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7話〜ナゾの男の子〜

〜Side???〜

はぁ。はぁ。はぁ。

なんで。どうして。ルシーン国王国騎士団が、こんなところに?『あの事件』からは、だいぶ経ったはずだ。

「ブルハ・ラール・ミルキー」

迫ってくる剣を、同じく剣で返す。僕はこの女の人と同じ、剣の使い手だ。

「私と同じ剣で勝とうとするか。」

途端、打ち合いが激しくなる。なんとかついてきてはいるが、かなりキツイ。

「ちょっ……と……待ってください!!」

迷ったが、帽子を外す。こうでもしないと、この人たちは話も聞いてくれない。

「お前……ディーア族か?」

相手の動きが止まった。とりあえず、これで話ができる。

「……なんで、あなたたちがここに?地球まで来るなんて、よっぽど大事件でも起こったんですか?」

とりあえず、聞きたいことを聞く。僕がディーア族だということを知らなかったということは、少なくとも『あの事件』関わりではない。

「世界で起こったことを、知らないのか?」

「もしかして、あいつか。10年前の、『あの事件』。」

世界で、なにかが起こった?カエムルで、何が起こったんだ?

「特徴も一致している。間違いないだろう。」

「じゃあ、どっちにしろ始末だ。」

またしても剣の猛攻。ダメだ。とりあえず逃げよう。話が通じない。

パァァンッ!!

足にものすごい衝撃が走る。まずい。足を撃たれた。血が地面につく。最悪だ。これでは走れないし、血で痕跡も残ってしまう。

ボフッ!!

もしものときのために持っていた、煙玉を投げつける。これは地球で買ったものだから、すぐには反応できないはずだ。

持っていた布を雑に足にまいて、なんとか血が地面につかないようにする。

「主」

「ラルフ、」

そこでラルフが回復魔法をかけてくれた。使い魔の魔法なので気休め程度だが、なんとか走れそうだ。

全力で走る。きっと途中で、足の傷口が開いている。ズキズキ痛む足を気付かないフリをして、走る。しかし、ついに限界がやってきた。頭がクラクラする。視界が狭まって、耳鳴りもひどい。ついに、木陰に隠れて座り込んだ。

「はぁ、はぁ……」

確かに足の傷が一番酷いが、それ以外にも切り傷がたくさんある。雨で体温が奪われる。

あ、まずい。


ほんとうに、いしき、が、


「主!!」

最後に、ラルフが森の中を走っていくのが見えた。助けを、呼んできてくれたのだろうか。

あのときと、同じように。


ーーーー


「う〜ん……魔力を持つ人間……魔力の流れ感じとっても大体がディーア族だし……本当にいるの……?」

「やっぱり地球の本を探した方がいいかもだね……一応地球にも『魔女』っていう言葉は残ってるみたいだし。」

真っ暗な闇を行動するのも慣れてきた。しかし、今日は雨。月明かりもなく、濡れないようツキと一緒に水魔法を操りながらの移動で、かなり体力を消耗する。

「でも、まさか全属性持ちとはね。戦いに役立つじゃん。いいな〜」

「いや〜……でもなんか色々混乱するし、思うように出せない属性もあるし、器用貧乏というか……」

旅の過程で、ツキとキラには私が全属性持ちだということを話した。

私が言ったことは事実だ。実際、水を出そうとしたら氷が出たり、雷を出そうと思ったら光が出たりする。属性を使えるようになったのだってつい最近だし、すぐに全部の属性を使いこなせるわけがない。

「宝石の手がかりも見つけないとな……さすがにこの広い地球から片っ端から探すのは無理がある。」

イマイチ目的が定まらず、不安を覚える。途端、お母さんやシエルのことを思い出してしまう。

今、どうしてるのかな?もしかしたら、生き残っていたりしないかな?シエルは、あのままなのかな?

「ホシ」

私の手元に座っていたネクが、私の肩に跳び移る。

「前」

「え?うわっ!!」

ネクに言われた途端、強風で体制が崩れる。危ない。ほうきから落ちるところだった。

「っぶな〜……ありがとネク〜……」

なんか久しぶりだな。この感覚。あらためて私って、ネクがいないと旅にも出られなかったかもしれない。

「そろそろ夜が明ける。降りるか。」

ヨルの声で、どこか深い森の中を選んで着地。だいぶ慣れてきた、夕食の準備やテントの準備をし始めた。

「じゃ、私食材狩ってくるね!」

そして私は、肉担当。動物を狩る役だ。

ちなみにヨルは木の実調達で、ツキは料理、キラは臨機応変に。(大体動物を捌いてくれたり、魚を釣ったり。)という役割分担だ。


パァンッ!!

「あ〜……外したぁ〜……」

上手くなったといっても、10発3中くらい。普通に素人だ。

「………?」

「どうしたの、ネク?」

私の近くでクマなどを警戒していたネクが、ある一点を見つめて止まる。まさか、またディーア族……?

「……妙だ。使い魔の気配がする。」

……?使い魔……。あの双子は使い魔を持っていなかったし、別の隊員だろうか。前みたいに、転移魔法を使って呼び寄せられてもおかしくない。

「いや、使い魔だけなんだ。主人の気配がしない。」

……?確かに。私はなにも感じない。使い魔の魔力の気配は弱いし、私が気づかなくても無理はないけど、主人がいないというのは妙だ。

ガサ。

草むらから、真っ白い何かが見える。敵か?獲物か?そう思い、一応弓を構える。しかしそれは敵でも獲物でもなく、確かに額に使い魔の印をつけた、使い魔だった。

「あなた方は、カエムル人ですか?」

「え、は、はい……」

使い魔に敬語というのも妙だが、敬語で聞かれたのでつい敬語で返してしまう。その使い魔はかなり体がデカく、犬にも見えそうな形をしていた。雨に濡れて、その体毛はビシャビシャだった。

「どうか……主を、助けてください。」

「……え……?」


一人で判断するわけにもいかないので、とりあえずみんなと合流する。初めは私のようにびっくりしてたけど、やがてこの使い魔の話を聞く体制になった。

「私は『ラルフ』と申します。主が、敵の攻撃を受けて今、意識を失っています。どうか、助けていただきたい。」

ラルフは、とても真剣だった。息切れしているところから、かなり急いで助けを求めたのがわかる。できるなら、助けてあげたい。

「……行こう。ラルフ、案内して。」

先に声を上げたのはツキだった。回復が得意だと言っていたし、何か思うところがあるのだろう。ツキの声に、反論するものはいなかった。


「……いた!!」

ラルフに付いて行って約1時間。随分と遠くまで助けを呼んでいたらしい。意識を失うほど大怪我をしているなら、かなり危ないのでは……?

「ブルハ・ラール・ツキ!!」

倒れている男の子を見つけた途端、ツキが呪文を唱る。その子は見事な銀髪で、雨に濡れてキラキラしていた。しかしそれに負けないくらい目立つ、血。足部分が特に酷く、血溜まりができていた。

「ひ……っ、」

本能的に、怖い、と感じてしまう。顔も真っ白で血の気がない。死んで、ない、よね?

「……大丈夫。息はあるし、脈も一応しっかりしてる。たぶん貧血と体温を奪われたので、体力を消耗しただけだと思う。応急措置もしっかりしてたし、休めば治ると思うよ。」

ツキの言葉で、とりあえずホッとする。でも、どうやって運ぶんだろう?この人は成長期の終わりきった男性だ。まだ成長途中のヨルでも担ぐのは難しいだろう。

「とりあえず……怪我人を動かすのは怖いから、せめて水を弾く魔法を……」

「ブルハ・ラール・キラ」

バチッ!!

あたりが光り輝く。夜が明けてきたものの、まだまだ暗く、夜の暗さに慣れきった目には、少々眩しい。やっと目が慣れてきたところであたりを見回すと、そこには雷のドーム状バリア。雨も防げるし、獣も追い払えるだろう。

「どうせ夜通し……朝通し?か?まあいいや。とりあえず看病するんでしょ。付き合うよ。」

「キラ……」

この前まであんなにバチバチしていた二人が、手を取り合っている。なんか泣けてくる光景だ。

「ヨル王子たちは寝ててください。全員寝不足ってのも危ないですし。」

「ああ。」

というわけで私たちはお言葉に甘えて寝ることになった。まあ、とっても眠かったし助かったなぁ……


「ホシ、起きろ。ホシ!」

「……ん……?」

すっかり熟睡していた。いやぁ……このテント生活にも慣れたものだなぁ……最初は硬くて硬くて寝れなかったのに……

「目が、覚めた。」

「え!!」

私の目も覚めた。急いでヨルについていく。雨はもう止んでいて、空はそろそろ夜になろうとしていた。


「助けていただいて、ありがとうございます。僕は『セイ』と申します。」

相変わらずの見事な銀髪を後ろで一つに結った姿。黄色の瞳はあたりが暗いと目立ち、金色にも見える。さすがにまだ包帯や湿布はとれておらず、かなり痛々しい顔立ちだった。

「セイもカエムルから逃げてきたの?よく地球への道わかったね〜」

「………」

キラの質問に黙り込んでしまった。え、カエムルから逃げてきたんじゃ、ないの?

「その……僕が地球に来たのは、結構前で……カエムルでなにがあったのか、知らないんです。」

一つ一つ、言葉を選ぶような言い方。本来、地球への道を勝手に通ることは違法だ。まあ、そもそも国家秘密だから知っている人が少ないわけだけど。それでもたまに、場所を知らされている王国騎士団が地球へ渡ろうとして、逮捕された事例はある。アステール国が崩壊される前の話だったら、立派な犯罪者になるのだから慎重になるのもしょうがない。

「……まあ、この際犯罪者とか言ってる場合じゃないし……そもそも俺たちは警察官じゃないからな。」

そう言って、ヨルはゆっくりとアステール国のことについて話始めた。改めて聞くと、結構壮大な冒険をしてきたと実感する。私、あのときヨルに会えてなかったら死んでたんだよな……


「……そんなことが……」

一通り話終わった後、セイが呟いた。反応を見るに、知らなかったことは嘘ではなさそうだけど……

「でも、地球に来た理由はなんだ?今はぜひ仲間を増やしたいところだけど、目的が違ったらそうもいかないだろ?」

それもそうだ。確かにそもそも、地球に来た理由がわからない。年は私たちとそう変わらなさそうだし、学校はどうしたのだろう?親は?

「もし一緒に行動させていただけるなら、そうさせてもらえると嬉しいです。一人旅じゃできないことも多いですから。」

顔は笑っているが、遠回しに聞くことを拒絶された。私でもわかる。

「あ、ああ。」

とりあえずヨルも深く踏み込まないことにしたらしい。なんか……闇が深そうだな……

「と、とりあえず自己紹介しよ!私はホシ!詳細はわからないけど全属性持ちなんだ!こっちは使い魔のネク!いつも守ってくれるんだ!」

重い空気に耐えかねて、明るく自己紹介を提案。幸い、みんな乗ってくれた。

「……知ってるだろうけど、ヨル。火属性。コイツはオースティン。ちょっと生意気だけど……」

「私はキラ。雷属性で、ヨル王子のメイドなんだ!」

続けてヨル、キラが自己紹介を始める。残るはツキだけだが、ツキがセイに目配せをして先に自己紹介を譲ったので、セイが話始めた。

「改めて、僕はセイです。属性は氷で、剣術が得意です。こっちは使い魔のラルフ。回復が得意なんです。」

剣術!あのミルキーさんと同じだ!いや、あの双子には嫌な思い出しかないんだけどね。殺されかけたし。最後は、ツキだ。

「私は、ツキ。水属性です。もう、騙したくないから先に言うね。嫌だったら、離れるよ。」

あ、と思う間もなく、ツキが帽子を外し、頭の上についたウサギの耳をあらわにする。ツキが自己紹介をわざと最後にしたのは、このためだったんだ。

「……ツキ、王女?」

「え?」

『王女』という言葉にドキッとする。だってツキは、『王女』だとは一言も言っていない。グラマー族ならば、あまり政治に出ていない第2王女のことは知らないはずだ。ディーア族ならまだしも……

「すみません。母に、名前だけは聞いたことがあって。安心してください。ツキ様。」

そう言ってセイはツキとまったく同じ行動をとる。そうしてあらわになったのは、狼の耳。

「僕も、ディーア族なんです。」

………。開いた口が閉じない。まさか、ディーア族に二人も会うとは。先にツキと話をつけておいてよかったと心から思う。でも確かに、アステール国石化事件がきっかけで地球に来たのではないのなら、ディーア族であっても不思議ではない。

「じゃ、じゃあ、ルシーン国に住んでたんだね。」

「いえ、住んでいたのはアステール国なんですけど。」

「???」

ちょっと意味がわからない。だって、ディーア族ならルシーン国に住んでいるはずでは??聞き間違いかな??

「今日のところは寝ましょうか。ツキ様とキラさんは、寝ていないでしょうし。」

また強制的に話を切られた。これも踏み込んでほしくないということか。

う〜ん……、セイ、謎が多い……

☆使い魔について☆

使い魔は、持っていても持っていなくてもOK。親から譲り受ける人が多いよ。(ホシもそのパターン。)

そして、使い魔は結構長生き。平均寿命は100歳くらい。人間よりも少しだけ長生きだね。

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