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10話〜地球人に紛れて〜

女の子は、魔女として生まれました。

魔法はなんでもできます。人を焼き殺すのも、沈めるのも簡単です。魔女はその力に溺れ、人々を脅迫し、魔法による支配を始めました。

人々は魔女を恐れ、『魔女狩り』を始めました。

魔女狩りで、魔女の多くは死にました。女の子も、魔女狩りにより魔女だとバレ、今日処刑される予定です。

女の子は世界を恨みました。

『絶対に、人間どもを許さない。次に生まれる魔女の願いを叶えてやる。みんな人間を憎んでいる。きっと魔女は、「人間を殺せ」と願うだろう……』

魔女は最後に、虹色の涙を流しました。

『願いを叶える7つの宝石』……

魔女は、最期の命を持ってそれを作り出したのでした……


「……願いを叶える、7つの宝石……」

やはりみんな、その言葉に引っ張られる。だって私たちは探しているのは、まさにその『7つの宝石』だから。

「この本が書かれたのはここ、イギリスです。もう少し、この地で調べ物をしますか?」

「……そうだな。他に、行くアテもないし……とりあえずその伝説を頼りにするしかなさそうだ。」

というわけで次の私たちの目的は、イギリスで調べ物。頭使いそう……私苦手かも……

「あと……ホシさんの、属性についても少し、調べていいですか?」

「……へ!?私の属性!?」

突然の私の話題にびっくり。確かに気にはなるけど、今はそれより大切なことがあるんじゃないか。

「グラマー族とディーア族に分かれた理由に、繋がってるかもしれないんです。……もともと、ディーア族の耳は魔力を安定させるためにできたといわれているんです。」

今まで私の肩で眠っていたネクが、ピクリと反応する。

「ネク〜?なんか私の属性の話になるたび反応するよね?何?」

「……別に。」

プイッとそっぽを向き、大きな欠伸をしたあと金色の目を閉じ、寝てしまった。

「んも〜……秘密主義なんだから〜……」

「ふふっ、話を続けていいですか?」

セイが小さく笑いながら、私に確認をとる。笑われたことを少し恥ずかしく思いながらも、うん。と返事をする。

「グラマー族には、『魔力の高い子ども』……制御できないほどの魔力を生まれながらに持つ人がいます。グラマー族は薬なんかで抑えるしか方法がないようなんですが……ディーア族には、そもそも『魔力の高い子ども』は生まれないんです。」

「そーなの!?」

………。

みんなの目線が私に集まる。声をあげたのは私だけ。私だけ知らなかったらしい。恥ずかしさのあまり、身を小さく縮めた。

「大丈夫ですよ、一般人には知らない人も多いです。……で、ディーア族に『魔力の高い子ども』が生まれないのは、耳にあるのではないかと、僕は推測しています。」

あの大量の書物を読んでいたら、発見できたこともあったのだろう。

「つまり……ディーア族の耳が、魔力制御に繋がってる、ってこと?」

「はい。自分の耳で調べてみたんですが、確かに血管が多く魔力が通りやすい構造をしていました。体内の魔力循環の源である器官から……」

「?、???」

ちょっと難しい話になってきて理解が追いつかない。だってまだ生物の授業、2ページくらいしか習ってないもん。

「あ、ごめんなさい。とりあえず、ホシさんの属性を調べることでわかることがたくさんあると思うんです。本来、全属性は生まれたばかりの赤ちゃんには制御できない。ホシさんは後天的に全属性になった、と言っていましたが、元は無属性だったというのも気になります。」

そ、そんなに不思議なものだったのか。私。

「……とりあえず、この付近で一番大きい図書館、大英図書館に行きましょうか。あと、地球人の格好をしないと。ついてきてください。」

セイに言われるがままついていって、二階に上がる。

「女性の服はないんですが……僕が昔使ってた服です。この中では僕が一番背が高いみたいなので、昔の服ならぴったりだと思います。また服、買いにいきましょう。」

ついた場所はクローゼットみたいな部屋。どうやらデスティニさんの昔の服も混ざっているらしく、カエムル人らしいローブもチラホラ見える。

「ツキ様はフードのついているものか、帽子を一緒に選んでくださいね。」

「あ、そっか、うん。」

ディーア族特有の耳は隠さなくてはならない。地球では普通じゃないからね。

とりあえず私たちは地球人の服を来て、街に女の子用の服を買いにいくことになった。カエムル人特有のとんがり帽子も、外した。

「さあ!買いにいくぞ!基本好きな服選んでいいからな!もちろんヨル王子も!会計はオレがもつ!」

デスティニさんが張り切った声でこちらを誘導する。ついに、地球の街に出るんだ。たくさんの地球人に、会うんだ。

「俺たち使い魔はここで待ってる。地球では使い魔はペットの扱いになって、入れない場所もあるようだからな。図書館に行くならなおさらだ。」

「ふん。我をペット扱いとは卑劣なものよ。」

「主、いってらっしゃいませ。」

口々に使い魔が喋りだす。いやぁ……個性強いなぁ……

「じゃあ、出るぞ。ここは比較的人通りが少ないところだが、少し歩けばすぐ街だ。心の準備はしておけ。」

デスティニさんがドアノブに手を添えて私たちに心の準備を促す。私たちは小さく頷き、心の準備ができたことを伝える。

「じゃ、行くぞ〜!」

ガチャっとドアを開ける音。そこから差し込む光が妙に眩しい。そっか、昼間なんだ。私たちはついに、昼間の地球を見る。

「……人、いないね。」

「言っただろ?ここはまだ人通りが少ないって。」

かなりビビっていたから安心やら恥ずかしいやら。地球に慣れているであろうセイだけは小さく笑っていた。


しばらく歩くと地球人とすれ違い始め、地球人が営む店も見えてきた。改めて今、地球にいるんだなと実感する。

「とりあえずここだな。服屋。」

カエムルにはないタイプの洋服がたくさんある。あんなに露出して寒くないのかな?と思うものから、着方がよくわからない構造のものまで、様々だ。基本ローブやケープで活動する私たちには理解できない服の構造。

「……えっ、と、なに選べばいいの……?」

「なんか……博物館?みたいだね?(珍しい服がたくさんあるから)」

「城に来た当初のこと思い出すなあ〜……」

「……やっぱり俺、セイの古いやつでいい……」

私、ツキ、キラ、ヨルの順に感想。ヨルなんて選ぶのを放棄し始めている。

「まあ好きに選べばいいんだよ!伝統服を選んでるもんだと思っとけ!」

そう言ってデスティニさんは私たちの背中を強く押した。この人……いちいち力が強い……

「でも自分で服を選ぶなんて、本当にないことかも。」

「まあ……確かにな。」

と、ツキとヨルの二人。さすが王族……服は起きた時点で選ばれているのか。


セイやデスティニに手伝ってもらい、なんとか服を選ぶことができた。私は紫色の上着を羽織り、慣れたローブのような感じに。ヨルはキャップを被って長袖の上着を腕まくりしていて、かっこいい。ちなみに腕まくりのファッションを教えたのはもちろんデスティニさん。ツキは下の服が透けるような上着にロングスカートと麦わら帽子を合わせている。可愛い。キラは明るい服にショートパンツで、とてもキラっぽい。

「ヨルも帽子被るんだ?」

「まあ……なんとなく。いつも被ってるから何もないと違和感というか……」

「まあ確かにね〜。頭スースーする〜」

ディーア族であるツキとセイ、デスティニさんは帽子を被ることは必須だが、グラマー族である私たちはそうでもない。よって、私とキラは帽子を被っていない。

「じゃ、格好も整ったことだし図書館行くか!」



「でっかぁ〜……」

辺り一面の本棚。もはやどのジャンルがどこにあるのかさえわからない。翻訳魔法を使っていても、異国の言葉だらけでクラクラする。

「おそらく僕達カエムル人が地球に生きていた時代に記憶が消されずに残されている出来事……『魔女狩り』を調べるのが一番早いと思います。」

「『魔女狩り』……」

ざっくりいうと、水に沈めて死ななければ魔女=死刑、火に焼いて死ななければ魔女=死刑、というやつだ。どっちにしろ死ぬ。理不尽極まりない。そりゃあ、呼吸魔法とか耐火魔法とかかければ地球人より生きられるかもしれないけどさぁ……使わなかったり長い時間やられていたら魔女でも死ぬ。

「じゃあ歴史書の方か?」

「まあ、基本的にはそうですね。でも一応、伝説とか絵本の類も調べた方がいいかもしれません。」

「んじゃ、二人ずつで手分けして調べるか。」

「じゃあ……図書館が閉まるのが18時だから、17時45分くらいにここに集合しましょうか。」

現在10時。……そんなにかかるのか?7時間も調べていれば、全部調べ終わる気が……

まあとりあえず、私とヨル、ツキとキラ、セイとデスティニさんで別れて調べることになった。


……。現在15時。ごめんなさい舐めてました。調べ終わりません。四分の一も終わりません。あ゛〜……そろそろ翻訳魔法使いすぎて魔力酔いしそう〜……

「……ちょっと休憩するか。」

ヨルの言葉に答える元気も無く、机に突っ伏しながら小さく頷いた。なんでヨルはそんなに平気そうなんだ。同い年だろう!?

「……仕事で、資料とにらめっこしながら一日が終わったこと、あったから……」

悔しがっていた私の心情を悟ったのか、ヨルがそう答えた。

「……そっかぁ〜……」

話す元気がないのもそうだが、そろそろヨルについて驚くことがなくなってきた。というか慣れた。本当に、私とヨルは生きている世界が違ったんだって。こんなことが起きなければ、きっと一生関わることはなかっただろう。

「なんかさぁ、いっぱい仲間がいるの、嬉しいよね。」

机に突っ伏しながら横を向いているため、世界が横に見える。この目線ではヨルは見えないが、きっと話は聞いていてくれてるだろう。

「最初はネクと二人でさ、気付いたら世界が灰色に染まってて。この世界には、私しかいなくなったのかと思った。それでヨルと会って、地球を出て、知らない世界で……ツキやキラ、セイたちと会って……」

一人だったら、どうなっていたのだろう。あのとき、おとなしくミルキーさんとウェイさんに殺されていたのかな。

「……そうだな。俺も、一人だったらどうなってたかわからない。」

「ヨルは一人でも生きていけそ〜。」

少しの沈黙のあと、私の目線の先に本がドサリと置かれた。休憩は終わりということか。

「……そうでもないよ。」

そう小さく一言言って、目線を本に戻した。


短い針が5を指す。時間までもうすぐだ。本は半分も読み終わっていない。こんなに読んでいるのに、今のところぱっとした情報は無しだ。もう心が折れそう。

「7つの宝石。」

突然の声に、バッと顔を上げる。ヨルの声じゃない。だってヨルも驚いた顔をしている。じゃあ、誰が。

「……この本、いるか?」

紺色の髪に、黄色い目。髪はまあまあ長めで、肩にかかるかかからないかくらい。170センチくらいの、男性だった。

「……っ!これ……!」

男性が持っていた本は、『7つの宝石』。完璧に、私たちが探しているそのものだった。

「……それ、この図書館のものじゃないから、持ってっていいよ。」

「あの、……っ、ちょっ!」

男性がすぐさま回れ右をして去ってしまったので、ヨルが慌てて追いかける。私も急いでその後に続いた。が。

「……いない……」

角を曲がった瞬間、いなくなってしまった。なんだったんだろう。さっきの人。しかもあの人……

「ヨルに、似てなかった?」

「……?そうか?たしかに、髪色とか目の色は同じだったけど……」

ヨルに似ていると感じたのは、私だけだったのだろうか。でも、なんだろう……大人になったヨル、みたいな感じだったな……

「……とりあえず、この本読んでみるか。」

机に置き去りになった、『7つの宝石』と書かれた絵本を、めくった。

大英図書館は実際にある図書館ですが、ネットで軽く調べただけです。

少し矛盾があるかもしれませんが、お許しくださいm(_ _)m

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