第5話 ~それぞれの力~
小説のミニあらすじ的なのを消去しました。
俺は今、有翼人と思われる能力を持った天帝軍の幹部と戦闘していた。ヤツは非常に厄介だった。空を飛んでいるのでこちらの攻撃は当たらないし、向こうの攻撃は追尾する上に加速するのだ。相手が遠距離のアーク使いであるのも、俺が攻めあぐねている要因の一つだ。
だが、種がわかってしまえば問題ない。俺は一つの仮説を立てた。
ヤツのアーク攻撃には、こちらのアークに反応してるのではないか と
もちろんどうやってそんな芸当ができるのかわからない。俺だってついさっきアークの力を理解し始めたばかりなのだ。アークは便利だが、便利すぎるために使い方が無限大にあるのだ。深く考えていてもしょうがない。まずは目先のことを考えよう。結論から言うと、仮説は正しかった。アークを全開にすると敵の攻撃は加速し、放出を止めると格段に減速した、というより元の速度に戻った、というほうが正しいだろう。人には必ずアークが体内にある。それに反応してしまうのは仕方ないのだ。
加速状態でも互角だったのだ。しかし、攻撃加速のアドバンテージがなくなった今、どちらが勝つは明白だった。現に今、相手は焦っているのだから。
俺は減速した雹を全て防いで見せた。それを見て相手は焦り出した。ただ
「チィ……もう気づかれたか。どうしたものか……… 正直、気づかれないと思っていたよ。そこは称賛しようではないか。ついでに名も名乗ってやろう。天帝軍軍曹カルラだ! 貴様にはそこを退いて貰おう! 喰らい尽くせ! 『大食の鳥暴風』!」
焦ってはいるのだが、予想外の行動にでた。自身を巨大な竜巻へと変え、こちらへ突っ込んできたのだ。
これは、不味いな……後ろへ大きな被害が出る。というか本当に軍曹か?あの蜘蛛と比べると明らかに格上なのだが。俺も能力を貰ってなかったらもっと苦戦していたかも知れない。
そんなことよりあの大技、火力の低い3属とはいえ、危険な香りがする。これは"アレ"を使うしかない………か。しかし、あまり公にはしたくない。最小出力で使いたいが………
「その時はその時、だな仕方あるまい」
俺は剣を鞘に納め、一呼吸おいて、今俺が放てる最強のアーク術を打つ。アークには、アークだ。
「『──────』!」
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な、なに!?
私──皇城イア──は、仲間との会議中、少年君を呼ぶのを忘れていたことに気付き、呼びにいこうとしたのだが……少年君はすでに戦闘に入っていた。加勢しようと思ったが、そのとたん、膨大なエネルギーを感じた。敵側の能力者が究極のアーク術を使ったのだ。あれほどのものを使るのはかなりの強者の証。これは、不味いわね。少年君を捕まえて回避? いや、それでは後ろへ被害がでる。最大出力のバリアをはる? いや、あの攻撃は全てを飲み込む。現に周りの怪物も喰らい、威力を増している。どうしよう、早くしないと少年君が────
─────バシィッ!!
な、なに!?
少年君と暴風の鳥がぶつかる瞬間、強烈な光と轟音が生じた。
「おいおいなんだぁありゃ! あんなもの組み込んだ記憶はねぇぞ!?」
彼の能力を作った電音ライトもよくわかっていなさそうだ。ただわかるのは、高密度のアークが衝突していることだけだ。私達に出来ることは見てるだけだった。
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その時はすぐに訪れた。──光と轟音がはじまってから長い時がたっている気がするが、実際は数秒程度だろう──
そこにあったのは巨大なクレーターと、一人の黒き少年のみであった。
────勝った、のか?───
俺は意識が飛びかけていた。主にアークの大量消費によるものだ。いくら無限とはいっても、一気にゴッソリ持っていかれると疲労するのである。さらに、かなりの集中力を要したので、脳が焼ききれそうな位痛い。能力起想の比じゃない。余波で全身も傷ついていた。そんなところにイアがやってきた。忘れられたことは覚えているが、もう突っ込む気力もない。
「少年君! 大丈夫!? って見るからに大丈夫じゃないわね。アンジュさん、お願いします!」
「オッケー、任せときなさい」
ああ、多分医療班の人か? まあ、イアもいることだし、あとは、まかせ、よう。
俺はそこで意識を手放した。
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「ん……」
「少年君、大丈夫?」
俺は真っ白な天井がある部屋で目を覚ました。いや、正確には目の前には覗き込んでいる美しい白銀の髪を持つ女性がいたのだが。
うん、誰?
見たことあるような顔立ちだが、俺の記憶ではこのような人は………まてよ?
「えっ……と、イアさん、ですか?」
「そうだけど?」
何かおかしい? というような顔でこちらを見てくる。今までは髪を結んで帽子をかぶっていたので、下ろすと大分印象が変わる。このヒト、俺より年上のはずなのになぜか妹のように見えてしまう。そんなことは置いといて、だ。
「いえ、何でも。それより外は大丈夫なんですか?」
「その点は心配しなくていいよ、キミ」
イアに質問すると、突然知らない声から返答が聞こえてきた。
「キミとは初めましてだね。私は医療班の最高指揮、濡羽アンジュだ。以後、よろしく」
ああ、ぶっ倒れた俺を運んでくれた人か。というか、この軍の医療技術はすごいな……必要な器具は全て揃っているし、負った傷も全然痛まない。俺が感心していると、きにもせずイアが質問してきた。
「いやー、にしてもびっくりしたわよ少年君。アレほどのアークエネルギーの塊を相殺どころか消滅させちゃうとは。ライトさんの話だとあんなものは能力に組み込んでないって言ってたけど、あれは何なの?」
まあ、やっぱ聞かれるよね。まあ、イアならいいか。アンジュさんもいるけど、それも問題ないだろう、多分。
「あれは俺の能力は直接関係していません。スルトの能力を得たときに発現した力を使いました。それは『無限アーク』 『振動操作』 『核操作』 でした」
「ちょっと待って? 『振動操作』と『核操作』はライトさんから聞いたけど、『無限アーク』ってなに?」
「文字通りですよ。無限にアークが使えます。まあ、正しくはアーク保有量を莫大に増やして、アークが超回復するというものですが」
「ああ、だからキミそんなに回復早いのね。ここに運び込んだときにはアークがほぼ復活してたときはびっくりしたわ」
無限アークの説明でアンジュは俺の驚異的な回復力に納得したようだ。
「その3つを使って作った技があれです。その名も 『高加速圧縮核振動』」
高加速圧縮核振動とは、莫大なアーク量にものをいわせて圧縮し、高密度のアーク核を作る。これは『核操作』の適用範囲。これを利用して、超高速で打ち出し、拡散させる。それと同時にアークを『振動操作』で高速振動させる。それにより生じるエネルギーで大爆発をするというカラクリだ。
この説明をイアとアンジュにもした。
「物騒な技ね…… それに、『無限アーク』は恐らく『個人能力』ね。能力とは別に個人の中に宿っていた力が能力によって解放されるのが個人能力。それしてもチートね、その能力と技。あの火力を打ち放題じゃない」
「さすがに一回のアーク消費量が高すぎて連発は無理です。頑張れば、さらに火力を上げて座標指定も出来ると思うんですけどね。」
───え、まだ火力上がるの?───
それが2人の心の中であろう。
「そういえば、敵軍はどうやって『結界』を破壊したんでしょうかね?」
「それは今調査中ね。結果が解れば対策も出来るんだけど…………」
そんなときに
襲撃、襲撃、襲撃──敵軍は少尉クラスが5名───
これがデジャヴというものか。
「だーーーもう! もういい! 私が天帝軍どもの心をへし折ってくれるわ!」
と言って走って行ってしまった。その姿を見た俺は
「………皇城司令は絶対怒らせたくないです」
「………同感だ」
あいつらーーー!
一度ならず二度も襲撃を仕掛けてくるなんて。これは天誅軍に対する宣戦布告だろう。
お前達の国を本気で滅ぼすぞ
という。
ならば、こちらも応えてやろうじゃないの。まずは、今回襲撃してきたやつらを半壊させる。残りのやつらの心を折って戦意喪失させたあとに追い返す。これでもうここにくる気は起こるまい。
私は髪を結んで、デバイスを抜く。能力を起動させて、準備をする。能力者の、真の力を解放するための。
そして私は単身敵軍に突撃するのだった。
見えた
どうやら先程より数が多い。ざっと30万といったところか。予備軍かとも思ったが違った。こちらが今回の襲撃の本隊だろう。偵察の全滅を受け、本隊がでてきたようだ。
好都合
私は隊列の指揮を取っている指揮官らしいヤツに狙いを定め、発動する。
能力の、限界を超える技
「能力、力を貸して! 『拡張』!」
私の体から溢れでるようなアークと力がみなぎってくるのがわかる。姿にも変化があった。白銀の髪には金のメッシュが入り、服も軍服ではなく、動きやすさ重視の軽いアーマーとマント。デバイスも刀のような見た目から、片刃の剣に変わっている。
久しぶりだな
だが、手加減はしない。私は心を無にして、敵を殲滅するためのスキルを放つ。
「精製門 『悪魔の斬撃雨』」
敵軍の上空に無数の武器が現れた。
第6話へ続く──────────────
あとがき(捕捉)
高加速圧縮核振動についての捕捉。
作中、連発は出来ないと言っておりますが、主人公の頑張り次第で現状でも連発可能です。本人が疲れるのがダルいので嘘言ってるだけです。
主)ここでそれ言うなよ!
筆)だって放置してたらキミ言わないまま普通に連発するじゃん
主)…………