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暴風と景
暴風時計
荒らかな風が叩いた静寂を
世の更ける日に目が覚めた時
ゆらゆらと押して引くよう波風が
遠退くように近づくように
真白な月に墨色の雲
描いたような朧月夜
海の底には七つの宝があると言う
たくたくと滴る
雨水の内包した
空気の中か大地の底か
分からない場所で
獣は咆える
手を伸ばしたら
掴み取れるか
分からないけど
其処にはいつも
世界がある
荒らかな風が叩いた茫漠を
夜の更ける日に目が覚めた時
サラサラと流れ行くよう時溜まり
早くもありて遅くもありて
星屑さえも爆風の外
棚引く事が風の描き方
だとしたらこの空は
まるで滝壺の渦だ