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天使の声
凍らないほどの冷たさで
凍らない雨が叩きつけるくらいの
丁度 嫌な天気の日だ
皮膚を腫れあがらせて
熱を奪って行く爆風と
氷雨の下で足を速める
霧に向かって射た弓が
はじける時の音だ
ゆるく弧を描く矢は
太陽に届かない
眠り込んだまま
息をして居たいって
わがままを言う
命が尽きる事を思うのは
まだちょっと早いかな
薄紅色の水晶が
天使の声で囁く
その音は煌々と
耳の奥に火花を
吹き込んでいるみたいだったから
鼓動の音を思い出すには
それでもう充分だろう
知らない空がまだ巡っている




