秘密のカウンセリング
誠さんの心の中のパズスを消滅させ外に戻ってきた俺優、は看護師たちにむかえられる。
心から外に出ると重力の変化が大きくて身体が重く感じる。
疲労などもあり少し休みたい。
看護師たち『おかえりなさい』
優『ああ、無事消滅させた』
炎『今回俺はあんま出番なかったぜ〜とりあえず風呂入って寝る、こっち戻ってくると身体重てぇ』
そう言って炎は槍を持って部屋を出て行った。
看護師『炎先生かっこいい、、』
看護師たちがキャッキャはしゃいでいる。
誠さんは死にたいと呟かなくなった。
黙って視線をまだぼーっとしているがとりあえず一安心と言ったところ。
清水『今回は早かったですね』
優『ああ、きっと花さんや拓磨さんの存在があったからだと思う。スムーズに一回のバーストで消滅させることができた』
清水『よかったです』
優『そっちの様子はどうだった?』
清水『少し大声を出して暴れましたが、なんとか、、』
優『そうか』
俺と清水さんが話していると後ろからセオの叱責する声が聞こえてきた。
セオ『れななちゃん!さっきのはなに!?パズスにアニマウェポンを持たないで近づくなんて何を考えているの!?』
れなな『、、、ごめんなさい、、、』
セオの迫力に萎縮して俯いて謝る。
セオは暫く黙ってれななの様子を見ると優しくれななの両肩に自分の手を置いた。
セオ『れななちゃんの優しさはわかる、でもさっきの行動は間違ってる』
れなな『、、、はい、、、』
セオ『相手は悪魔なの、そのことを忘れないで、誠さんを救えてもれななちゃんの命が失うことになってたかもしれないの、私たちは誰一人死なない、その為に頑張って努力して強くなったの、そうでしょ?』
れなな『、、はい、、ごめんなさい』
セオ『自分の命を落としてでも誰かを救うことは愚かなことよ、もう一度よく考えて、、、』
れななは涙を堪えて黙って頷いた。
セオは優しく微笑むとれななの頭を優しく撫でた。
セオ『ありがとう、話を聞いてくれて』
心臓を引き剥がしに行っていたからそんなことがあったとは知らなかった。
アニマウェポンを持たない俺たちはただの人だからパズスに勝てるわけない。
たしかにれななの行動は間違っていたかもしれない。
セオはそう言ってれななから離れると俺の横にやってきて肩を並べる。
セオ『この後は?』
優『ああ、花さんにパズスを消滅させたことを報告してくる。セオは誠さんのカウンセリングを頼む』
セオ『わかったわ、とりあえず着替えてお風呂に入ってくる、スーツが血でびしょびしょ、、』
俺は黙って頷く。
セオ『お疲れ様、みんなも!ありがとう!』
俺と看護師たちに挨拶して部屋を出て行った。
看護師たち『セオさんなんて美しいの、、』
女性看護師たちも虜にしてしまう彼女の魅力。
清水『れななちゃん大丈夫?』
れななは俯いたまま反省していた。
すっと顔を上げると清水さんに大丈夫といつものようにニコッと笑った。
優『れななの行動は間違っていたかもしれない、だがその優しさはしっかり心にしまっておけ』
れななはきっとパズスに近づいて慰めの言葉でもかけたのだろう。
パズスが弱っていたから大丈夫だったが一歩間違えると命を落としていたかもしれない。
れななは両手にコナトスを持ってスキップして俺の側にくる。
れなな『花さんと拓磨君に報告しないとね』
優『ああ、それは俺がやっておく、お前は休め、仮眠したとはいえ夜中からずっと働いている』
れなな『先生もでしょ??、、、わかった、正直今眠たくてたまんない、、、』
彼女は大きな欠伸をした。
れなな『お疲れ様、みんなもお疲れ様です!』
清水『お疲れ様です』
れななは手の甲で目を擦って部屋から出て行こうとする。
途中で立ち止まると振り返った。
ツインテールが可愛く動く。
れなな『優先生、、大丈夫??』
優『俺か?大丈夫』
れななは少し目を細め心配そうに俺を見つめると踵を返して部屋から出て行った。
看護師たち『れななちゃん可愛らしいわね』
この病院の期待のたまごだからみんな彼女を自分の娘かのように見守っている。
優『では俺も行きます、誠さんを病室にお願いしますみなさんありがとうございます、お疲れ様です』
清水『お疲れ様です』
看護師たち『お疲れ様です、、、キャッキャッ』
ざわざわ
優『清水さん夜中からありがとうございます、あなたもゆっくり休んで)
清水『はい』
俺は少し口の両端を上げて踵を返し部屋を出た。
外は薄暗くてもうすぐ日が沈む。
白衣を着替えて花さんに報告しに行く。
彼女は院内の廊下のベンチに前屈みに座って両手を合わせて強く握り額に当てて誠さんの無事を願っていた。
隣に拓磨さんがバタバタ脚をばたつかせ落ち着きなく座っている。
優『花さん』
花『先生!!』
俺が呼びかけると花さんは立ち上がった。
優『パズスは消滅しました』
花『ほんとですか!』
彼女は安堵した様子で肩を少し落とす。
拓磨『パパ治ったの??』
優『まだ安心はできません、パズスは消滅しましたが鬱病が治ったわけではありません。放っておくとまたパズスがうまれるかもしれません。ここからはカウンセリングで治療を行います。あなたたちのチカラをかしてください』
花『はいっ!』
拓磨『お姉ちゃんにも言われたから頑張る』
優『誠さんは暫くこの病院で入院してもらいます』
花『わかりました、、、本当にっありがとうございます』
深々頭を下げた。
優『大丈夫ですよ、誠さんはきっと良くなります』
俺は口の両端を上げてから花さんに背中を向け歩き出す。
廊下を白衣のポケットに手を入れた。
※
院内でシャワーを浴びて血だらけになった服を着替えた。
服装はいつものパーカーにショートパンツ、白い靴下にスニーカーと動きやすい服装。
今着ているパーカーはお腹のところに大きなクマがデザインされていて可愛い!
この格好がなんかしっくりきて楽。
高校生の頃から私服はほとんどこの格好。
髪型はツインテールではなくて流しています。
院内の食堂でお腹が空いてカレー三杯食べちゃった。
そんな私れなな、は今、日が沈んで暗くなった院内の廊下を眠たい目を擦りながら歩いています。
コナトスを使った後はお腹が空いてとても眠たくなってしまいます。
ここの廊下はあまり人が通らずとっても静かで幽霊が出そうでちょっと怖い、、、
でも幽霊よりももっと怖いパズスと戦ってるんだから大丈夫と思って。
電気が灯っていないからスマホのライトをつけて前に進む。
は〜っと大きな欠伸が出ちゃう。
眠たい目を擦りフラフラしながら歩いて行く。
眠たいけど眠っちゃダメ、、、
私は今から大切なことをしに行かなきゃいけない。
少し開いた白いドアが見えてくる。
そこは物置部屋でこんな時間にここにくる人なんて誰もいない。
そっとドアを横にスライドして開ける。
ガラガラガラ
鍵はかかっていない。
物置部屋は真っ暗。
暗闇を奥に奥に進んでいく。
れなな『、、、優先生、、、?』
そっと彼の名を呼んだ。
高いところに小窓があってそこから月明かりが差して明るいところがある。
そこには
小山座りで顔をうずくめて泣いている、優先生の姿があった、、、
最初見てしまった時もそうだった。
パズスを倒して疲れてシャワーを浴びて着替えてご飯を食べたくて眠たくて暗い院内の廊下を歩いていたの。
好奇心が強い私はなんとなーくあまり通ったことがない廊下を歩きたくてここの廊下を通ったんだけど、、
啜り泣く声が微かにしたような気がして。
その時はほんとに幽霊がでだと思ってゾッとして眠気なんか吹き飛んじゃって。
この廊下を歩いた事を後悔した。
でもそれは幽霊じゃないような気がして。
怖かったけど恐る恐る声がする場所に耳を傾けて。
物置部屋の中からだとわかったので中に入ろうとしたらドアがあ、い、て、い、て。
その声が優先生だったことは信じられなかった。
ドッペルゲンガーかなと思ってしまいました。
でもそこにいたのは正真正銘優先生だった。
私はいつものようにそっと彼の隣に腰を下ろした。
お尻に冷たい床の感触がした。
震えて泣いてる肩にそっと手を当てる。
優『ゔっ、ゔっ、、、グスッ』
彼はHSPという体質を持っている。
それは人の感情に敏感に反応して共有共感してしまう体質。
彼はさっき誠さんの辛い感情に触れたからその気持ちが共有共感されている。
優『ヅラい、、、』
れなな『うん、、、』
今の彼の姿はさっきのかっこよくて頼りになる姿とは全く違う弱々しいさ。
優『ぢごどで、し、ぜぎ、いした、ぜぎに、にげだい、、、』
れなな『うん、、、』
優『はなに、めいわくがげ、、なかっだ』
れなな『うん、、、』
カウンセリングの経験が浅くて知識不足でまだ大人になったばかりの私はなんて声をかけてあげたらいいかわからない。
悔しい、悔しいよ、、、
私はただ頷くだけで言葉が出てこない。
彼がここでこうしていることは誰にも言うなと言われた。
私しか彼がここで苦しんでいる事を知らない。
これは二人の秘密のカウンセリング。
私の頷くことしかできない下手くそなカウンセリング。
さっき大丈夫って言った、、、
ぜんぜん大丈夫じゃないよ、、、
たまたま私が彼を見つけたから良かったけどそうじゃなかったらずっとここで一人で苦しんでたってことでしょ、、、
自分は辛そうにしてる人に寄り添うのに自分が辛かったら寄り添われたくないなんて、、、
カッコつけないでよ、、、
言ってほしかった、、、
優先生も誠さんも、、間違ってるよ、、、
でも見つけてほしかったんだよね、、
だってあの時少しドアが開いてたから、、、
今一番鬱病になってしまいそうなのは優先生だよ、、
絶対立派なカウンセラーになって優先生のHSPのケアをここでしてあげるからね!
だんだんと夜が更けていき二人ともこの物置部屋で熟睡してしまっていた。
目が覚めた私は病院のベッドの上で眠っていました。