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詩文彩文  作者: 夜霧ランプ
112/120

棒切れの跡

 白い地面に 何やら点々と 点々が落ちています

 これは何だろうと 後を追いかけて行くと

 どうやら 小さな洞窟に入って 行っているようでした


 明かりを用意して 気を付けて洞窟の中を進んで行くと

 そこに両後足が木の棒で出来ている チョッキを着た猫が居ました

 チョッキを着た猫は 僕の方をまじまじと見て

 「おやまぁ 変わったお客人」と言いました


 ショウガを利かせたお茶を 一服出してもらい

 僕は猫用の小さな椅子の上に 身を小さくして座りました

 洞窟の入り口を背にしている 僕の後ろから

 「やぁ 雪もすっかり治まった」と言って 誰かが入って来ました

 それは 片前足が棒切れで出来ている どうやら狼の子供の様でした

 その後からも

 紙袋を持って帰ってくる 片後足が棒切れの狐の子供や

 どうやら枯れ枝を拾って来たらしい 片後足が棒切れの熊の子がいました

 そして僕をじっくりと見て

 「これは変わったお客人」と言いました


 猫や狼や狐や熊の話を聞くに

 体の何処かが棒切れで出来ていない者は

 この洞窟を見つけられないと言います

 僕は自分の体の何処かが 棒切れだっただろうかと

 いっぺん考えてみました

 しかし とんと思いつきません


 「しかし 人間にしては姿勢が良いねぇ」と狐が言いました

 彼が言うには 町にいるどの人間も

 背中を丸めて 手を隠しに押し込んでいて

 人間は鼻を下に向けながら歩いているのが 普通だと思って居たそうです

 「最近では みんな光る板切れを熱心に拝んでいる」

 「あれはきっと新しい神様の姿なんだ」

 「そうすると 人間は新しい神様を見つけたのか」

 「そう言う事だね」

 猫と狼と狐と熊は そのように話しました


 猫が狐の買ってきた材料で

 鶏肉のスゥプなどこしらえて

 四匹の分からすこぅしずつ分けて

 僕の分も用意してくれました

 僕はスプーンでそれをいただいて

 随分お腹が満たされたのです


 ぽわんと体が温かくなり 僕の背中から力が抜けました

 「ああ あなたの棒切れは そんな所にあったのか」と猫が言います

 「よかったね 棒切れではなくなって」と狼が言います

 「だけどね どうにも下ばかり向いて 歩いちゃいけないよ」と狐が言います

 「新しい神様によろしくね」と熊が言います

 そして温かい洞窟は

 ずぅっとずぅっと向こうになりました


 僕が我に返ると そこは何でもない 家の軒先の階段でした

 僕は其処にずっと座って 道行く人を眺めていたようなのです

 ですが

 僕のお腹はだいぶ温かくて うんとのびをすると

 柔らかくなった背筋が 気持ちよく音を鳴らしました

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