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空を泳ぐ船で
日射しの中を進めたら
空を飛ぶ船を手に入れたと
彼は笑いながら言うんだ
それはもしかしたら
一抹の真実の中から
芽吹いた言葉だったのだろうか
あの時 微笑んで
そうだ 空を飛ぼう
そう言っていたあなたを信じれば
別の世界への扉が
用意されていたのだろうか
私達は涙を忘れて
唯 枯れ果てて行くままに
カラカラの喉を潤すものは
雨だけだと思っていたから
魔法の力を下さいって
女神様にお祈りした事は
あったのだろうか
何度も祈ったことは
命を長引かせ
飢えを渇きを鎮め
柔らかな眠りに就く事ばかり
ああ 馬鹿みたいだ
本当におかしかったのは
彼なのだろうか
彼女なのだろうか
ああ 分かっているんだ
本当におかしかったのは
本当におかしかったのは
あの時に彼を見放した
私なのだと言う事を
この赤い海の行く末で
ぼんやりと思うのだ
そうだ船が出る
風をはらんだ帆を張って
空を滑る船が出る
私は窓の外を見て
既望の夜を越えた
朝を見ていたのだ