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元・天才ピッチャー、転生先では俺だけが見える“野球スキル”で無双する 〜ケガで終わった俺が、ざまぁと完全試合で夢を取り戻す〜  作者: 猫又ノ猫助
新しい世界で

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第24話 紅白戦の決着

 春日のタイムリーで俺はホームを踏み、ベンチに戻った瞬間、全身の力が一気に抜けた。心臓の鼓動はまだ荒く、息を整えることすら難しい。


 だが、体には確かな活力が満ちていて、不思議と疲労感は減っていた。


「おい、風間。交代するか?」


 不意に、あの鋭い声が背後から聞こえてきた。


 鬼島二軍監督の鋭い眼差しが、俺を見据えていた。


 それに対し俺は、真っ直ぐ目を見て答える。


「……まだ、投げられます」


 声に力と意思を込めて答えた。


 鬼島監督はしばらく俺を見た後、「体に異変が出ているのを少しでも感じ取ったら、引きずってでも下ろすからな」そう言って、ベンチを離れていった。


 試合は春日の後に迎えた3番ショート――大野がフォアボールを選び1,2塁とするも、その後のバッターを安藤が押さえ切り、7回表の攻撃は1点止まりで終わった。


 ――そうして、迎えた七回裏。


 スコアは1対0。試合はまだ終わってない。俺の役目も、まだ終わってない。


 先頭打者は安藤だった。


 背中越しに聞こえる、「俺たちが守ってるから、打たせてこー!」という紅組の誰かの声。


 安藤はその声に反応するように、ギリギリと奥歯を噛みしめていた。


 悔しさ、焦り、意地。それが混ざった表情。


 その時、春日の構えが少しだけ低くなった。ギアをもう一段階、上げる構えだ。


 ――サインは、スクリュー。


 俺はわずかに頷き、渾身の力で投げた。


 球は沈むように変化し、安藤のバットを微かにかすめた――かと思ったその瞬間、ボールは高く打ち上がった。


 キャッチャーフライ。


 春日がすっとマスクを脱ぎ、ゆっくりと後ろに下がって、構えた位置でボールを掴んだ。


「バッターアウト!」


 静かに、でも確かにアウトの声が響く。


 安藤は、しばらくバットを持ったまま動かなかった。


 やがて、力なく肩を落とし、何も言わずにベンチへと戻っていく。背中には、さっきまでの威圧感もなかった。


 その後の白組は、五回までの勢いを失っていた。スイングに力がない。プレーに気持ちが乗っていない。


 とはいえ、俺の体も疲労が来ており、何球か変化球がすっぽ抜けた結果、2人にヒットと1人のフォアボールを出した。


 それでも。


「ツーストライク、スリーボール!」


 九回、最後の打者。全力で振り抜かれた打球は、ショートと2塁の間を抜けそうになった――が、ショートを守る大野が見事なグラブさばきで転がりながらもキャッチした。


 ――ゲームセット。


 ベンチに戻ると、仲間たちが口々に声をかけてくれた。


「ナイスピッチ!」


「風間、よく投げ切ったな!」


「あの特待の安藤と投げ合って勝つなんてすげぇよ!!」


 俺はそれに、ただ小さく頷いた。


 八回、九回。安藤はまるで別人のように崩れた。


 球は浮き、コントロールが乱れ、ストライクが入らない。四球に、連打。押し出し。


 気づけば、スコアボードには「5」の数字が刻まれていた。


 そして、最終的には安藤が引きずりされた上でのゲームセット。


 ――結果は、5対0。紅組の圧勝だった。


 ベンチで座り込んだ俺は、静かに息を吐いた。


 勝った。勝ち切った。


 それなのに、浮わついた気持ちはなかった。ただ胸の奥に、じんわりと温かい熱が広がった。


(……これが改めて、チームで戦うってことか)


 ふと見れば、春日がこっちを見ていた。


 俺と視線が合うと、あいつはにやっと笑って、親指を立てた。


 俺も、小さく笑い返す。


 体は限界だったけど――心は、少しだけ軽くなっていた。


 全身が重い。とにかく重い。立ち上がる気力も、今はない。


 ただ前世の時の様な、リトルから酷使し続けた肩の痛みも、足の不調も、この体では感じなかった。


 むしろ永井さんの指導を忠実に守りながら、適切なトレーニングやストレッチをしたお陰で、筋肉が体を守ってくれているのだろう。


 そう考えていると、頭に音が響いた。


【スキル『ケガしにくさ×』が『ケガしにくさ△』に代わりました】

ケガしにくさ△:疲労具合に応じて、練習時にケガをする可能性が1%上昇する。


 その表示を見て、思わずガッツポーズしようとして……腕を上げるのさえ億劫な事を思い出す。


「よっしゃああ! 完投じゃねぇか!」


 春日が、俺の肩にドンと手を置いた。


「お前、最後の球、まじで魂こもってたぞ!」


「……疲れて、もう動けない」


「だろうな!」


 春日がケタケタと笑っていると、小春がスポーツドリンクとアイシングを俺の膝に置いてくれた。冷えた感触に、少しだけ意識が戻る。


「ありがと、小春」


「ううん。疲労が溜まってるだろうから、ちゃんと冷やしてね」


 試合中ずっとサポートしてくれた小春に感謝しながらふと視線を上げると、白組のベンチが静まり返っていた。


 悔しそうにバットを片づけるやつ。グラブを乱暴にバッグへ投げ込むやつ。歯を食いしばって黙っているやつ。


 特待生の安藤も、その中心で黙ってヘルメットを脱ぎ、髪をかき上げていた。あれほどの自信家が、今は肩を落として、言葉もない。


 それでも、彼らは黙って整列した。


 「ありがとうございました!」


 一糸乱れぬ挨拶の声がグラウンドに響く。


 悔しさと、誇りの入り混じったその声に、俺は自然と頭を下げていた。


 鬼島監督がグラウンドの中央に立ち、全体を見回す。


「……以上で、紅白戦を終了する」


 その言葉に、ベンチに座っていた全員が背筋を伸ばす。


「今日の内容をもとに、後日、交流戦に行かせるメンバーを発表する」


 監督の目が一瞬だけ俺の方を見た気がした。けれど何も言わず、振り返ってそのままベンチへと去っていく。


 その背中が遠ざかるのを見送ってから、俺たちはそれぞれ荷物をまとめ始めた。


「風間、今日はマジでナイスだったな」


「いや、お前のタイムリーがなきゃ流れ作れなかったろ」


「はっは! ま、明日には俺が主役になってるけどな」


 春日はニカッと笑い、肩を軽くぶつけてくる。


 俺はそんな春日のテンションに少し救われながらも、空を見上げた。


 雲ひとつない、快晴。


 体はまだ重い。でも、心は確かに軽かった。


 ……次は、2軍の交流戦。そこで出場機会があるかどうかが、俺の運命を変える。


 その日は、もうすぐそこに来ていた。


【紅白戦、完了】

【評価:A】

【鬼島二軍監督の興味を引きました】

【カーブが2に上昇しました】

【スタミナが2上昇しました】


<ステータス>

 ===============

 名前:風間 拓真(Kazama Takuma)

 ポジション:投手(左投左打)

 球速:122km/h

 コントロール:E(43)

 スタミナ:D(50)【↑】

 変化球:ストレート2,カーブ2,【↑】

     スクリュー1

 守備:E(42)

 肩力:D(54)

 走力:E(43)

 打撃:ミートE(42)、パワーE(43)

 捕球:E(40)

 特殊能力:元天才・

      ケガしにくさ△【new】・

      逆境○・ピッチングの心得(Lv2)・

      継続○・意外性・対強打者○・

      打撃センス○・ノビ〇・

      対ピンチ〇・

      スライディング


 成長タイプ:元天才型

 ===============

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