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茜色
だから海に行くんだ
何色の世界が見えるの
あなたの瞳の中に
映し出された光は
青いだけなのだろうか
目を閉じているあなたは
眠って居るようだった
辺りを染めるものなど
映さないでいてくれた
余命 未明 不明 意識
途切れた音を聞かないで
別の白い天井を見る事も
無いままであなたは途絶えたと
知らされた時に私は
あなたの形を失って
それに類似している形を
追って 折って 負って
逃げ出すように未来へ
過去を閉ざしてまだ
あなたを知らなかった私に
戻れますようにと
願いをかけていたのかも
知れない 知らない 知れないけど
この海を見ている
波音を聞いて
潮風に遊ぶ
あなたはいつまでも幼子みたい
いつか思い出せなくなるまで
埋もれてしまっても
あなたはこの景色を
忘れていないのでしょう
紅葉の色は赤いから
涙が出てしまいそうだけど
その瞳を染める事の
無い色だと信じている
柔らかな両腕が
透明な温かさで
私を そして私達を
そっと包んでいる
何処にもない楽園は
目の前にあるものだと
教えるように




