表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元・天才ピッチャー、転生先では俺だけが見える“野球スキル”で無双する 〜ケガで終わった俺が、ざまぁと完全試合で夢を取り戻す〜  作者: 猫又ノ猫助
新しい世界で

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/197

第38話 堕ちた特待生

 練習試合が終わり数日が経った今日も、普段通り打撃練習が開始される。


 今日のピッチャーは――最近思い詰めた表情で東大寺とさえろくに話をせず、独り言ばかり呟いて精神的に不安定に見える安藤だった。


 鬼島監督や先輩、コーチから何度か体調や精神面について確認されるも問題ないと言っていたが、俺の目にはここ数日で1番危うく見えた。


 バットを握り、バッターボックスに立った俺に向かって、マウンド上の安藤がギラついた目で笑った。


「……前が、お前が全部悪ぃ」


 ボソリとつぶやいたその言葉に、思わず不気味な物を感じて、普段より少しだけストライクゾーンから離れて立つ。


 一球目――インコースの胸元ギリギリ。狙い澄ましたような軌道。


「っ……!」


 間一髪で身を引いたが、避けなければ確実に肋骨に入っていた。


「おっと悪いな」


 安藤の口元が、グニャリと歪んだ。


 二球目――今度は顔面スレスレ。明らかに狙って投げた球筋。


 風を切って飛び抜けた球に、反射的に顔を背ける。ヘルメット越しでも伝わる球の重さと恐怖。まるで殺意をぶつけてきたかのようだった。


「何故こんなことをするんだ、安藤!」


 こちらの質問に対して安藤は、怒りに顔を歪めた。


「お前さえ、お前さえいなければ、全て上手く行ったはずなんだ!」


 その言葉と共に投げられた三球目――今度は喉元。絶対にスイングできない高さとコース。


「……っ!」


 思わずバットを下ろし、俺はバッターボックスを飛び出した。


「ふざけんな……これは、完全にアウトだろ……!」


「うるさい、うるさい! 俺は選ばれた人間なんだ!」


 そう叫んだかと思えば、急に安藤は頭を抱え出した。


「俺をそんな目で見るな! 俺はまだやれる! 俺は、俺は……」


 その瞬間――


 静寂の中で人が近づいて来る音が聞こえた。


「その場から離れろ、安藤」


 低く、しかし鋭い声だった。まるで、空気そのものが凍りついたようだった。


 振り返れば、鬼島監督が静かにこちらを見ていた。隣には佐野先輩、山岡、春日、小春、そして他の部員たちがいつの間にか集まっていた。


 鬼島監督は、視線ひとつで安藤を射抜いた。


「……今の三球。お前がわざとやったってのは、誰が見ても分かる。あれはただの危険球じゃない。傷つけるための暴力だ」


「ち、違います! か、肩の調子が――」


「黙れ」


 その一言で、全てが終わった。


「お前が風間に嫉妬するのは勝手だ。しかし、その嫉妬を暴力に変えるような奴に、ユニフォームを着る資格はない。お前は今日から練習参加禁止。正式な処分はおって連絡する」


「なっ……ふ、ふざけるな! 俺は特待生だぞ!? 学校との契約だってあるんだぞ!?」


「その口で“契約”を語るな。お前は選手である前に、人間として失格だ」


 そのことを告げても誰も――東大寺さえも安藤を擁護しなかった。


 それは、今回の危険球だけでなく、これまでの数々の問題行動のせいもあっただろう。


 佐野先輩も、春日も、小春も。みんな沈黙のまま、目の前の現実を見据えていた。


 安藤はなおも反論しようと口を開いたが、その前に、山岡先輩が前に出た。


「この間の試合で調子を崩したお前のケツを拭いたのが誰か、忘れたとは言わせないぞ。俺は風間の球に可能性を見た」


 そう告げられた安藤は拳を震わせていたが、最終的に言葉を飲み込み、悔しげに唇を噛みながら、その場を去っていった。


 俺は、ただじっと、その背中を見つめていた。


◆◆◆


 安藤が練習参加禁止を告げられてからの2軍の雰囲気は――皮肉なことに明らかに良くなっていた。


 以前よりも活発に声が出る様になり、それまで安藤と一緒にサボっていた東大寺は人が変わったように真面目になって、全体的に熱意が高い状態が続いている。


 そんな中で俺は、佐野先輩からある噂を聞いていた。


「安藤の奴、もしかしたら退部して――転校するかもしれないらしい」


「えっ!?」


 思わず驚いて目を見開いていると、佐野先輩は自身の口元に指を立てて静かにするようにジェスチャーした。


「俺も噂で聞いただけなんだが、安藤の親御さんが安藤を練習参加禁止にしたと言ったら怒鳴り込んできたらしくてな。こんな学校で自分の息子の才能が摘み取られるくらいなら、他の学校に転校させると言って、騒いだらしい」


 その話を聞いて、思わず微妙な顔をしてしまった。


「お陰で鬼島監督は今、上からの圧力がキツイって話だ」


「……先輩は、一体どんなルートでその話を聞いたんですか?」


「俺のリトルリーグ時代の先輩がこの学園の1軍エースをやっててな、上の方に顔が利くから、話を聞いただけだ」


 話を聞きながら、俺は複雑な思いを抱いていた。安藤のやったことは許せない。でも……どこか、悲しいとも感じていた。


 そんななんとも言えない気持ちを抱えていると、山岡先輩から激が飛んできた。


「おい佐野! サボっている様なら、グラウンドを追加で走ってくるか?」


「すみません! 佐野 健次、今すぐ練習に戻ります!」


 こちらにウインクすると、佐野先輩は去っていってしまった。


 安藤が野球部を辞めるかもしれない――仮に安藤の進退がどうなったとしても、俺の目指す場所は変わることはない。


<ステータス>

 ===============

 名前:風間 拓真(Kazama Takuma)

 ポジション:投手(左投左打)

 球速:128km/h

 コントロール:D(50)

 スタミナ:D(54)

 変化球:ストレート2,カーブ2,

     スクリュー2,

     ジャイロカッター1

 守備:D(50)

 肩力:D(56)

 走力:E(48)

 打撃:ミートE(43)【↑】、パワーE(43)

 捕球:E(49)【↑】

 特殊能力:元天才・ケガしにくさ△・

      逆境○・ピッチングの心得(Lv2)・

      継続○・意外性・対強打者○・

      打撃センス○・ノビ〇・

      対ピンチ〇・スライディング・

      未来への一歩・

      選球眼


 成長タイプ:元天才型

 ===============

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ