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15話〜サファイア〜

「これが、ビッグベン?」

電車に乗って、数分。駅を出てすぐに大きな時計が見え、そこから一分ほど歩いたら、大きな時計台の根元に来た。

「うっ、人酔いしそう……」

「はぐれないように気をつけないとね……」

「有名な観光地ですからね。」

とりあえず昨日みたいにはぐれないように、セイの姿を追う。セイは地球に詳しいし、セイについて行って間違いはないだろう。

「……で、どうするんだ?」

「え、どうするって……ん?」

「どうするんだろう……?」

あの本には『サファイアを大きな時計台に』としか書かれていなかった。この近くにサファイアがあったりするのだろうか……?

「来たか」

「え」

なんだか、すごく最近聞いたような声。声のする方を振り向くと、紺色の髪に黄色い瞳をした男の人。……そうだ。あの本をくれた、ヨルにすごくよく似た人だ。

「……あの時の……!」

「君は確か……『ホシ』と呼ばれていたな。」

私をチラリと見たあと、この男の人はヨルの方に目線を向けた。そのままじっと、3秒ほど凝視する。

「……な、なにか?」

「……君は、私に似たんだな。」

「………?」

あ、ヨルに似てるって思ったの、私だけじゃないんだ。ヨル本人はそんなに似てないって言ってるけど。

「私は、サファイアだ。」

………。ん?それは、名前?『サファイア』って名前なのか?宝石を探しているというときに、まぎわらしい名前だな。

「正真正銘、宝石の『サファイア』だ。勝手に宝石の形だと思い込んでいたらしいが、7つの宝石は人間の姿をとれる。」

「………え、……えええぇぇぇ!???」

全員で驚愕。思わず5人で大声を出してしまった。周りの視線が痛い。

「……場所を移そう。何しろ、ここは人が多い。」


少し歩き、若干人が少ないところにやってきた。若干だが。十分多いが。

「7つの宝石を当てにしたということは……カエムルで、何があった?」

「……カエムルを、知ってるんですか?」

ヨルが『サファイア』と名乗る男の人に素朴な疑問を問う。……とりあえず『サファイアさん』って呼んでいていいかな。

「ああ……懐かしいな、カエムル……」

……?懐かしい……?サファイアさんは、カエムルにいたことがあるのだろうか?そもそも、どうやって産まれたんだろう。

「……大体予想はつく……耳が付いているものと、付いていないものとで戦争が起きたのだろう?」

「……大方合っています。……でも何故……」

当たり前のことだが、カエムルで起きたことはカエムル人しか知らないはずだ。しかし『予想』ということはあの事件のことをはっきりと知っているわけではない。ではセイのように、少し前まではカエムルにいた、という感じなのだろうか。

「前世……と言った方がいいのだろうか。元々は、カエムルに住んでいたからな。名はルシファーという。」

「……えっ、ルシファーって……!」

この名前は頭の悪い私も知っている。初等部の歴史でも学ぶ、カエムル人なら誰もが知る名。

「……初代王……?」

同姓同名でなければそういうことになる。でも、初代王が生きた時代はだいぶ昔だ。普通に考えて生きているはずがない。『前世』と言っていたし転生者……とかなのだろうか……

「お前たちは私と同じ血の気配がする……私の子孫、今の王族か。」

サファイアさん……いや、ルシファー様?はヨルとツキの方を向いて、呟いた。ヨルとツキは小さく頷いて答える。……そうか、ヨルとツキって遠い親戚みたいなものなのか。それにしてもルシファー様、肖像画とだいぶ顔が違う。やはり美化されていたのだろうか。

「『7つの宝石』という制度は私がつくった。私の2番目の子を王にしなければならなくなり、1番目の子が新しく国を創った瞬間……いつかは戦いが起こると自負していた。そして、私にはその戦いを止める力も、時間もないと。だからいつか、戦いを止めようとするものの助けになるように、『7つの宝石』をつくったのだ。」

ルシファー様は遠い昔のことを思い出すように空に顔を向ける。まさか、ルシファー様が『7つの宝石』という制度をつくったとは。

「では……『7つの宝石』とはどのように決まるのですか?ルシファー様は、地球で新たに生を授かったということですか?」

ついに『7つの宝石』という秘密について迫る。王家に伝わる本に書いてあったとはいえ、まだまだ謎な部分が多かったことだから。

「私は、7つのの宝石をつくったのと、転生魔法を使ったことで死んだ。歴史には記されていないだろうがな。……そして、私はいつの間にか地球にいた。7つの宝石の一人、『サファイア』となっていたのだ。……これが、7つの宝石である証だ。」

そう言ってルシファー様は、自分の手を額に当て、前髪を上げた。するとそこには、魔法陣のような模様が刻まれていて、タトゥーのように剥がれることはなかった。

「他の宝石については、私が7つの宝石をつくったときに生を受けたものからランダムに選ばれたらしい。私はそれぞれ一人ひとりに会いに行った。『宝石である特徴』を話したよ。」

「『宝石である特徴』……?」

それは、さっきルシファー様が見せてくれた、タトゥーのような模様のことだろうか。でも、この言い方はそれだけではない気がする。

「まず、宝石の姿をとれること。これはなろうと思わなければならないからあんまり深い意味はないんだがな。次に、さっき見せた模様のこと。7つの宝石にはこれが体のどこかに必ず刻まれている。同時に、カエムルの存在についても話した。ご家族も一緒にな。……そして、これは暫く経ってから気付いたことなんだが。」

ルシファー様が一旦ここで話を切る。話疲れたかのように、息を一つ吐いてからもう一度言葉を紡ぐ。

「『7つの宝石』は不死身なこと。刃物で刺されても硬い宝石のように弾き、いくら生きても寿命が存在しない。でも、子どもを産めば別なんだ。宝石の能力は第一子に必ず受け継がれる。普通の人と同じように、寿命も訪れるようになるんだ。」

……つまり、ルシファー様は……おいくつなんだろう。王宮に置いてあった7つの宝石について書かれた本も、かなり昔からあったようだし……ルシファー様が歴史上で生きた時代から、ずっと生きているということか。

「……教えていただき、感謝します。それで……アステール国復興のために、ご協力願えますでしょうか?」

「……そう硬くならなくていい。確かに私は初代王とはいえ、今はただのサファイアだ。……勿論、協力しよう。元は、私が解決しきれなかった問題だ。」

これで一つ、宝石が集まった。……ということだよね?なんかあんまり宝石感がないから、違和感があるな。

「あと一つ、謝らなければならないことがある。私があげた絵本だが、そこに書いてある場所はほとんど当てにならない。あくまで私が、最初の宝石に会いに行ったときにいた場所だ。きっと今は変わっているだろう。」

「……え。」

と、いうことは宝石の場所については振り出し?まあでもそうだよね、普通に結婚して子どもを産んでるんだったら、住む場所だって変わってるよね。会いに行ったのだって、もう何百年も前の話らしいし。

「……まあ、なんとなくの居場所なら気配でわかるがな。今は遠すぎて、方角くらいしかわからん。」

う〜ん……つまり、なんとなくレーダー……的な?まさかの一歩前進した途端振り出しに戻るとは思わなかった。

「……え、じゃあ次の目的地、どうするの?」

「えっ、と……とりあえず、ルシファー様の気配を当てにして……」

………。えっと、どうしよう。みんな困り果てて黙ってしまった。キラが言ったように、なんとなくレーダーを当てにする?それもそれで現実的ではないような……

「……あ、その……目的地の話からはそれるんだけど、ルシファー様に一つお願いが……」

「なんだ。」

ツキがお願いとは珍しい。ルシファー様に許可をもらったツキは、話を続ける。

「私たちを、鍛えて下さい!!」

「……ん……?」

私『たち』……?


「なるほど、ルシーン国王国騎士団と戦うだけの力が欲しい、と。」

「はい。今までは逃げて戦いを逃れていましたが、ずっとそういうわけにもいきません。私の国の騎士団は、そんなに甘くできていない。」

今まで近くで見てきたツキだからこそ、わかる実力の差。私だって、本当はわかっていた。このまま逃げ続けてはいられないと。同じ手はきっと二度と効かない。逃げるパターンを考えるのにも限界がある。

「……いいだろう、ついてこい。」

大人しくルシファー様についていくと、向かった先は人通りの全くない裏路地。……裏路地には、あんまりいい思い出ないんだけどなあ。誘拐されたし。

「ここなら魔法を使っても問題ないだろう。防音魔法もかけるし、壊れたら修復魔法もかけてやる。とりあえず全員一発、得意魔法を撃ってみろ。」

……得意魔法。……。私の得意魔法って、なんだ?そもそもなんの属性を出せばいいんだろう。とりあえず、全ての属性の弓矢を披露することにした。

しかし。

「全てに置いて曖昧すぎる。器用貧乏にもなりきれていない。」

「強い魔力をぶっ放せばいいってもんじゃない。これでは味方にも被害が及ぶぞ。」

「回復が優しすぎる。あと、いくら回復役だからって少しは攻撃を覚えておけ。」

「脇が甘い。筋はいいがドーム状のバリアなら後ろにも気を使え。」

ボロクソに言われましたよ。ハイ。

私が目指すのはまず器用貧乏かよ。くぅ〜、なんか悔しい。

「今のところまともに戦えそうなのはセイだけだな。攻撃特化の特性上少々危なっかしい部分はあるが。」

褒められたのはセイのみ。しかもその後は軸の話とか応用の魔法とかレベルの高い話をしていた。……セイって、かなり強かったんだ。そりゃそうだよね。ディーア族から一人で逃げて来てるんだから。それに、出会った時にあちこちに切り傷があったから、多少は戦ってから逃げて来たのだろう。あの王国騎士団とまともに渡り合えるだけ凄い。

「……そうだな。キツくはなるが、それでも特訓がしたいか?」

その言葉に、5人で顔を見合わせる。私だって、強くなりたい。今まで知らないことだらけで、教えて貰ってばっかりだったけど、戦闘くらいは。みんなの役に立ちたい、と思った。5人が全員頷いたところで、提案者であるツキが代表して返事をする。

「はい。」

「……なら、付いてこい。」

ルシファー様はなんだか少し満足したような顔をして、歩いて行った。

私たちは、その背中を静かに追ったのだった。

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