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歌うように
緋色に染まる天空路
西に飛ぶ鴉の群れが
空を埋めるのが美しい様
手から零れ出た硝子玉を
必死に集めているのは
羊を見失った飼い主だ
魚は一匹 皿の上に乗せられて
食べられる日を待っている
乾燥して行くのは砂漠だけでは
ないのだけれど
茨の園で花が咲いたら
棘だらけの蔓を編んで
王冠を捧げよう
それは光を信仰しているらしい
だから闇に住む者は
彼の存在を嫌うはずだと
彼を迫害した者は
闇の中に潜む者達だと
彼等は言うのだ
山羊の人々が支配した時代は
暗黒であったと言われている
吸血鬼は常に隣に居て
亡骸には二度の死が望まれた
歪められた意識の隙間から
亡霊達は眠りの床に滑り込むのだ
鍵をかけても逃げられないと
述べるのは
家の中に害があるからと
誰も信じたくなかった時代の
おぞましい者達の名残だろう
鴉の影は西に消えて
夕陽は雨雲の向こうへ
緋色の雲は酷く焼け爛れて
残酷なほど美しい旋律が
跳ね回っている




