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現場
明るい日差しの差す
酷く残忍な朝方です
テーブルには赤が
床には水が
壁には黒が飛び散っていて
たぶん何か起こったと
言う事だけは分かるのですが
午前八時十三分
誰も何もまだ一つも
気づいてはいないのです
事件なのか事故なのか
命の数はどれだ減ったか
そんな事を忙しく
数えに彼等が来るでしょう
もし十五分早かったら
誰かの命の数が
減らなかったかも知れないって
夢を抱くのが好きなのだろう
赤い血を踏むと
黄色く脂が散るそうです
腐食の著しい金属は
緑色に錆びています
月のない夜に
ランタンを燈してる




