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18話〜特訓そのさん!〜

「ブルハ・ラール・ツキ!!」

「キシャーーッ!!!」

「っ!ブルハ・ラール・ヨル!!」

あれから、俺が魔法を使うと森が焼けてしまうので主戦力をツキにしたはいいものの、正直ツキの攻撃力はホシよりもどうなのかというレベルだ。それに魔物との相性も悪いようで、魚に水で攻撃してもそんなにダメージが入らない。結構魔物がこちらに襲ってきて、流石に危険だと俺が魔法を撃ち、火事になる。とんだ悪循環だ。

「ごめんなさい……っ、私がもっと攻撃できたら……」

「いや……俺の方こそ……もっと魔法制御ができれば……」

「「…………。」」

この条件をどう脱解しろというんだ。そう思っている間に、魚の魔物がこちらに水を噴射してくる。ダメ元で威力を落とし、攻撃してみるが、やはり周りに燃え広がってしまった。

「……あ、ヨル様、その……水鉄砲みたいに、こう……なんか一点にズバッ!って攻撃できないかな?」

「ホシの矢みたいに……か……ちょっとやってみる。」

人差し指を前に出し、片目を閉じて跳んでくる魚に集中する。指先にだけ魔力を集中させ、バンッ!と撃ってみた。

「貫通……っ!てか外れたし!」

ジュッ!と音を立てながら水は一瞬の間穴が空き、底の地面にも何メートルか小さな深い穴が空いていた。これが木なら、2、3本は貫通してそうだ。

「ちょっと待ってて……」

ツキがそう言うと、胸の前で何やら粘度の高そうな水を魔力の込めた手で捏ねていき、バシャッと魔物の前に放り投げる。

「キシャッ、シャー!!」

「!!」

魚はその粘度の高い水の中でビチビチ跳ね、逃げれなくなっていた。

「ヨル様、これで撃ってみてください!」

「あ、ああ。ブルハ・ラール・ヨル。」

今回は集中した魔法が、魚の胴体を貫く。やはり後ろに貫通した穴ができるが、山火事になるよりかはマシだろう。

「できた……!これなら進めますね!」

「ああ。あとは効率面……だな……」

このやり方、時間はかかるし俺の命中率も良くないから効率が悪すぎる。今までの俺のスタイルは全体攻撃だったから。

「………ん?」

ふと、小さな魔物が森の奥や水の底に逃げていくのが見えた。魔物は襲って来るものだと思っていたが、何故だろう?

「………。」

もしかしてと思い、強くなりすぎないように気をつけながら自分の周りに魔力を高める。

「……ヨル様?何やって……」

すると、今まで襲って来たような中くらいの魔物も逃げていくのが見える。

「やっぱりだ。ここの魔物たち、威圧すれば襲ってこない。」

「なるほど……!じゃあ、こんなのはどうですか?」

ツキが水を自在に操っていき、大きな水の魔獣ができる。今にもこちらに噛みついてきそうな迫力だ。

「攻撃能力はないんですけど……威圧にはなりますよね?」

「みたいだな。皆逃げていく。」

食べる分だけの魚は確保して、他は木の実で担う。こうしてなんとか一日を終えたのだった。


「ふぁ、飯か。早く我にも寄越せ。」

「……オースティン……お前ずっと寝てたのか……」

「ふん、我は元々夜行性だ。」

偉そうな態度に呆れながらも、魚を生のまま投げつけてやる。100年近く、ずっと王家で飼われていたからこの偉そうな態度もしょうがないのだろうか。

「まずい。骨ばかりで脂ものっていないではないか。」

「……あのなぁ……」

確かに俺も最初は城で食べる食事との差に吐きそうにもなったが、いい加減慣れてくれないだろうか。地球に来て一カ月近くは経っているのだから。

「ふふっ、クロエも年とったらそうなるのかな。」

俺達の会話を黙って聞いていたツキが笑い声をもらす。会話の流れ的に、クロエはルシーン国王家の使い魔なのだろうか。

「お父様の使い魔が亡くなってしまったから、早めに次の王候補のお兄様が王家の使い魔を飼ってるの。でもまだ子どもだから、本当に子育てしてるみたいだった。」

そういえば向こうの使い魔が亡くなったと言っていたな。オースティンもそろそろ年だし、跡継ぎとか考えないとな……といっても、俺が跡継ぎできるかどうかの問題の方が深刻だから後回しになってしまうのだが。

「……そういえば、なんでツキは俺のこと様付けで呼んでるんだ?」

同じ王族だし、身分的にも年齢的にも呼び捨てで構わないはずだ。俺も最初は「ツキ王女」と呼んだりしていたが、ホシもキラも呼び捨てだし、ここで王女と呼ぶのも変だと思い結局変えたのだ。

「え……?う〜ん……、私なりの敬意……?王位継承権的にはヨル様の方が上だし、そもそもこんなことしでかしたのはルシーン国だし。せめて私だけでも、アステール国に敬意を払おうかなって。」

ツキはよく、こういう発言をする。ルシーン国の王女だと、自分の国は加害者だと。そういう意識を、ずっと持っている。俺からしてみれば今俺に敬意を払われても困るし、ここの集まりではディーア族であるセイもいるんだからそんなに気にする必要はないと思うのだが、それが自分の国を敵に回したツキの覚悟だというのなら、受け止めようと思う。

「……そう、か。」

…………。

無言でキャンプの準備を始める。木を集めて火をつけるのは、もう慣れたものだ。そこへ魚を木に刺して焼き、採った木の実を軽く炙る。ツキはテントを建てているようだ。

「あ、そうだ、見張り……」

「それは我がしておいてやろう。その代わり、日中はゆっくりさせて貰うがな。」

……本当に、頼もしいのか面倒なのかよくわからない奴だ。でもこう言ってくれていることだし、お言葉に甘えて見張りはオースティンに任せよう。

「あ……テントとか、一つで大丈夫か?俺は最初の方ホシと二人だったから慣れてるけど……」

「え、いや、全然!いざという時近くにいないと困りますし!」

そういえば5人になってからはデスティニさんの家に泊まったりカラオケに泊まったりだったからテントは久しぶりだ。5人でキャンプするとなると……やっぱり男女で分かれて2、3か?

「ヨル様、テント張れました。」

「ああ。こっちも焼けた。」

炙った木の実と焼いた魚をお皿に乗せ、ツキに渡す。味は………うん……。まあお察しの通りだ。

「…………。」 

「…………。」

お互い王族で舌に肥えているのは間違いないので、微妙な顔で魚や木の実を貪る。城で食べたフルーツが恋しくなってくるな……


………はあ。疲れたな。

とりあえず一息ついて、オースティンに見張りを任せつつ俺達はテントの中で就寝。キャンプ生活も慣れてきたと思っていたが、やはり疲れるものは疲れる。そして、お腹が空く。これでも13歳男子だ。育ち盛りの食べ盛りで、あんな量で足りるわけがない。

ぐぅ〜。

「……ふふっ、お腹空きました?」

「…………悪い………」

普通に恥ずかしい。とは言っても、自分だけ贅沢するわけにもいかないし、我慢するしかない。

「そうだ、私、王宮から持ってきたものがあるんです。保存も効くし大好きなものだから、どうしても持っていきたくて……」

そう言ってツキはなにやら鞄から瓶を出した。

テカテカと光る黄金色。桃の蜂蜜漬けだ。

「蜂蜜に漬けたといってもそろそろ食べないとまずいので今日食べちゃいましょう。」

中身はもう少なくて、5個ほどの果実が入っていた。こんなに微妙な数を残すということは、本当に少しずつ大切に食べていたのだろう。

「……甘……」

「お口に合いませんでしたか?」

「いや、甘さがしみる。」

「ふふっ、確かに。」

デスティニさんの家で飲んだ紅茶でさえも甘く感じたのに、こんな蜂蜜に漬けた桃だなんて甘すぎるに決まっている。


びっくりするほど何もなく朝を迎え、目的地に向かって歩き出す。威圧して戦う回数を減らし、それでも襲ってくる魔物はツキが動きを止め、俺が威力を落として攻撃、というのを続けている。この調子で歩いていけば、すぐに目的地に着くんじゃないか?

「あ……蛇……ブルハ・ラール・ツキ。」

ブヨブヨした水の塊で蛇の動きを止める。俺も攻撃態勢に入る……

ところだった。

「シャアぁぁぁ!!」

バシャンッ!!!

「「!!??」」

蛇が水の塊に噛み付いて、拘束を解いてしまった。そしてすぐさまこちらに向かって噛み付いてくる。

「ブッ、ブルハ・ラール・ヨル!!」

急いで魔法を使ったせいで、かなり周りの木に燃え移ってしまった。急いでツキが炎を消しにかかる。

が。

「なっ、なにこれ……っ!」

周りからうねうねと大量の蛇が草むらから顔を覗かせる。どこを見ても蛇でいっぱいで、どうやらすでに包囲されているようだ。

「シャァァァッッッ!!」

「ぶっ、ブルハ・ラール・ツキ!!」

蛇から攻撃されたツキは慌ててバリアを張るが、後ろががら空き。俺は後ろから迫る蛇を魔法で追い払った。

「シャァァァ!!」

「なっ、なんで私だけ!?」

再びツキの方にだけ蛇が迫る。蛇はたくさんいるし、これでは堂々巡りだ。なぜ俺のところには来ない?魔力の多さで無意識に威圧してるのか?

………もしかして。

「ブルハ・ラール・ヨル!」

ツキの周りに炎の輪を漂わせる。するとツキに迫っていた蛇は速やかに引いていった。

「やっぱり……!蛇は火が苦手なんだ!」

蛇は火が苦手。それなら……!

「ツキ!役割を反対にしよう!ブルハ・ラール・ヨル!!」

ゴオッと、蛇の周りを炎で囲う。そこまでしたらもう俺が何をしたいのかわかったようで、ツキは呪文を唱える。

「ブルハ・ラール・ツキ」

しかしそれは攻撃技ではないようで、ツキの周りにふわふわと雫が浮かぶのみ。きっとこれは、強化魔法だ。確実に一発で仕留めるために。続いて、ツキの呪文が耳をつんざく。今度は攻撃魔法。鋭い水飛沫があがり、目を開けた時には蛇は全員倒れていた。


「おめでとう。クリアだ。」

目印の大きな木に着くと、ルシファー様が待っていた。すでにホシたちも着いていて、疲れた様子。特にセイに関しては切り傷などでボロボロだ。

「……あ!セイ、怪我してる!こっち来て!」

「……え?ああ、このくらいならラルフで……」

「はやく!」

かなりツキの性格がわかってきた俺は、まあそうなるだろうな、と思いながら治療を受けているセイを見る。

「ヨル、そっちはどうだった?」

気づけばホシがこちらに近づいていて、俺に問いかける。どうだった……まあ……うん……

「……ん……まあ、なかなか大変だった……けど……」

「でもそっちは二人だし、私たちより大変そうだよね。」

「まあ……二人とか以前に、俺がかなりやらかしてたんだけど……」

「え!?ヨルが!?」

……。ホシは俺を完璧星人だとでも思っているのか。確かに最初にホシを助けたのは俺だし、ある程度のフィルターがかかっていても仕方がないとは思うが、俺は人間だしホシと同い年。失敗だってするし完璧ではない。しかも今回はフィールドの相性が悪すぎた。

「……ここは、森だからな……」

「ん?あ、あぁ〜………」

ここまで言ったらもうわかったようで、微妙な返事を返してくる。いやまあ……本当に大変だったな。これからディーア族と戦う場面もたくさんあるだろうし、いい経験にはなっただろうけど。


☆☆☆☆☆☆☆


「ルシファー様、ありがとうございました。」

頭を下げるツキに続いて、私たちも頭を下げる。自分の改善点や仲間との連携の難しさ、それを身を持って知った。私たちは、もっと強くならなくてはいけない。私たちの世界を取り戻すために。もっと。

「いや……今世界がこうなったのも、私が次世代に問題を残した責任でもある。こちらこそ、大変な思いをさせてすまない。」

ルシファー様だって、いっぱい悩んだんだよな……国の価値観的に次男を王と決めるしかなく、反感を買うとわかっていながら王としてやるしかなかった……上に立つ人は、そういう責任があるんだ。

「それで、次の目標についてだが……一番近い気配はあちらの方角。ずっと動き回っている気配もある。」

ルシファー様が指さしたのは、何もない森。そっちには……何があるんだ……?

「そちらの方角ですと……フランス……ですか……?」

「え、また戻るの?」

フランスといえば地球に来て最初に決めた目的地。ツキとキラと会った場所だ。そんなに日は経っていないはずなのに、なぜだか懐かしい。

「いや、そんなに近くはない。フランスよりもっと遠くの方だ。」

「となるとイタリアか……もしかしてアジアの方までいくかもしれませんね。」

いたりあ。あじあ。なんだそれは。改めて自分が地球の地理にちんぷんかんぷんなことを痛感した。

「……ねえ、ヨル、わかる?」

「……イタリアはなんとか。アジアはなんだ……?国の名前……?」

「いえ、州の名前です。世界を大きく分けた名称ですね。」

………。う〜ん。やっぱり地球のことについてはセイに任せた方がいいかもしれない。

「私は宝石の姿となってついていこう。必要があれば起こしてくれ。」

ルシファー様はそう言い残すと青く綺麗な宝石の姿となってしまった。……宝石になれるとは言ってたけど、本当なのか………

「とりあえず次の目的は決まったな。イタリアを目指しつつ、もっと遠いところであればそのアジアまでいく。」

「だね。」

「これはまた長旅になりそー!」

「とりあえず海を渡らないとね。」

それぞれが歩き出す。きっと、この先はまだまだ長い。5人で、乗り越えて行かなければならないことも多いだろう。

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