老兵と壊れた装備と道化の物語
王はクレストにこう切り出した。
「お主の見立てでは、今のわが軍が来年領土奪還することは可能か?」
俺は腕を組み目をつぶり考えたふりをして精霊タンに訊ねた。
「いや正直ムリだと思うけど、なんか言わないといけないし、なんか整理整頓でなんとかならん?」
「そうだな。整理整頓の逆~混乱を敵国に起こさせると勝ち目はあると思うよ。まぁ勝負は時の運ってところもあるから」
「OK」
といい、目をひらき
さも考えたようにこう言った。
「現状はムズカシイと思われます。わが軍は整理整頓で秩序が整ったとはいえ、敵軍も秩序は整っております。であるなら、整理整頓の逆~混乱を敵国に起こさせると勝ち目はあるのではと私は思います。まぁただ勝負は時の運ってところもありますから」
「ほう混乱とな…ではなにか策はあるか?」
俺はふたたび腕を組み目をつぶり、考えたふりをして精霊タンに訊ねた。
「いや策なんてネ~けど、なんか言わないといけないし、なんか整理整頓ネタでなんとかならん?」
「そうだな。こないだボロボロの装備品をまとめたよね。あれを老兵さん達に装備させて、攻めさせたら?」
「いやいや、そんなの絶対に負けるじゃんか」
「そうじゃなくって、攻めてすぐに撤退するの。できるだけ情けなくな。それだとこの国はもう兵士も装備もないんじゃねってなるかもだよ」
「おおおっ。たしかに、言ってみるよ」
「OK」
「たとえばこういう計略はどうでしょうか?
・攻め込む1年前にボロボロの鎧や武器を老兵に装備させ、砦に攻めさす。
・指揮官は小太りの役者にやらせ、特攻を命じるも、老兵たちはよろよろと歩き、弓の届かないくらいの位置で、一目散に逃げていく。
・指揮官は怒りながらも帰る。
・その直後、敵国内には、あの国にはもう兵は老兵ばかりで、士気も乱れているというウワサを流す。こういう計略はどうでしょうか?」
「おぬし……その知恵、一体どこから湧いてくる?
ふむ…
陽動という形で利用するのじゃな。たしかにそれは油断するかもしれないな。しかしすぐに攻めてこぬか?」
「攻められたところで、籠城すれば、こちらの損失は軽微です。それに敵軍もいまだ先の大戦の傷が癒えておらず、あと1年は攻めてこないでしょう」
「なるほどな。たしかに理はある。しかし安心させただけでは、勝てぬぞ」
俺はふたたび腕を組み目をつぶり、考えたふりをして精霊タンに訊ねた。
「王様ど正論なんだけど、どうするん?」
「そうだな。その辺りから、兵糧庫の兵糧を盗みだせばいいじゃね」
「いや盗みだすってどうするの?どこに置くわけ?」
「元国民(自国民で今は貧民街に追いやられている)の家の床下におけば?」
「いや…それすぐにバレない?」
「だったら、脱穀していない状況で、袋からだし敷き詰める。
そして袋にもみ殻を入れ、見た目的には、たくさん入っているように見せかけ、倉庫に戻す…でいいじゃなの?」
「それだと…兵糧ネズミに食われない?」
「猫を飼えばいいよ」
「なるほど…で盗むのはどうするの?」
「だいたい指揮官は酒好き女好き、部下も酒好きなので、指揮官は色じかけと、酒で夜間の警備を薄くさせ、夜勤の部下にも酒を飲ませればいいんじゃね。そうしたら、いけるんじゃないかな?」
「おーすげーな。じゃあ言ってみるよ」
俺が精霊タンと練り上げた計略を話すと、王は満足げに言った。
「この件はお前に任せる。権限も与えよう。ただし秘密裏に動け。陽動部隊の行動も他の者に知らせるな…
この策……敵国の運命を変えるやもしれぬな」
と…
「……いや、これほぼ精霊タン案なんだけどな」って思いながら
もちろん口はチャック
王様ノリ気だし、なんだか隠密行動みたいで、チョイそそられた。
それから急ピッチで陽動作戦が進められた。
知っているのは一部の人間のみ
さっそく老兵50人が集まった。
俺は兵たちを前にこう言った。
「これから我が国の命運をかける作戦の説明をする。
しかし貴殿らはもう退役した身
本来であれば、貴殿らに頼るべきではない。
しかし本作戦は貴殿らでしかやり遂げられぬ。
1時間待つ
もし心意気のあるものがいれば
この場に残ってくれ」
老兵たちはざわつく。
一時間後 広場をみると 全員が残っていた。
「貴殿らはなぜ残った」
俺は質問した。
「我らは先の大戦で生き延びた。この命は拾いもの。それを有効に使いたい」
「先の大戦で家族を失った。もう他に失うものはない」
老兵たちは、作戦に参加する理由を、誇りに満ちた顔で宣言した。
俺は老兵たちの顔を見渡し、こういった。
「貴殿らの勇気や誇りは十分に伝わった。貴殿らは勇敢で誇り髙い兵士だと私は認識している。
しかしだ。
今回の作戦は、貴殿らの勇気を、誇りを、汚すものとなるかもしれない。
それでも
私は貴殿らの活躍で、我が国の兵士たち、国民たちの命が救われると確信している。
作戦の詳細はまだいえないが、ついてきてくれるか?」
一瞬老兵たちの顔が曇ったが…
「イエスサー」
大きな声が広場を覆った。
作戦決行の日
俺はこう命じた。
①指揮官(小太りの役者)は特攻を命じる
②老兵たちはよろよろと歩き、弓の届かないくらいの位置で、一目散に逃げる。
③指揮官は怒りながらも帰る。
※敵軍は笑うだろうが戦わずに逃げろ。
そうして、倉庫に保管しておいた、壊れた武具や防具を装備させた。
老兵たちは、半信半疑ながら、従ってくれた。
作戦は思ったより上手くいった。
しかし老兵たちはがっくりきている。
「わしは情けない。たとえ命令とあれども、ボロボロの姿で敵前でみじめな想いをする。こんな想いをするくらいなら、いっそ殺してくれ。そう思うのです」
そういった声を聞きながら、俺はこう答えた。
「気持ちはわかる。
しかしな。
今日諸君らは100戦100勝の強者より、より気高く。より賢く。より自由に。
戦場を駆け抜けた。
今日の諸君らの行動こそが、わが軍を勝利に導く。
その折れた心が、兵たちを民たちを無傷で守る。諸君らは英雄なのだ。
今は説明できない。理解しなくていい。
ただ私を信じてくれ。
諸君らは私の英雄だ。
ありがとう国を守ってくれて」
その声に一人の老兵がしずかに涙を流した。
「軍師殿ーーワシはあんたを信じる。
信じる。
ありがとう。ありがとう。こんなおいぼれに役割を与えてくれて」
その直後、敵国内には、あの国にはもう兵は老兵ばかりで、士気も乱れているというウワサがながれることになる。
むろんこれはクレストの計略だった。




