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3.人は何が為に死ぬのか。

『生命体は、何が為に生きるのか』


――宇宙を駆け、道を拓く。

――宇宙を巡り、弓を引く。

――宇宙を守護し、壁を打つ。

――宇宙を知り、理を解する。

――宇宙に向かい、滅する。

――宇宙を統べ、()らす。

――宇宙に歌い、統合する。

――宇宙に漂い、全てを呑み込む。

――宇宙に笑い、他を愚弄する。

――宇宙に生き、命を咲かす。

――宇宙を記録し、歴史を凍てつかせる。

――宇宙を喰らい、欲を満たす。


『汝は、何が為に生きるのか』


――……あたしは――――――――。





灰色の髪がなびく。琥珀色の大きな瞳がキョロキョロと動き、こちらと目が合うとその瞳は優しく揺らいだ。

開拓者、もとい⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。昔は苦楽を共にした仲だったが、その記憶は彼女の頭の中に無い。今は星穹列車の乗組員と一人として『開拓』の運命を全うしている。


――彼女は何故生きるのか。


万海の癌をその身に宿し、列車に乗って宇宙を旅するその生き方に、理由はあるのだろうか。


――あたしは何故生きるのか。


昔は通信機越しに流れてくる命令を遂行し、星を守る為に戦うことを使命として生きていた。


――けれど、もうその星も存在しない。


今は脚本に従って四人の仲間と共に生きている。けれど、脚本の為に生きている訳では無い。自分が何者であるべきなのか、何の為に生きているのか、それを知りたいから脚本に従っているのだ。


鉄騎の中にいる間は、そのことを忘れられる。生まれながらの兵器として、敵を滅することだけが己に与えられた生き方なのだから。

けれど……『ホタル』という人間の姿の時、自分が何なのか分からなくなる。それは、破壊兵器の『サムAR-26710』なのか、一人の人間なのか。


「オークロール占いやろうよ」

「……何それ……?」

「オークロールを外側から一枚ずつ剥がして食べるんだよ。最後の一枚になった方が負けで相手の言う事を聞くの」

「オーク家への冒涜のような遊びだね……」


⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎は記憶を失ってから時折、奇想天外な行動を取る事が増えた。様々な常識外のメンバーが集う星核ハンターの中でのマトモ、というのがどのように定義されるのかは分からないが、それでも以前はもう少し普通だったような気はする。その分、口数は少なかったが。


それでも彼女は、自分が心を開いて接することの出来る数少ない人物であった。

それは何故だろう。

……顔が良いから?


――うーん、それだけじゃ無いかな。顔が悪いって意味じゃないよ。そしたらカフカや刃、銀狼とだってもっと打ち解けられているはずだもの。……他のみんなは、どこか心の中に壁がある気がする。


では、何故?


――似ている、のかな。女皇陛下に忠誠を誓い、戦う為に作られた鉄騎としてのあたしと。

――星核を納める為に作られた開拓者と。


無論、本人の前でそんなことは口に出来ない。言ったとしても案外ケロッとして宅配箱を漁り出しそうではあるが、それでもその後自分が彼女と今まで通りに接することができるとは到底思えない。

ただ、記憶を失って『開拓』の道を歩み始めた彼女を見ていると、自分もあんな風に生きてみたいと思うのだ。――例えそれが、アキヴィリによって引かれたレールの上のみの自由だったとしても。


「じゃあ次はUFOバーガーキャッチャーだね。……私、こう見えても強いよ」

「踊り……食い……?」


彼女が『開拓』のレールの上を歩むのなら、あたしはその先のレールの上を歩もう。そして最後の駅で、彼女を満面の笑みで迎えるのだ。







『生命体はは何故眠るのか』


――いずれ夢から覚める為だ。


『生命体は何故死ぬのか』


――生きる為に死ぬのだ。




『汝は、何が為に生きるのか』



――……一人の人間として。ホタルとして。生きて、自由を掴む為。

その道を、阻むものがあるなら。たとえ、星神でも星海でも、燃やし尽くしてみせる。



⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。



君たち『開拓』がいつか辿り着く最後の駅、『終焉』で。





あたしたちは、その脚本の最後のページを開いて、君を待ってる。



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