第12話 姉と、弟と、 その1
夏休みを間近に控えた土曜日、ラストオーダー直前に来客一人。
何回か来ている、生徒会役員の男子だった。
「いらっしゃいませ、どうぞ。もうすぐラストオーダーなのでお早めにお願い?」
「あの!…」
全部言う前に、何かを訴える様に、店内に入ってきた。
訳ありかな?と思って、
「あ〜、良かったら、今日はモーニングだけだから、10時過ぎで良ければ話聞くよ?」
少し、躊躇った感じだったが、促されるまま素直に席に着いた。
「朝御飯は食べた?」
「あ、はい!」
「じゃ、これは奢りね!」
コーヒーを、いつものカップではなくマグカップで出して、反応を伺う。
「ありがとうございます。」
小さな声で返事があったが、悪い反応では無かったので、一旦忘れることにして閉店準備に入った。
最後の客が出ていき、カーテンを閉めドアにCLOSEの札を掛ける。
彼のマグカップに追加のコーヒーを注ぎ、自分のマグカップを手に対面の席に座った。
「どうしたの?悩み事?」
少し、躊躇った感じの彼の返事を待つ。
「いえ、実は、…」
少し間を置いて、決心したような感じで、
「姉の事で、お聞きしたくて……」
「姉?君のお姉さん?」
一瞬、誰?と思ったが、顔に出ていたのか、慌てた彼が、
「あ、生徒会長の!」
何事が起こったのかと、何を聞きたいのかと、思った。