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元・天才ピッチャー、転生先では俺だけが見える“野球スキル”で無双する 〜ケガで終わった俺が、ざまぁと完全試合で夢を取り戻す〜  作者: 猫又ノ猫助
新しい世界で

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第27話 才能か、それとも

 グラウンドに立っているだけで、頭がジリジリ焼けるような日差し。


 その中で俺と春日を始めとした野球部員達は、必死にノックを追っていた。汗が目に入って前が見えなくなる。でも、構っていられなかった。


 先週から、2軍の練習に合流した。


 合流した1年は特待生の3人と、俺たち2人の一般生。それだけだ。


 だけど、始まってすぐに一部から声が聞こえてきた。


「あぁ、だりー。ったく、こんな泥臭い練習ばっかりしやがってよ」


 炎天下のグラウンドに、そんな声がボソリと響いた。


 特待生の一人――東大寺が、バットを地面に突き立てて文句を言っている。その隣では、安藤があくびをしていた。


 ……やる気がほとんど感じられない。


 2軍との合同練習は、鬼島さんの予告通り、内容は苛烈だった。ノックもランメニューも、1年生だけだった時とは比べ物にならない。


 しかし他の1年を見に行くタイミング鬼島監督が居ないタイミングもあり、その時にはどの練習に参加するか各自にある程度裁量が委ねられていた。


「つーか、なんで俺らがこんなメニューやらされてんの? 2軍の練習だぜ?」


 そう言った東大寺は俺よりずっと体格が良く、動きにもキレがある。けれど、明らかに手を抜いていた。


 安藤のやつも笑いながら、必死で練習せずに軽く流している。


「マジでオーバーワーク。俺たち、1軍上がるんだからこんなとこで練習して万が一潰れたら意味ねーって」


 最初は冗談かと思った。でも、違った。安藤と東大寺の2人は、明らかに練習を“流して”いた。


 その様子は、俺たちが真剣にやっているのがバカみたいに感じるほどだった。しかし、現時点で連中とフィジカルを比べたら間違いなく俺の方が下だろう――実際に、球速は安藤よりも10キロ以上下回っている。


「風間、大丈夫か?」


 隣で、春日が息を切らせながら声をかけてきた。


「ああ……まだいける」


「お前、マジで根性だけはあるな」


 苦笑しながら言われたその言葉が、なぜか少しだけ嬉しかった。


 だけど、ふと顔を上げると、2軍の選手たちは誰も何も言わずに黙々と真剣に練習をこなしていた。リーダー格の山岡さんも、さぼっている特待生を見ても一度たりとも注意する素振りを見せなかった。


 ……なんでだ?


◆◆◆


 厳しい練習が終わった後、俺はベンチ裏で山岡さんの姿を見つけた。


「山岡さん」


「……ああ、何だ? 風間」


 返事はぶっきらぼうだったけど、足を止めてくれた。


「ちょっと、聞いていいですか。正直2軍に合流してからの特待生たち、明らかにやる気がなかったのに、誰も何も言わなかったんですが……」


 言いながら、言葉に詰まった。


「……あれでいいんですか?」


 山岡さんは、少しだけ目を細めて俺を見た。


「その事か。ここ早実の2軍はな、やる気があるやつだけが残る。ないやつは自然と消える。そこに特待も一般も、上級生も下級生もない。やる気ない奴は淘汰されるんだよ」


「淘汰……」


「3年の俺らは、今年の夏が最後だ。1軍に入れなきゃ、そこで終わり。2年だって、下の世代にポジション取られたら終わりだ。だから、やるしかない。そういうやつだけが、今は残ってる」


 その言葉は、重かった。


 特待だとか、一般だとか、そんな肩書きは関係ない。


 戦う覚悟があるかどうか、それだけだった。


「例年の特待生なら、そろそろ気づく頃なんだが……そうは言っても、特待にも真面目にやっているやつもいる」


 そう言って、山岡さんがグラウンドの隅を指さした。


 そこには、一人の男が座っていた。黙々とグローブにオイルを塗っている。顔を伏せて、丁寧に、無駄な動き一つなく。


 見覚えがあった。


「……あれ、大野?」


 紅白戦で一緒のチームだった、ショートだ。特待生だけど、派手な言動はせず、最初イレギュラーでエラーした物の、その後はプレーだけで存在感を示していた。


「先日の紅白戦でエラーしたのが、余程悔しかったんだろうな。ずっと黙って練習してる。特待でも、そういうやつはいる」


 俺は、大野の背中をじっと見つめた。


 そこには、言葉よりも雄弁な「覚悟」があった。


 肩書きじゃない。才能だけでもない。


 この場所で生き残るって、そういうことなんだ。


「……ありがとうございます。勉強になりました」


 山岡さんは、ふっと目を細めて、それ以上何も言わなかった。


 けど、それで十分だった。


 俺は、明日も食らいついてやる。


 どんなに差があっても、俺は俺のやり方で、マウンドに立つ。


<ステータス>

 ===============

 名前:風間 拓真(Kazama Takuma)

 ポジション:投手(左投左打)

 球速:125km/h【↑】

 コントロール:E(46)【↑】

 スタミナ:D(53)【↑】

 変化球:ストレート2,カーブ2,

     スクリュー1

 守備:E(45)【↑】

 肩力:D(56)【↑】

 走力:E(45)【↑】

 打撃:ミートE(42)、パワーE(43)

 捕球:E(43)【↑】

 特殊能力:元天才・ケガしにくさ△・

      逆境○・ピッチングの心得(Lv2)・

      継続○・意外性・対強打者○・

      打撃センス○・ノビ〇・

      対ピンチ〇・

      スライディング・

      未来への一歩


 成長タイプ:元天才型

 ===============

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