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盲目淑女
見繕った布切れを
綺麗に縫い合わせてあります
不思議と前衛的と言う
豪華なドレスが出来ました
女王様はそれを着て
公衆の前でポーズを取ります
光り輝くフラッシュが
何遍何遍と焚かれています
女王様は目を焼かれて
やがて盲目に成りました
自分が最も美しいかった
頃のままで保存されていると
すっかり信じ切っている
女王様は肌にクリームを
塗る事だって忘れちゃった
それから十の年月流れ
女王様は今でも
自分は世界で最高峰に
美しいのだと信じています
髪は白くなって
皮膚は皴皴に成って
声はガサガサに成りましたが
牛の乳のクリームを塗ったり
蜂蜜を舐めたりと言う
世の女のする美容法は
邪悪だとさえ思って居ます
その代わり
自分より美しい娘が生まれたら
殺してしまう事も
法律に含めておりました
なので
女王様は彼女の国で
最高峰に美しいのです
お目目はさっぱり見えませんが




