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透明
忘れそうになったら吹いてよ
カーテンがそよいだ
暁はまだ寒い
風が吹き抜ける時の音を
口笛で奏でている
涼やかな旋律を繰り返し
東の空が蒼くなる頃
海のほうに歩く
両腕を伸ばして
髪の毛を揺らして
黒いコートを揺らして
その背中に一対の
皮膜の羽らしきものを
見ても観ないふりを
僕達は続けてるんだ
潮風の向こうに
高層ビルを観て
中々の景観だって
楽しそうに笑むんだ
死んでしまう時が来たら
僕達はその時を約束するだろう
握手を交わす事もない
ただ僕は彼の
透き通るような口笛を
知ってるだけの
皮膜の羽を持った子供だ
朝陽が空を包んで行く
何も迷うことは無い
終わりまで歩こう