第10話 ~拡張~
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一方その頃 アカネ視点
「……ネ。お…、ア…ネ!」
ん……誰かに……呼ばれてる? この声は……リュウセイ? あれ、私何してたんだっけ?
「おい、アカネ!しっかりしろ!」
ああ、そうだ。戦ってたんだ。それで、あたしが狙われて……
「おい!アカネ!おきr」
「あーもー! わかったから静かにして!」
うるさいリュウセイを一回黙らせて、自分がどういう状況なのか確認しようとすると、あることに気づいた。
「ってあんた、何その怪我!?」
なんとリュウセイに見たことがない傷ができていた。パット見火傷痕にも見えるが、黒っぽくて……なんかゴツゴツしてる。
「ああ、これか。これは………バーストの後遺症だよ。使いすぎるとこうなるんだ。今回は短かったから軽いな、すぐ治るだろ」
とか言って本人は元気そうだが、あたしをかばった時にできた傷もあるし、本物の火傷もちらほらある。
「って、本物の火傷もしてるじゃない。第1属の攻撃なんて受けてないわよ?」
「あー、これは中…天馬サンを運んでる時にちょっとな。全くレイのやつ、何があったか知らんが、暴れ過ぎなんだよ。危なくてしょうがねえ」
リュウセイが顎でクイッとやった先には確かに何者かが大暴れしている。紅い炎と碧い氷が交わるその光景はまるで………
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「くはっ………」
「はははははっ、まだまだぁっ!」
おかしい、何故こやつ、まだ動けるのだ!? もう既に20は凍結させたぞ!?
私─モーノリア─は『とある方』に命じられ、マシクフ島の監視を行っていた。『とある方』によれば、天誅軍の一部が、もうしばらくすればマシクフ島へ来るという。そして、もしきたのならば『殺せ』とも命じられている。
最初は所詮、スキルを上手く使えない虫けらどもだと思っていたが、数キロ離れても正確に矢を当てる少女に、50年生きた私ですら知らない属性を操る少年、挙げ句の果てには殺す気で放ったアーク弾をバーストありきとはいえ蹴りとばす少年まで現れた。皆あまり対スキル持ちの戦闘に慣れていないのか、意外とあっさり倒すことができた。平然を装って強者感を頑張って出していたが、内心、かなり怖かった。
だが、本当に問題なのが目の前で業炎を撒き散らしている黒い少年だ。ある時を境にタガが外れたように暴れ出した。私はつい反射でバーストを使ってしまったが、結果的にはよかったのかもしれない。なんせ、この黒い少年はバースト状態の私と同格、もしくは格上なのだから。
私のスキルは『スリュムモデル』 霜の巨人族の王と言われ、バーストは特有の『霜の王』 第2変属においては最強の一角と言われている。その氷はありとあらゆるものを凍結させ、マグマをも瞬き一つの間で凍らせることができる。その氷で黒い少年を何度も何度も凍結させているのに、その纏う業炎と恐ろしいほどのパワーで氷を粉砕し、いとも簡単に脱出してくる。傷は負っているようで体のあちこちから血がこぼれているが、動きが鈍るどころか傷を負うごとに加速しているようだ。はじめの頃は圧倒できていても、今となってはほぼ五分だ。
黒い少年は暴走状態に近いようだが、荒いながらも流麗な剣技と正確な太刀筋が彼の強さを示している。私も同じように氷を纏わせた剣で応戦するが、かなわない。少し7大流派をかじっただけとはいえ、自身の剣技には自身があったんだがな……… さらに驚かされたのが戦闘中に割り込んできた謎のドラゴンを
「ああ? 邪魔だ!」
と言って炎の斬擊波を飛ばし、一撃で沈めたのだ。通常ドラゴンは野生でも誰かのスキルでも苦戦するものなのだが………
どうする? 逃げるか? いや今背中を見せれば───死ぬ。
ならば、と私は奥の手を使う覚悟をする。ええい、もうどうなってもしらん。
そうして私は唱える。バースト状態における、最大最高の技を。
「我が心に眠る霜の大巨人よ! 今ここに我が身を依代とし、その圧倒的な力で蹂躙せよ!
『覚醒』!」
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俺ことレイは現在、天帝軍大尉モーノリアとの戦闘中に心の奥から湧き上がる感情といきなり熱くなった"黒いヤツ"に任せ、ほとんどドーピングに近い状態で戦っていたのだが………
くっそ、流石にバーストには勝てないか……氷はなんとかできても、こちらから仕掛けるのが難しい。そもそも遠距離に対して近づくのが難し────
「ギャオオ!」
「邪魔だ!」
野生なのかわからないがドラゴンが乱入してきた。邪魔なのでつい癖でバスターを…… あ、遠距離手段あるじゃん。どうもだめだな。この状態になってから頭がうまくまわってない。
「…………」
じゃあバスターで応戦するかと思っていた矢先、モーノリアがなにかブツブツ呟いている。あ、あれやばいやつだ。でも止める時間がない。
「………蹂躙せよ! 『覚醒』!」
そう叫んだ瞬間、モーノリアの体が氷に包まれ、辺り一面が吹雪に覆われた。俺は常に炎をまとっているようなものなのでそこまで寒くないが視界が制限されるのは厄介だな。だが、吹雪だけで終わりではなかった。
「………まじかよ」
ヌウっとでてきた影の正体は、30m程もある巨人だった。これは、スリュムか? なら氷の説明がつくのだが。
「……愚かな人間どもよ。我の前から早々と立ち去れば命だけは助けてやろう」
「じゃ、NOだ」
「……よかろう。ならば、死ぬがよい!」
そうモーノリア? スリュム? が叫ぶと、これまた巨大な氷の戦斧を生成し、こちらへ振り下ろしてきた。流石に受け止めるのは無理───
………をしなさい
また、あの声だ。聞き覚えがあるのだが、思い出せない。
………をしなさい
それは無理だ。俺はそれを使えない。そもそもどういうものなのかもわからないんだ。
唱えるだけでいい。お願い、『────』
ああ、そうか、思い出した。この人は、俺の、大切な───
私に……力を貸して……!
───俺にとって、たった2人だけの
「………拡張!」
家族だ
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バーストを唱えた瞬間、"黒いヤツ"が今まで以上に高熱を帯び、業炎を発する。そこには"黒いヤツ"の影はなく、その姿を炎の大剣へと変えていた。それと同時に負の感情がふつふつと沸き上がって来るが、不思議と感情に支配される気配はない。まるで何者かに包みこまれるような暖かさ。
しかし、肉体はそうもいかず、大剣の炎で焼かれている。俺はそんなことを気にせず、今目の前に迫っている自分の数十倍はありそうな氷の戦斧を、空いている左手でガシッと掴む。
「なに!?」
「ふん」
そしてそのままグッと力を入れ、粉々に粉砕する。俺は反撃をするためにトンと地面を蹴り、スリュムとなったモーノリアの顔まで上昇した。負けじとモーノリアも巨大な氷の礫をとばしてくるが
「『業火の風渦』!」
回転斬りの要領で全て破壊する。そして回転の勢いそのままに、炎の大剣をモーノリアの胸、というより心臓部分に投擲、目論見通り炎の大剣が深々とその巨体に刺さる。
「ぐぼあっ!」
「これで終いだ! 『業火の壊波』!」
モーノリアに刺さった炎の大剣から、凄まじい衝撃波が発生し、スリュムの体を爆発四散させた。モーノリア本人はどうやらスリュムの体内に隠れていたようで、こちらも先程の衝撃波でやられたようだ。俺はそれを確認したあと、暑かった体温が徐々に下がっていくのと、元の"黒いヤツ"に戻っていくのを見て意識を手放した。
─ありがとう『───』、いや、レイ─
第11話へ続く──────────────
あとがき キャラ雑談
?)これからもレイをよろしくお願いね………
イ)あれ、今の声どこから………
そして聞いたことある気が………気のせいかな?