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元・天才ピッチャー、転生先では俺だけが見える“野球スキル”で無双する 〜ケガで終わった俺が、ざまぁと完全試合で夢を取り戻す〜  作者: 猫又ノ猫助
新しい世界で

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第37話 鬼島監督が見る腐った現実と、光る原石

 監督としての業務を終えた夜。


 俺は二軍監督として、学園本部棟の応接室にいた。


 重厚なテーブルを挟んで、校長、副理事長、運営顧問らが座り、彼らの背後には例のごとく無駄に高級なウイスキーが並んでいる。誰も飲んでないが、雰囲気づくりのためらしい。


「で、鬼島。白川戦は勝ったそうだな」


 口火を切ったのは、副理事長の堀川。年齢よりも若作りをしているが、目元には黒い欲の線が浮かんでいた。


「ああ。ギリギリだったがな」


 鬼島は短く返す。すでに煙たげな顔を隠さない。


「聞いたところでは……例の早々に2軍入りした一般生が投げたそうじゃないか?」


 やれやれ、とばかりに何人かが苦笑を漏らした。


「なんであんな素人をマウンドに立たせた。二軍とはいえ、学校の看板がかかってる試合だろう。負けたらネット上でなんと煽られていたことやら」


「たしか名前は……風間だったか? 中学まで何の経歴もなしのピッチャーなど、話にならんよ」


 俺は少しだけ目を細め、報告書を静かに卓上に置く。


「……その“話にならん”奴が、白川の打線を抑えた。ジャイロカッターにカーブ、スクリュー3種の変化球を使い分け、無失点だ」


「ふん。たまたまだろう。白川も主力は控えだったと聞いてる」


「いや、仮に主力が出ていたとしても容易に彼の球を打ち崩せるものじゃない」


 そう告げると、空気が少しだけ変わる。顧問の一人が机を指で叩きながら言った。


「……まぁ、仮に実力があったとしても、一般生をあまり目立たせるのは得策じゃない。スポンサーの目もある」


「貴方がたお気に入りの“特待”が、日々二軍で問題行動を起こしていると言うのにか?」


 鬼島の声には棘が混ざっていた。


 誰も返さない。代わりに、理事長が手をひらひらさせる。


「まぁまぁ、二軍の話だ。目立たせない範囲で使えばいい。話題には……そう、少しはなるかもな。意外性は武器だ」


「広報に任せれば、“草の根から現れたニューヒーロー”くらいには仕立てられるだろう」


 鬼島は黙ってうなずいた。その程度でもいい。実力がある子達にチャンスが与えられるなら。


「……ひとまず、二軍での起用は認める。だが一軍昇格は推薦とスポンサー枠を優先でな」


 そう言って話を区切ると、空気は一変した。


 気づけば、話題は特待組の不甲斐なさから、キャバクラの接待の話に移っていた。

 「この前の新宿の子がなあ……」「銀座の高級店がまた良くてね」チームの勝利も、選手の努力も、彼らの話題の中では一瞬でかき消える。


 鬼島は黙ってその空気を見つめる。


 胸の奥に、焦げつくような怒りがあった。


(……くだらない。こんな連中の手で、未来ある子たちが潰されてたまるか)


 机の下、強く握った拳が震えていた。


◆◆◆


 練習が終わったあと、俺は鬼島監督に呼び出された。


 第二グラウンドの隅、使われていないベンチの前。照り返しのない曇り空の下で、監督は黙って腕を組んでいた。


「風間、ひとつ伝えておく。お前を、二軍メインローテーションに入れる。次の練習試合から、二軍のスタメンの一角だ」


「……俺がですか?」


「文句あるか?」


 ない。あるわけがない。喉の奥に熱い何かがせり上がるのを感じながら、俺は首を振った。


「……ありがとうございます。全力で、投げます」


 監督は鼻で笑って、「言われなくても分かってる」と呟いた。


 それだけ言うと、鬼島監督は背を向けてグラウンドへ戻っていった。


 俺はその場にしばらく立ち尽くしていた。風が吹いた。汗ばんだ肌に冷たく、心地よかった。


(……ローテ入り。俺が)


 震えるような実感とともに、俺はグラウンドの方へと駆け出し、春日と小春に報告へと向かった。


「えっ、ほんとにっ!? 風間くんが、二軍のメインローテに入るのっ!?」


 2人と待ち合わせをしていた校門前へと行くと、小春が目を丸くして声を上げた。春日も大きく目を見開いている。


「マジか!? やったじゃねぇか風間!」


 二人の反応に、照れくさいやら嬉しいやらで、俺は曖昧に笑ってうなずいた。


「すごいよ、風間くん! だって、まだ入学して一ヶ月も経ってないのに……っ!」


 小春が手を握ってきて、目を潤ませていた。


「ほんとに、すごいと思う。風間くんの努力、ちゃんと見てたもん……!」


「小春……お前、泣いてんのか?」


「な、泣いてないっ!」


 そう言いながら、涙をぬぐう小春を見て、春日と目を合わせて笑った。


 思えば、俺一人じゃ、ここまで来れなかった。春日のリードがあって、小春のサポートがあって――今、ようやくスタートラインに立てたんだ。


「ありがとう。……でも、ここからだよ。次は、勝たなきゃ意味がないから」


 そう言った俺に、春日が拳を突き出してきた。


「じゃあ、やるしかねぇな。――風間、お前と一緒に、甲子園まで行くぞ」


 俺も拳を合わせた。


 それは、約束のような、宣言のような音がした。


【二軍メインローテ入り】

【評価:S】

【鬼島二軍監督の評価が一定を超えました】

【守備が2上昇しました】

【補球が2上昇しました】


<ステータス>

 ===============

 名前:風間 拓真(Kazama Takuma)

 ポジション:投手(左投左打)

 球速:128km/h

 コントロール:D(50)

 スタミナ:D(54)

 変化球:ストレート2,カーブ2,

     スクリュー2,

     ジャイロカッター1

 守備:D(50)【↑】

 肩力:D(56)

 走力:E(48)

 打撃:ミートE(42)、パワーE(43)

 捕球:E(48)【↑】

 特殊能力:元天才・ケガしにくさ△・

      逆境○・ピッチングの心得(Lv2)・

      継続○・意外性・対強打者○・

      打撃センス○・ノビ〇・

      対ピンチ〇・スライディング・

      未来への一歩・

      選球眼


 成長タイプ:元天才型

 ===============

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