第5話 確かな手ごたえ
バッティングセンターで何度か打ち返し、手のひらがじんわりと熱を帯びていた。筋肉に張りを感じながらも、胸の奥には満足感があった。
「また今度、一緒に行こうね!」
帰り道、妹が嬉しそうに笑った。その無邪気な笑顔に、俺は自然と頷いていた。
(……不思議だな。ほんの少し、だけど。確かに“届いた”気がする)
帰宅後、自室のベッドに倒れ込むように寝転がると、すぐにスマホを取り出し、ステータス画面を開いた。
――ミート:9
「……うそ、マジで上がってる」
小さな変化。されど、俺にとっては確かな“証”だった。
「成長タイプ:元天才型……皮肉かよ、これ」
苦笑いを浮かべながら、相変わらずのGランクだらけのパラメータを見つめる。
けど、それでも。
「やるしかねぇだろ……!」
◆◆◆
翌朝、俺は早朝の公園にいた。手に持つのは、使い古されたタオル一本。
野球少年よろしく、タオル素振りならぬ“タオル投げ”を始める。
「いち、に、さん……!」
タオルが空を裂くたび、微かな風切り音が耳に心地よかった。
スパッ、スパッ――!
無心で振ること百回。息が上がり、汗がぽたりと落ちたその瞬間だった。
――《ピッチングの心得(Lv1)》を習得しました。
「……マジでスキル、きた……!」
表示された新スキルの効果に、目を疑った。
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【ピッチングの心得(Lv1)】
・ピッチング練習を繰り返すことで、肩力の成長効率がわずかに上昇する。
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「……この世界、本当に努力が報われるんだな」
拳をぎゅっと握る。
過去の俺がどれだけ足掻いても届かなかった“変化”が、ここにはあった。
「よし……やってやる!」
朝焼けに染まる空に向かって、心の中で叫んだ。
「目指すは――甲子園、だ」
地道な努力こそが、やがて奇跡を生むと信じて。
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<ステータス>
名前:風間 拓真(Kazama Takuma)
ポジション:投手(左投左打)
球速:106km/h
コントロール:G(8)
スタミナ:G(3)
変化球:ストレート1
守備:G(2)
肩力:G(4)
走力:G(5)
打撃:ミートG(9)、パワーG(7)【↑】
捕球:G(3)
特殊能力:元天才 ・ケガしにくさ× ・
ピッチングの心得(Lv1)
成長タイプ:元天才型
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お読みいただき、ありがとうございます!!
本日中に6話まで1時間ごとに更新予定です。