 多分だけど。



 いよいよ、俺と小春の番がやってきた。


 佐野先輩から懐中電灯を一つだけ渡され、俺達は林の小道に足を踏み出す。


「……結構、真っ暗だね」


「まあ、山ですし」


「ふふ、何で敬語? 風間くん、もしかして緊張してる?」


「そりゃ……しますよ」


 懐中電灯の光が、かすかに前方を照らす。虫の声と、足元の砂利を踏む音だけが響く中、ふと、前方に何かが動いた気がした。


 ――白い人影?


「……っ!」


 その瞬間、木の陰から何かが飛び出してきた!


「うおおおおっ!!」


「うわああっ!?」


 思わずビビッて小春の肩をつかんでしまう。


 しかし、現れたのは白い布をかぶった猫宮先輩と、2軍でお世話になっていた2年の先輩だった。


「どーだ、驚いたか!」


「肝試し始まってから妙に落ち着きないから、絶対ビビると思ってた~!」


 ひとしきり俺をおちょくると、先輩たちは爆笑してその場を離れていった。


「……あの先輩たちは、ほんとに……」


 俺がため息をつくと、隣で小春が肩を震わせて笑っていて、思わず目を細める。


「あはは、ごめん、つい……あんなに真顔で驚くんだもん。すごいかわいかったよ?」


「……かわいくなくていいです」


 そんなやり取りの後は何事も無く神社につき、二人でお札を手に取る。


 しかし、そのとき、また視界の端に“何か”が見えた。


 社の裏手に、白いワンピース姿の女の人に見えて、こちらをジッと見ているような気がしたが、声をかける気にはとてもなれなかった。


「……あれ? なぁ、小春」


 そう言いつつ小春の方を見ると、怪訝そうな顔をされる。


「ん? どうかした?」


 そう尋ねられ、先ほど女性が居た所を指さそうとしたら――その場からは誰もいなくなっていた。


「……いや、なんでもないわ」


 どこか空寒いものを感じながら無事に戻って報告を済ませたあと、佐野先輩に聞いてみた。


「脅かす役に、女子の先輩とかって入ってました?」


 そう尋ねると、佐野先輩は首を傾げた。


「いんや、女子は危ないから1年のマネージャー以外全員寮にいたぞ」


 その一言に、背筋がぞくりとした。


 じゃあ――あの白いワンピースの女は、誰だったんだろうか?


 夜の山に、風がざわめいた。


 合宿所の灯りが、少しだけ遠く感じた。


<ステータス>

 ===============

 名前:風間 拓真(Kazama Takuma)

 ポジション:投手(左投左打)

 球速:132km/h【↑】

 コントロール:D(51)

 スタミナ:D(55)

 変化球:ストレート2,カーブ2,

     スクリュー2,

     ジャイロカッター1

 守備:D(50)

 肩力:D(56)

 走力:D(54)【↑】

 打撃:ミートE(49)【↑】、

    パワーE(48)【↑】

 捕球:D(50)

 特殊能力:元天才・逆境○・

      ピッチングの心得(Lv2)・

      継続○・意外性・対強打者○・

      打撃センス○・ノビ〇・

      強心臓・

      スライディング・

      未来への一歩・

      選球眼・リベンジ・

      負けないエース


 成長タイプ:元天才型

 ===============


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