第39話 環境の変化
昼休み。いつものように、小春と一緒に教室の窓際の席に座って、春日が来るのを待っていた。
すると小春が俺の水筒を指でつつきながら、くすくすと笑う。
「それにしても風間くん、以前の練習試合、すごかったよね。二軍の緊急登板であれだけ投げられるなんて……」
「……いや、まだまだ反省点だらけだよ。球数も多かったし、制球も甘かったし」
苦笑しながら答えたところで、教室のドアが勢いよく開いた。
「おいっ! 風間っ!」
大きな声を上げたのは、春日だった。
片手にスマホを掲げ、息を切らせながらこっちへ走ってくる。
「何をそんなに焦ってるんだよ、落ち着けって」
「春日くん、周りのみんなが驚いてるから落ち着こうよ」
俺と小春が同時にそう告げると、春日はドンっと机にスマホを置いた。
「そんな事よりこれ見ろ! ネットニュース! 白川戦のことがもう出てんだよ!」
俺は画面をのぞき込む。そこには、でかでかと見出しが載っていた。
【経歴不明の一年生投手が白川学園を沈黙させる! 特待生顔負けの無名左腕に注目集まる】
「うそ……すごい、すごいじゃんこれ!」
小春が声を上げる。目を輝かせながら、画面を何度もスクロールしている。
「"入部当初は球速108キロ"って……どこからそんな情報が!?」
「そりゃあんだけの試合してたら、誰かが目ぇつけるって!」
春日は嬉しそうに笑ってる。でも、俺はどうにも、落ち着かなかった。
「……いや、こんなので浮かれてたらダメだよ。まだ1試合勝っただけだし、反省も課題も山ほどある」
「バカっ」
春日が俺の頭を軽く叩いた。
「なんでもっと喜べねぇんだよ! お前が必死で投げて勝ったんだろ? この間の風間は――マジでかっこよかったぞ!」
「そうだよ!」と小春も続く。「まだ夢の途中かもしれないけど、ちゃんと一歩前に進んだんだよ。喜んでいいに決まってる!」
2人に押されるようにして、俺はやっと少しだけ、うなずいた。
「……ありがとう。じゃあ、ちょっとだけ、喜ぶよ」
「ちょっとだけじゃない!」
春日は立ち上がって、教室の真ん中で声を張り上げた。
「おいみんなー! 昨日の白川戦、見たやついるかー!? うちのクラスの風間がゼロで抑えて勝ったんだぞーっ!」
「え、マジ!? あの風間!?」
「おいおい、風間ってあの静かそうなやつだろ? マジで?」
「お前のニュース見てなかったんか!? あれ、すごかったぞ!」
あっという間に、教室のあちこちから声が飛んできた。みんなの視線が、こっちに向けられてる。
恥ずかしいけど……ちょっと、嬉しい。
(まだまだ、ここがスタートだ。だけど――)
仲間が喜んでくれることが、こんなに嬉しいなんて。
俺は、少しだけ笑った。
◆◆◆
放課後。グラウンドに出ると、そこにはいつもと少し違う光景が広がっていた。
「……うわ、マジかよ」
フェンスの向こうに、見慣れない顔がちらほらと見える。制服姿の生徒たち――俺のクラスのやつらに、他クラスの女生徒まで。しかも何人かはスマホを構えてこっちを見ていた。
昨日のネットニュースの影響だ。頭ではわかってたけど、実際に見られるとやっぱり落ち着かない。
「どうした? 緊張してんのか?」
声をかけてきたのは佐野先輩だった。俺の背中を軽く叩きながら、にやにやと笑っている。
「お前、今日めっちゃ注目されてるじゃん。モテモテだなあ、風間ぁ」
「や、やめてくださいよ……変な汗出てきましたって」
「ははっ、顔が真っ赤だぞ? 俺も一年の頃は多少モテたもんだけどなー。いやぁ、こりゃ風間の時代だな」
そんな冗談を言いながら歩いていると、グラウンドの隅から山岡先輩がやってくるのが見えた。腕を組み、鋭い目で全体を見渡しながら歩いてくるその姿は、どこか威圧感がある。
そして、俺の前でピタリと足を止めた。
「風間」
「は、はい!」
「――あまり、羽目を外しすぎるなよ」
短く、それだけを言って山岡先輩は行ってしまった。
思わず背筋が伸びる。俺の肩がピンと固まったのを見て、佐野先輩が横で吹き出した。
「ぷはっ……お前、カッチカチじゃねぇか。まあでも、山岡先輩はそういう人だからな。心配してんだよ」
「し、心配っていうか、ただの釘刺しじゃ……」
「それも愛ってやつだろ、うん」
からかい混じりに言われて、俺は苦笑するしかなかった。
フェンスの向こうから、声が飛んでくる。
「きゃー! 風間くん、がんばってー!」
「ふ、風間くんだー、昨日の投手だよね?」
……逃げ出したい。けど、逃げない。
「……じゃあ、行きますか」
「おう、見せてやれ、風間! お前がどれだけ伸びてるか、な!」
俺はグローブを握り直し、胸の奥に静かに火を灯した。
(これが注目されるってことか。なら、受け止めてみせる)
どれだけ見られても、俺は俺のピッチングをするだけだ。
<ステータス>
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名前:風間 拓真(Kazama Takuma)
ポジション:投手(左投左打)
球速:128km/h
コントロール:D(51)【↑】
スタミナ:D(54)
変化球:ストレート2,カーブ2,
スクリュー2,
ジャイロカッター1
守備:D(50)
肩力:D(56)
走力:E(48)
打撃:ミートE(44)【↑】、パワーE(43)
捕球:E(49)
特殊能力:元天才・ケガしにくさ△・
逆境○・ピッチングの心得(Lv2)・
継続○・意外性・対強打者○・
打撃センス○・ノビ〇・
対ピンチ〇・スライディング・
未来への一歩・
選球眼
成長タイプ:元天才型
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