07 B
今回は、Bが2話続けての投稿になります。
ドラゴンと喋れたので、自己紹介をしてみました!
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「…あの、僕は人間なんですけど、、、ソウマって言います。ソウマ・クラレットです!」
僕は、この世界の事を知らなければいけない。いや、知りたい!
だから、まずは、僕の事を知ってもらいたい!異世界コミュニケーション?異種族コミュニケーション??どんとこい!
この世界で、いいドラゴンさんと最初に出会えたのは、奇跡だと思う!もしかしたら、これも神様からの加護なのかもしれない!いつか、いつか神様に伝えることができるなら、ちゃんと感謝を伝えたいな。
『ソウマ?人間、名前、ソウマ?理解。俺、レンダント。レンダント、名前。ヴェスト、産まれた場所。レンダント・ヴェスト。ソウマ、人間の名前、初めて。感謝。』
「…レンダントさん?」
『レンダント。久しぶりに呼ばれた。』
ドラゴンの表情は、わからないけど、なんとなく嬉しそう。
「あの!レンダントさん!僕、この世界に来たばかりで、何も、本当に何もわからないんです!だから、この世界の事を僕に教えてください!!、、ぁ、、、僕から上げられる物は何もないんですけど、、代わりに、、、」
せっかくレンダントさんと知り合えたのだから、いろんなことを知りたい。ここがどんな世界なのか?この建物は、なんなのか?地上はどうなっているのか?知りたい事はたくさんある。だけど、僕からレンダントさんに上げられるものが、何もない。あぁ、せめてカプチキがあれば、、、
『代償不要。ソウマ、出会い。感謝。教える。楽しい。』
「え?いやっ!そんな!申し訳ないです!何か、、何か僕から、」
『ソウマ。教える。異世界。ソウマの世界。知りたい。レンダント、レンダントの世界、教える。ソウマ、ソウマの世界、教える。二人、嬉しい。違う?』
「そんなことで、いいんですか?僕の世界の事なんかで??」
『?ソウマ、レンダントの世界、知りたい。レンダント、ソウマの世界、知りたい。同じ。ドラゴン、誇り高き種族。知識、大切。最上。』
最上。つまり、ドラゴンにとって、知識は何よりも尊ばれるモノってこと??そして、異世界の話に興味がある?
そんなことを考えていると、屋根の上に蹲って首から頭だけでこちらを向いていたレンダントさんが、一度戻っていって、立ち上がり、翼を目一杯拡げた。。。グゥーーーンと伸びをしているのかな??そういえば、さっきまで寝ていたみたいだし、身体が凝ったのかもしれない。それにしても、やっぱりデカイ。改めて見ると、すごく大きい。どれくらい大きいのだろう?バスケットコートくらいはありそうだけど、、いや、もっと大きそうだな。
『ソウマ。お腹減った?』
顔だけ、こちらに向けてレンダントさんが言った。
「え?」
突然の問いかけに、驚いた。そういえば、ずっと何も食べていないな。ドラゴンて、何を食べるんだろう?僕も食べられるものがあるんだろうか、、いや、ここは覚悟を決めて!何でも食べないと!うーん、でも、レンダントさんの食事を分けてもらうのも、気が引けるけど、、
『レンダント、ソウマの食べる物。採ってくる。この先進む。広間ある。ソウマ、そこで待つ。』
そう言うと、レンダントさんはとてとて歩いたかと思うと、塔の屋根から飛び降りた!急いで、そちら側の手摺まで行くと、ちょうど雲に潜っていく尻尾が見えた。
「行っちゃった、、、」
ーーー
レンダントさんが、何か食べる物を採りに行ってくれた。何がくるのか、、正直不安ではある。でも、広間で待っていてと言われたので、行くしかない。
それにしても、この建物は、どんだけデカイんだ??最初にいた円形の間があった塔から、ここまででもかなり距離がある。そして、さっきまでレンダントさんが寝ていた塔がある。これも、学校の体育館くらいはありそうだ。そこを抜けると、また空中廊下がある。そして、お城みたいな大きな建物に繋がっている。あの中に、広間があるのだろう。
さっきみたいな風が吹くと恐いので、慎重に、しかし速足で進んでいく。
特に何事もなく、建物の入り口まで来れた。
しかし、空中廊下や塔もそうだったけれど、どこも劣化というか、風化していると言えばいいのか、古びているし、所々崩れたりしているのだ。まさに、古代遺跡みたいな感じなのだろうか?あぁ、こんなことになるなら、もっとアニメとかマンガで、知識を得ておくんだった!!、、、いやいや、そもそも、異世界に来ちゃうなんて、完全に予想外だしな、、
建物の入り口は、たぶん元々は扉があったのだと思うけれど、完全に誰でもウェルカムな状態になっている。扉の向こうは、少し先までは陽が差し込んでいるけれど、その先は暗闇だ。全く向こうが見透せない。不気味だ。
ぁぁぁぁあ!もう!レンダントさんを信じるしかない!!自棄糞だ!!
恐いけれど、速足に進んで行く。所々、何か落ちているようで、躓きそうになりながらも、壁伝いに歩いていく。途中、左右に通路や部屋のようなものがあったけれど、レンダントさんの言う広間は、真っ直ぐ進んだ先にあると思うので、真っ直ぐ進んだ。しばらく進むと、少し明るい場所が見えてきた。
そこは、確かに広間だった。ただし、半壊しているけれど。
僕から見て、奥側の天井が半分以上なくなっていて、剥き出しになっているのだ。
建物の角部屋みたい。とても広い部屋で、レンダントさんがもし座ったとしても、まだ余裕があるんじゃないかな?こちら側は、屋根もあるし、瓦礫が散らばっているから、探せば座るのにちょうど良い物があるかもしれない。かなり歩いてきたので、思ったより疲れているのかもしれない。
とりあえず、部屋の探索をしながら、レンダントさんを待とう。
ーーー
暖かい風を感じた。無の世界から、意識が引き戻されていく。
少し微睡んだけれど、一瞬で目が覚める。眠ってしまっていたようだ。そして、そこにレンダントさんがいた。レンダントさんの鼻息で起きたようだ。
それにしても、レンダントさんの鼻息は、暖かい。生温いとかではなくて、暖かいのだ。もしかしたら、タイトルは忘れたけれど、洋画で観たように、ドラゴンは炎を吐けるのかもしれない。
『起こしてしまったか。謝罪。』
「いえ、大丈夫ですよ!いつの間にか寝ちゃってたみたいです。」
少し戻って、他の通路や部屋を観て回ったあと、ここに戻ってきて、寝てしまったようだ。他の部屋にも、何もなかった。正確に言うなら、机なんかの残骸はあったけれど、どれも風化していて、使えそうなものは何も見つけられなかった。
『食べ物持ってきた。火も炊く。』
そう言うと、レンダントさんは、大きな葉っぱの包みをこちらに押し出してくる。大きなバナナの葉っぱ?みたいなのを数枚使って、何かを包んでいるみたいだ。
そして、少し離れた部屋の片隅にいつの間にか木材が重ねてあった。
そして、火炎放射した。
大切なことは、二度言おう。火炎放射した。
もちろん、僕に向かってではない。部屋の片隅に重ねてあった木材に向かって、火がつくまで炎を噴き出したのだ。
もちろん。人生で初めて見た。火炎放射。
綺麗だった。
もし、この身体にくらったらと思うと、それは恐い。けれど、横から見ていると、とても神秘的で綺麗だと思ってしまった。大火力というわけじゃない。むしろ、置いてある木材周辺にだけ炎をコントロールしているように見える。恐ろしくも、芸術的な炎だ、、ぁぁぁ!語彙が乏しいのが、悔しい!
そして、そこで初めて気づいた、レンダントさんは濡れている。水が滴っていて、小さな水溜まりができていた。
「レンダントさん、濡れてますね!雨だったんですか?」
『嵐。この一帯。雲の下、嵐。ソウマ、ここにいた方がいい。』
なんと!嵐の中を、木材や食料調達してきてくれたのか!
ホントに、いいドラゴンさんだ!感謝しなくちゃ!でも、その前に、「風邪とかひかないですか?寒くないですか?」レンダントさんが濡れているのを、なんとかした方がいい。
『気遣い、感謝。安心。風邪?初耳?ドラゴン、風邪ならない。寒くない。蒸発。』
なるほど。レンダントさん自体が暖かいから、水が蒸発するのかもしれない。それにしても、熱い。レンダントさんがつけた火が、キャンプファイヤーみたいに燃え上がっている。火事の心配は、ないんだろうか?と見回すけれど、石造りで火事は起こらなそうだ。
『ドラゴンの炎、魔法の炎。簡単には消えない。』
レンダントさんが、なんだか誇らしげに炎の説明をしてくれる。つまり、あのキャンプファイヤーは、魔法の性質を帯びた炎で、レンダントさんのコントロール下にあるってことだろうか?すごいな!というか、魔法!?などと考えていたら、キャンプファイヤーが程よい大きさになっていった。さっきまでは、熱かったけれど、今は暖かいと感じられる。レンダントさん、すごい!!
『食事。包み、解いて。ソウマ、食べる。』
「レンダントさん、ありがとうございます!包み、開けますね!」
疑問はあるけれど、奨められるままに、まずは食事をしよう!お腹空いたし!
この包み、バナナの葉っぱみたいなのが、数枚組み合わせてあって、しっかりと包まれている。かなり大きい。ドラゴンは、意外と器用なのかもしれない。
上手に包みをほどいていくと、いい匂いが漂ってくる。甘い匂いだ。フルーツが入っているのかもしれない。
包みを解ききると、葉っぱが広がって、たくさんの果物らしきものやココナッツの実みたいなものが姿を現した。包みいっぱいに入っていたみたいだ。
「うわぁぁぁ!すごい!レンダントさん、すごいいっぱい!ありがとうございます!」嬉しくて、はしゃいでしまう。
「レンダントさんは、どれから食べますか?」
まずは、やはり採ってきてくださったレンダントさんから、お福分けすべきだろう。
『レンダント、食べてきた。魔獣。それ、ソウマ食べる。コブレミの実、水分摂れる。』
レンダントさんは、そういってココナッツの実みたいなもの指差した。おぉ、レンダントさんの爪、すごい尖ってるよ。てか、魔獣って言った?
「そう、ですか。では、ありがたくいただきますね。。じゃあ、これを。。。うぅーん、これ硬いですね、、」
話し合うのは、後でゆっくりできるので、とりあえず疑問は全て棚上げすることにした。まず、コブレミの実を手にとって、捻ってみたりしたけど、びくともしない。
『コブレミ、ここに置いて。』
レンダントさんが言うままにコブレミを持っていくと、爪で実を軽くなぞったように見えた。
『切れ目いれた。溢れないよう、注意』
注意深く、コブレミを持ってみると、確かに切れ目が入っていて、軽く捻れば、割れそうだ。
座って、パカッと開いてみる。少し溢れたけど、肉厚の実の中に、しっかりと水が入っている。これは、果汁というべきなのだろうか?
目線で、飲んでいいか伺うと、レンダントさんが頷いてくれたように見えた。
「じゃあ、いただきます!」
ごくごくごくごく。
コブレミ半分のお汁を一気に喉へ流し込む。
「………ぅまい。これ、すごい美味しいです!レンダントさん!」
お汁を飲むまで忘れてたけど、喉がカラカラだったらしい。乾いた身体に、うま味が浸透していく。ほぁっーと、その余韻に浸ってしまう。コブレミのお汁は、ほのかな甘味があって、美味しい乳酸菌飲料って感じかな。
もう半分も一気に飲みたいけど、そんなに大量に水分を摂ると、身体が驚くかもしれないので、また後で飲むことにする。今度は、ゆっくりちびちび飲もうと思う。
『美味しい、良かった。ソウマ。嬉しい。レンダントも、嬉しい。』
声が、本当に嬉しそうだ。
そして、そう言ってから、レンダントさんは、ゆっくり蹲り、頭だけこちらに向けた。
「はい!ホントに美味しいです!」
なんだか、僕も嬉しくなってくる。
レンダントさんは、本当にいいドラゴンさんだ♪