第2話 ~軍入隊~
終焉戦争
それは、この国の命運を決める、2つの軍の戦争。この戦争を終わらせることが出来るのは、たった一人の少年。
ただ、結末を知るものは誰もいない
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「初めまして…………かな?」
そう言って彼女───天誅軍総司令官を名乗る女性───は、にやっと笑い、こちらを振り向いた。
「まったく、総司令官は何故いつもこんな自由なんですか………」
「あら、なんやかんや付き合ってくれるマキにも感謝してるのよ?」
マキと言われた女性は虚空から姿を表した。一瞬驚いたが、軍の関係者ということは、おそらく『能力』持ちであると気付き、慌てることはなかった。現に天馬中将も驚いている様子も無い。(口はぽかーんとしたままだが)瞬間移動系の能力だろうか。
「申し遅れました。私は天誅軍総司令官補佐をしております。黒沢マキと申します。そしてこちらが…………」
「天誅軍総司令官の皇城イアでーす。少年君、よろしくね☆」
なんなのだろう、このテンションの差は………
「あの、僕はどうすれば…………」
すると、さっきまで完全に空気だった(失礼)天馬中将が声をあげた。
「ああ、天馬君はマキと一緒に帰っちゃって。後は私が話進めとくから。てことでマキ、よろしくー」
「わかりましたよ。中将殿、行きますよ。他の皆さんも。」
二人と一般兵達はマキが作ったゲートのようなものに入って行った。あれで総司令官もここへ来たのだろう。二人きりになったところで、俺は話を切り出した。
「……で、どうするんだ。─────。」
「!? …………まあ、そうだね。まずは………久しぶり、─────。」
「さすがに覚えてたか。」
「ちょっと私どんだけアホだと思われてんのよ。」
そんな雑談をしながら、総司令官が話を戻してくれた。
「そんなことより!今日は軍の総司令官として話があるの! …………ここで会ったのも何かの縁。単刀直入に言うわ。少年君」
そして、総司令官は俺に向けてこう言った。
「天誅軍に加盟する気はないかしら?」
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一方、その頃僕、天馬カグラは
「あの、総司令官を一人にして大丈夫なんですか? 僕が言いえる立場じゃないんですけど……少し不安というか……」
「大丈夫ですよ中将殿。確かにあの人は自分勝手で自由奔放ですが、やるときはやる人ですから。」
このヒト、上司のことボロクソに言ってるけど大丈夫かな………
「そ、そうですか。あの、それより僕のこと『中将殿』って呼ぶの止めてくれませんか? 年上の人にそう呼ばれるの、なんか、違和感がすごくて……」
「………」
え、無視?
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「…………何故俺を誘ったのか、聞いてもよろしいですか?」
俺は率直な疑問を口にだしてみた。すると、予想外の回答が帰ってきた。
「……ねえ、少年君は『能力』にも上下関係があるの、知ってる? ウチの軍はね、ほとんどが独自開発の能力──モデル能力っていうんだけど──それを使ってるの。ただ、生まれ持ってる能力──先天能力──より、質がどうしても落ちちゃうのよ。だから、ほとんどが先天能力持ちで構成されている天帝軍を相手にするのはちょっと面倒なの。」
なんと、モデル能力と先天能力には性能の差があるのか。しかしそれが一体勧誘に繋がるのか。
「もちろん軍の技術班も科学班も優秀なんだけど、どうしてもね………。でも、君はどうだい? モデル能力も先天能力も無しで、敵軍曹に勝っちゃうほどの実力がある! ………ってわけで戦力増強に協力して欲しいのよ。もちろん、ずっと能力無しだとキツイだろうからモデル能力もあげるわ。」
成る程、かなり魅力的な就職条件だ。ただし
「俺はイカーサの町長にかなりお世話になりました。義勇軍も、作ったのは町長です。勝手に抜ける訳には──」
「心配する必要はないよ、─────君。私が軍に推薦したのだ。」
「町長…………」
一瞬軍に入るか迷ったが、町長の後押しもあって、俺は軍に入ることを決めた。
「わかりました、総司令官。あなたの提案を受けましょう。」
「ありがとう少年君! あと、私のことはイアでいいよ。そっちのほうがやりやすいでしょ?」
「………じゃあ、せめてイアさんで。」
この人は何考えてんのか本当にわからない。
「あともうひとつ、名前考えときなさいよ。少年君だと、色々大変だから。じゃ、軍本部へいきましょー!」
名前、か。確かに不便だしな。後で考えておこう。軍本部に行くらしい。実物は初めてだから実はちょっと楽しみ────ん?軍本部?
「あの、イアさんイアさん。ここ、ガー湖市なんですけど。軍本部ってトミ市ですよね?90キロ位あるんですけどもしかして………」
「もしかしてしなくても徒歩で行くに決まってるじゃない! 早速いくわよー!」
誰かこのアホ司令官を殴ってやってくれませんかね!? まあ、行くけどさ!?
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「ついたーー!」
「やっとか………」
俺たちは約2時間半かけてようやく本部についた。時間ももう夕暮れだ。すると、ドタドタと足音が聞こえて
「総司令官! 一体どこで何を……って」
音の主と目がパッチリあってしまった。
「あ、どうも…………本日付けで入団することになりました………」
取り敢えず挨拶はしておこう。うん、挨拶ダイジダカラネ
「あなた、司令官に何もしてませんよね?(圧)」
ヤバい、この人ヤバい。めっちゃ笑顔でこっち見てくる。圧がすごい、怖いよこの人。
「マキ、聞いt」
「皇城司令は黙って下さい。」
余計なこと言いそうなイアは黙らせといて、さて、どう切り抜けるか。
「………何もしてませんよ。それより俺はどうすればいいですか?何か必要な手続きとかは?」
「何もしてないならいいです。特に手続きなどは要りません。ただ、あなたには能力を選んでもらいます。こちらへついてきて下さい。」
能力って選べるものなのか。まあ人工能力って言うくらいだしそりゃ選べるか。なるべく自分に合った能力を選びたいものだ。
「こちらです。ここは、モデル能力の保管庫になります。お好きなものをどうぞ。」
この中から選ぶのか。かなりの量があるな。偉人、動物、神々と、あるが、俺が気になっているのが神々のゾーンだ。俺の戦闘スタイルは剣術なので、それにマッチした能力が良い。それだけなら偉人系でも良いのだが………何故か惹かれているような感覚がするのだ。
「少年君は神々系に興味があるのねー。良いじゃない。剣と相性の良い能力がたくさんあるわよ。」
イアの言葉を聞き流しながら、気になったとあるモデルに手を伸ばしてみた。これだけ、少し特殊な保管のされ方をしている。
「………! 待って下さい、それは────」
マキが何かを言いかけた、次の瞬間
「「「!?」」」
俺と、俺が装備していた黒い剣と、俺が手を伸ばしたモデルが突然光りだしたのだ。
第3話へ続く──────────────
あとがき
キャラ雑談(※本編とは関係ありません)
主)今回は戦闘ないんだな
筆)というかあと多分3話分位戦闘ないよ
イ)えーー!少年君の戦闘、生でみたかったのにーー!
マ)駄々こねないでください。……まあ私もちょっとみてみたいですけど
主)どうせどこかで見れるだろ……
イ)そういえば少年君の剣ってなんて呼んでるの?
主)黒いヤツ
イ&マ)え