4話〜新しい仲間!〜
パァンッ!!
弓で鳥を仕留める。弓を扱うのも、だいぶ慣れてきた。
「上手くなったな、ホシ。」
「ヨル」
ヨルは近くで木の実や食べれる葉を採ってきていた。この役割分担は、ヨルの属性ゆえだ。炎では山火事になってしまうし、最悪獲物が焦げ付いてしまう。試してみたところ、私は全属性が使えたので雷や風を中心に使っている。矢で射るとき、一発で仕留めやすいしね。
現在、ドイツからフランスへ移動中。国境は魔法でなんとかするらしい。透明化魔法とか。あ、ちなみにこれ、カエムルでは使えない。基本的な透明化魔法ならみんな使えるから、対策されているのだ。暴く魔法だってあるしね。
「じゃあ食事にするか。」
「そうだね。」
アステール国から逃げてきて、1週間が経った。もう食事の準備も慣れたものだ。肉……を捌くのはまだ慣れなくて、二人とも嫌がるものだから交代制だ。そして今日は、私の番。
「ゔゔ〜……吐きそう〜……」
『動物解体』の本を見ながらさっき射った鳥を捌いていく。血が……血がぐちょぐちょするぅ〜……ヨルはこっちも見ずにたき火や実の仕分け。くそ……
「ふぅ……食べた……」
まだ、お腹いっぱい食べられるほどではない。でも、地球に来てから移動しかないから、小さな楽しみ。
「……お母さんたち、どうしてるかな……」
「………」
石になるって、どういう感じなんだろう?仮死状態みたいなもの?じゃあ、やっぱり意識はないのかな。
「………シエル………」
少し時間が経って、色々考えるようになった。シエルだって、私より先に進まなければ今頃ここに……
ペチ。
ネクが肉球で私の頬を叩いてきた。なにも言葉は言わないけど、励ましてくれている。私は、たった一人残った家族を抱きしめた。
ヒュウ。
夜の風が冷たい。いったい、ここの季節はなんだろう?時間も季節感覚も何もかもが狂ってくる。でも、夜の空をほうきで飛ぶのは、確かに寒かった。でもネクがお腹辺りにいるから、幾分かあったかい。
「……ホシ、感じるか?」
「え?なにが……あ、」
なんかこう、久々に自分の家の匂いを嗅いだ感じ。近くにありすぎて、今までなにも感じなかった感覚。
「……魔力の……流れ……」
ディーア族が来たときも少し感じた、その感覚。もしかしたらまたディーア族かもしれない。でも、もうフランスにも入ったらしいし、エッフェル塔も近い。もしかしたら。
「向こうも魔力を感じ取ってるはずだ。近づくまで待とう。」
それからは、魔力の動きに最新の注意をはらって待った。もしもディーア族だったときも、すぐに動けるように。
ザク。ザク。
足音が近づいてくる。
「この辺りから感じるんだけど……」
「うん。近くにはいると思う……」
話し声?ヨルが言ってたメイドって、二人だったのかな?そして見えてきたのは。
一人は、長いオレンジの髪を横に一つに結った、女の子。
もう一人は、ふわふわのピンクの髪を緩く下に二つでしばった、青い目の女の子。
「……!ヨル王子!」
「キラ!!」
キラと呼ばれたオレンジの髪の女の子は、ヨルに走って抱きついた。
「わあぁ!本当に会えてよかったです!」
「うん。俺も。……よかった。」
二人だけにしかわからない感動の再会だが、私まで胸が熱くなってくる。あれ、そういえばもう一人の子は、何者?
「キラ、あの人は……」
「ああ、あの子はツキ。アステール国で会ったから、一緒に逃げてきたの。」
すると、その子は緩くしばったピンクの髪をなびかせて、軽く会釈をした。
「ツキです。」
ピリッ……
え、なに、この空気。なんか、ピリッてしなかった?ヨル、心なしか顔怖いし。
「……知ってると思うけど、俺はヨル。」
しかしヨルはすぐに顔を戻して、いつものテレビで見るような笑顔に戻った。
「あ、えっと、私はホシ!ヨルと一緒にアステール国から逃げてきたんだけど……、よ、よろしくね!」
結局、謎の空気はわからないまま。そのまま夜が明けようとしていたので、とりあえず食事をとることにした。
パァン!!
「へえ、上手いね!ホシ!」
「えへへ、結構頑張ったから。」
今はキラと狩り中。最近練習してきた弓の腕を褒められて嬉しい。
「ホシは雷属性?私と同じだね!」
「あ、あ〜はは……そ、そんなところ〜……」
実は全属性使えます。言った方がいいのかな?いや、でも結構とんでもないしな……私も原理よくわからないし……
「じゃ、私も頑張ろっかな〜」
そう言ってキラは近くで飛んでいる鳥に狙いを定める。
ドォォン!!
耳をつんざくような雷鳴。上空から、雷が落下したのだ。
「あ、火力強すぎたかな?」
……ホンモノの雷属性は凄い……
「あ、やっぱり焦げちゃった。表面削げばいけるかな?」
う〜ん、さすが私たちと同じで1週間ちょい地球で生き残った人……たくましい……
〜Sideヨル〜
「………」
「………」
現在、ツキと山菜を採取中。しかし、空気は最悪。当たり前だ。だって、俺がコイツを警戒しているんだから。
「ヨル様、こっちに食べられるキノコありましたよ。」
しかし、ツキは話そうとしない。でも今のことろ怪しい行動もない。こちらから、話を切り出すしかないようだ。
「……どういうつもりだ?ツキ……いや、」
ツキの顔が強張る。俺は、コイツが何をしたいのかがわからない。
「ルシーン国第2王女、ツキ王女。」
アステール国を滅ぼした国の第2王女。信用できるわけがない。ルシーン国には上に第1王女と王子がいるから、第2王女が政治に出ることはない。だから、ホシもキラも気がつかなかったのだろう。しかし、俺はアステール国の王子だ。資料で第2王女の顔と名前くらい見たことがある。
「スパイか?暗殺か?」
最新の注意をはらわなければ、俺たちに命はない。しかし、ツキ王女はそれのどれにも首を振った。
「……疑うのも仕方がないと思う。でも、私はスパイでも暗殺者でもない。ただ……あなたたちの、味方よ。」
わけがわからない。人の国をまるまる滅ぼしておいて、何を言っているのか。でも、この絶好の機会であるはずの二人の状態で、なにもアクションを起こさないというのは、それなりの理由はありそうだ。
「……第2王女なんかじゃ、なんの力も持たないから……」
「……?」
コイツの目的がわからない。でも、とりあえず今すぐどうこうするということではなさそうなので、とりあえず泳がせておく。今すぐ、ここで殺せば危険はないはずなのに。結局、俺も怖がりで甘いんだな。
でも……もし、ツキ王女がディーア族だと知ったら、キラは……
ーーーーー
「わぁ!今日はキノコもあるんだ!」
狩った獲物を片手に、ヨルとツキと合流する。どうやらあちらは、木の実の他にキノコもゲットできたようだ。
「よ〜し!私が捌きますよ!ヨル王子は座っててください!」
「いや、俺も……、」
「私、厨房にも入ったことありますから!捌くぐらいできますよ!」
「………、」
……メイドがいるのも、大変そうだな……
結局、華麗に捌くキラを横に私たちは細々と木の実の仕分けをしたり、たき火を炊いたりしていた……
「そういえばヨルって、寝るとき帽子外さないの?」
カエムル人なら必ずつけているトンガリ帽子。靴と同じで必ずつけるものなんだけど、寝る時までつけるのはいささか邪魔だ。
「……まあ、色々あって。」
……う〜ん……やっぱりまだまだ謎が多いなぁ〜……
「それなら、ツキもいつも外してないよね」
そこで声を発したのはキラ。確かに、もう寝るというのにツキは帽子を外す気配がない。
「う〜ん……つけてた方が、落ち着くんだ。」
そういう人もいるのか。私は寝るときの帽子なんて邪魔でしかないからな……
「そ、そういえば、そろそろ寝るときの番とか考えなきゃいけないな。盗賊が襲ってこないとも限らないし。」
あからさまに話をそらしたぞ、ヨル。これは私でもわかる。しかし、意外にも話に乗っかったのはキラだった。
「じゃあ2時間刻みで交代で見張りします?4人いるし、十分でしょ」
「いや、一時間刻みでいい。」
キラの言葉に口を挟んだのは、私の肩に乗っていたネク。そういえば最近全然話さなかったな。
「俺とコイツがいる。もっと寝たいというなら、俺達使い魔が2時間起きていてもいい。」
「勝手に指図するな。それに、『コイツ』とは無礼だぞ。我は王族の使い魔だ。」
「フンッ、今はそんなの、関係ないな。」
「生意気なやつだ。首を飛ばすぞ?」
「今、それができるならやればいい。」
うお〜い。お二人さん仲悪いのかい?なんか首を飛ばすとか物騒な言葉出てきたし。
「……オースティン、結局、いいのか?ダメなのか?」
「ふん、まあいいだろう。我は移動中に寝れる。」
オースティンはいつもこんな調子なんだろうか。ヨルは慣れた様子で答えを催促する。この二人、私とネクと同じで使い魔の方が年上っぽいな……まあ、そのパターンの方が多いんだけど。使い魔は人間より長生きだから、親の世代の使い魔を受け継ぐことが多い。
「じゃ、じゃあ私最初に番してていい?寝起きだと寝ちゃいそう!」
「オッケーわかった。じゃあとりあえずテント張るか〜」
そう言ってキラがいそいそと出したのは、デカいテント。ん?これ、何人分だ?
「あ、私が持ってきたの。5人くらいは入るよ。襲撃のとき、丁度家にいたから。」
どうやらこれはツキの私物らしい。襲撃時にそんなに冷静に行動できるとは……雰囲気も大人っぽいし、私たちより年上なんだろうか。
「……俺、普通に自分で持ってきたテントで寝ようか?」
「え、なんで?」
みんなで同じテントで寝ればよくない?そんな軽率なことを考えていた。
「いや、俺だけ男、だし。」
……。なんか、ずっとヨルと二人で寝てたから今更感。でも、本人としては気にするよね。
「使い魔がいるとしても一人で寝るのは危険ですよ〜、それにすこ〜し前までは着替えも私が手伝って……」
「わ〜!!少しって!いつの話だよ!!」
……ヨルとキラ、仲いいな?幼馴染ってやつなのだろうか。キラがいつからメイドをしていたのかは知らないけど。まあ、とりあえずなんやかんやでテントはみんな同じとなった。まだ1人分余裕あるしね。
こうして、四人になって最初の夜が明けていった。




