心の休まるぼっちプチ旅行
導入 1駅目 寝過ごさず
雪のせいか寝ぼけてたのか、
ふと目を覚ましたときに見た車窓が見覚えのないもののように感じた。
平日昼の車内はがらんとしていて、
乗客もほとんどが活力のない様子だった。
こんな日、こんな時間に下り電車に乗っているのだ、
無職や既に還暦は超えているであろう爺さん、
目的もなく時間を持て余している人が多いんだろう。
かくいう私も日夜帰宅部活動に性を出している華の女子高生なんだけども。
やりたい部活もなく、学校も好きじゃない。
放課後に図書館で友達とお勉強…なんてそんなことができる優等生でもない。
…別に友達がいないわけではないんだけどね。
そんな言い訳ももう何回しただろう。
とにかく、私にとって放課後は、早く帰るに越したことがないものだった。
しばらくそんな誰に向けているのかも分からない独白に耽っていると少し目が覚めてきた。
静かで穏やかな車内。
吹き入る冬の冷たい空気。
だんだんと戻ってくる私の意識にとってはそこそこ趣深く…って…え?
継ぎ目を踏む車輪の音も揺れもなく車窓も動かない…
「………まもなく〜発車いたします」
え
慌ててドアの方を見る。
「寝過ごした……!?」
脳裏に浮かんだそんな予感に冷や汗が垂れる。
授業で指名される直前に目が覚めたり、
期限前日深夜にレポートの記憶を呼び起こしたりと、
妙な信頼は置ける私の第六感。
従うが吉…!
そう思い私は慌てて閉まり始めたドアに駆け出した。
幸い閑散とした車内だ。
障害物はない。
勢いに任せて飛び出す…っ
……
鞄を勢いよく手すりにぶつけて少し恥ずかしかった。
閉まったドアの向こうで中年男性が新聞の上から怪訝な視線をぶつけてきたのが若干嫌だったけど…
電車すぐに発車していったので気にしないことにした。
…そんなだから無職なんだよおっさん。
いや忘れよう。
この調子だと私も将来そうなりかねないな。
気持ちを切り替えて視線を周囲へ向けてみる。
コンクリートと鉄骨が目立つ見慣れないホーム、
奥に広がるのは人気もあまりない寂れた街並み。
降りた人も私以外にいなかったようで中々に殺風景だ。
ここがどこかは分かりはしないが、利用したこともない駅なのは確かだった。
慌てなかったといえば嘘になるが、
まぁ多少帰宅が遅れたところで別に困ることもないだろうとある程度平静ではいられた。
丁度16時を回った頃だ。
まだ日は落ちきってはいないし、
家に急いで帰らなければならない理由もない。
帰宅部はこういったところで心に余裕が生まれるから好き。
さて、一旦落ち着こう。状況の整理だ。
私は下車すべき駅を寝過した。
幸いホームから出なければ切符の追加購入もいらないはずなので金銭的な問題も発生しないと思う。
そもそも財布に多少余裕もあるので心配はいらない。
解決策は…ここで次の上り電車を待つだけだ。
幸い現代っ子の私達の手にはスマホという最強の暇つぶしアイテムもある。
データ通信量の消費は…まぁあと一週間で来月分だし気にする必要もない。
取り敢えず次の電車の時刻を調べよう。
田舎で本数が少ないとはいえ、下り列車を下車したのだからそう時間がかかることもないだろう。
ここはどこなんだろうか。
県境を跨ぐほど寝過ごしていないことを祈りながら、
ホームを歩いて立て看板のところまで行く。
駅名は…
【暮井沢】
「あれ…」
電波が不安定で下校時には退屈にしていた車内。
聞き覚えぐらいはあった。
普段はただの通過駅だった訳だし、
降りたこともなかったものだからしばらくは、
てっきり寝落ちして乗り過ごしたんだと思っていたが…
…どうやら私は寝過ごしてなんかいなかったらしい。
寝ぼけて二駅前で下車した間抜けは思わず硬直した。
一旦息を吸って、吐く。落ち着いたな私。
次の電車を調べるだけだ。
もう一回肺の空気を入れ替えて…
そしてスマホを開く…
「シャットダウンしています」
私は めのまえが まっくらに なった
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………
…
「…どうかされましたか?」
私に声をかけてくれた駅員さんはとても気まずそうな顔をしていた。てか引いてた。
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普通に初投稿です。
導入以降の文章は完成していないのであまり期待しないで下さい。