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天分
日がな一日考え続ける難題がある
二十を超えたら人間は
スタート位置に付くのだと
どれだけ数多の夢を見ようが
二十を超えたら手放せと
それはどうにも今世には
当てはまらない事情なのだが
どいつも天分で食って行こうと
野心を燃やしているとされる
納得ゆかぬご時世だ
時たまに天分で食える人が居る
みんなこぞってそんな夢を
見ていると思っているのかご老人
少年少女は褒めちぎられる
褒めて子供を育てろと
無茶なことを言われる時世だ
そんな風にも天分の亀が
のらりくらりと歩いている
小学校の頃に褒められた
言葉を鵜呑みにしたまんま
消化もできずに早二十
スタートラインも切れぬ子が
そんなわけで天分の亀が
受けたものは幸ではなく
呪いなのだと見知るのだ