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元・天才ピッチャー、転生先では俺だけが見える“野球スキル”で無双する 〜ケガで終わった俺が、ざまぁと完全試合で夢を取り戻す〜  作者: 猫又ノ猫助
新しい世界で

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第32話 試練の交流戦、学園の裏側

 いつも通りの厳しい練習が終わった、その日のことだった。


 鬼島監督がグラウンドの真ん中に立つと、全員を集めた。


「発表がある。来週また交流戦を行う」


 一瞬、ざわつく空気。


「対戦相手は、県内屈指の進学校、白川学園だ」


 その名前を聞いて、周囲がどよめいた。


 白川学園といえば、偏差値も高ければ、スポーツにも力を入れてる名門だ。


 俺も自然と、拳を握った。  


(交流戦……チャンスだ。ここで結果を出せば、俺だって……)


 だが、鬼島監督は続けた。


「――ただし、だ」


 その言葉に、俺たちは息を呑む。


「1軍の控えである片桐が、事故にあって一時離脱となった」


 ざわっ、と今度はあからさまに緊張が走る。


「幸いそれほど症状は酷くないらしいが、それに伴い2軍のエースである三年の野村を一時的に1軍へ昇格させる。今日付けだ」


 ……一瞬、時間が止まった気がした。


 三年の野村先輩――二軍の柱だった男が、いなくなる。


 誰かが、小さくつぶやいた。


「……じゃあ、俺たちのピッチャーは?」


 鬼島監督が無表情で言い放つ。


「残ったのは二年の佐伯、一年の特待生の安藤、そして一般生の風間だ。次回の先発は佐伯にする。そしてタイミングがあれば、前回出場機会の無かった安藤を積極的に使っていくから準備しておけ」


 そう言った後、鬼島監督は他のスタメンとベンチメンバーについて説明を終えると、去っていった。


 瞬間、横にいた安藤の口元がニヤリと吊り上がった。


「……へぇ。ついに俺の出番ってわけか。ま、雑魚相手の調整にはちょうどいいな」


 そう言ってから、安藤はわざとらしく肩を回し、俺の方を向いた。


「なぁ風間、お前さ……今後また自分にチャンスがあるとか、思ってねぇよな?」


 隣で東大寺が吹き出した。


「ははっ、そりゃねぇよ。こいつ、ストレート130キロも出てねぇんだぜ? それで俺らと肩並べようってんなら、マジ笑える」


 安藤は顔を近づけ、小声で囁くように言った。


「見てろよ。お前がベンチで水くみしてる間に、俺が2軍のエースの座を奪ってやるからさ」


 それから東大寺と2人、わざとらしく肩を揺らして笑いながら去っていく。


 俺は彼らの背中を見送ったあと、静かに息を吐いた。


(……どうでもいい)


 負け惜しみでも、怒りでもない。ただ、俺は今やるべきことが分かっているだけだった。


 ジャイロカッター。未完成の変化球を、自分の武器に仕上げること。


 筋力を、投球フォームを、体の軸を、一つずつ、確実に仕上げていく。それだけだ。


 だから俺は、何も言わずに、次の投球練習の準備へと向かった。


 周囲のざわめきも、安藤たちの笑い声も、まるで耳に入ってこなかった。


(全部、実力で黙らせてやる)


◆◆◆


 練習が終わり、夕日が落ちかけたグラウンドに、少しだけ冷えた風が吹いていた。


 片付けのためにボールケースを肩にかけながら歩いていると、やや大きな声が聞こえて来たので、思わず物陰に隠れた。


「監督、あれでいいんですかっ!?」


 山岡先輩が鬼島監督に詰め寄っていた。


「先日の試合で結果を出したのは、風間ですよ! そりゃあ球速はまだまだかもしれませんが、コントロールと緩急、意図のある配球で上位打線の3年を相手にゼロで抑えたじゃないですか! それでも、今回使うのは安藤ですか?」


 その声は低く抑えられていたが、熱を感じた。


 鬼島監督は、黙って空を仰いだあと――ふぅっと、深くため息を吐く。


「……学園の上からの指示だ。特待組で取った選手を、公式戦や交流戦で積極的に使って、今後のための実績を作れってな」


「またそれですか……っ」


 山岡先輩の肩がぴくりと動いた。


「選手の実力で判断するより、経歴と“実績作り”を優先するなんて……。風間がどれだけ努力してるか、監督も見てますよね? 加えて安藤のあの練習態度も……」


 しばしの沈黙。鬼島監督は、目を閉じた。


「それでも――今回、もし安藤の後に風間が出場して結果を残せば、話は別になるかもしれん」


 その言葉に、山岡先輩が目を細める。


「つまり、次が……分かれ目ってことですね」


「そうだ」


 そんな会話を聞いて、驚きと共に闘志を燃やしていると――背中から声をかけられた。


「風間くんっ!」


「っつ……」


 驚きながら振り返ると、そこには制服姿の小春が立っていた。手にはスポーツドリンクのボトルが二本。


「はい、お疲れさま。今日も投げ込みすごかったね!」


 彼女の笑顔は、どこかホッとするものがあって、俺は思わず肩の力が抜けた。


「あ、ああ、ありがとな」


 山岡先輩と監督の会話を背に、俺は小春と並んでグラウンドを離れた。


 そうだ――誰がなんと言おうと、俺には、信じてくれる人がいる。


 だったら、もう迷わず突き進むだけだ。


<ステータス>

 ===============

 名前:風間 拓真(Kazama Takuma)

 ポジション:投手(左投左打)

 球速:126km/h

 コントロール:E(48)

 スタミナ:D(54)

 変化球:ストレート2,カーブ2,

     スクリュー2,

     ジャイロカッター0

 守備:E(47)【↑】

 肩力:D(56)

 走力:E(47)【↑】

 打撃:ミートE(42)、パワーE(43)

 捕球:E(45)【↑】

 特殊能力:元天才・ケガしにくさ△・

      逆境○・ピッチングの心得(Lv2)・

      継続○・意外性・対強打者○・

      打撃センス○・ノビ〇・

      対ピンチ〇・

      スライディング・

      未来への一歩


 成長タイプ:元天才型

 ===============

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