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園の火花
火花の底で舞う姫君
花を咲かす火炎の園で
舞を舞おうか狂い姫
凪の原で歌う囀り
真雪を踏んでも凍てつかぬ
芽吹き春へ還ろうと
触れることはできないよ
それは見る間に姿を変えて
空の雲ほど奇怪な様子
唯 唯 閃く扇を見つめ
舞を舞おうか狂い姫
真珠の言葉を溢す女神に
歌を捧げる真綿姫
淵の中にも差し込んだ
淡く溶かせば星巡る
なんにもないな
なんにもないな
時は全てを飲み込んで
なんでもないな
なんでもないな
爪の届く間に離れて行くよ
記憶は全部を包みこむ
緑の広がる草原が
空白受けて靡くような
五月の渦に埋もれたら
舞を舞おうか狂い姫