27 B
【お詫び】
先日から、コロナが発症してしまい、高熱が続いております。
解熱剤等は、処方していただいておりますが、なかなか熱が下がらず、作業ができる状態にありません。
やっと再開した矢先に、また中断で、誠に申し訳ないです。
回復するまで、療養に集中したいと思います。
続きは必ず書きますので、今しばらくお待ちください。
【追記】
6月19日から再開いたします。
追記
気づいたら、いつの間にか1000PV達成してました!
ありがとうございます(@ ̄□ ̄@;)!!
これが初めて書く作品で、完全に手探りで、ストーリーの進め具合と設定の組み込み具合とか、そのバランスに悩んだり、登場人物達の感情の表し方等、日々書きながら、カティナちゃんばりに壁にぶつかっておりますが、一つ一つが勉強になってます。
上手く書けなくて、遅くなることもありますが、必ず最後まで書くと決めておりますので、しばしお付き合いいただければ、幸いです。
今後とも宜しくお願いいたします。
それでは、本編をどうぞ!
特別授業がんばるぞーo(^o^)o
ーーーーーー
僕たちに声をかけてから、動き出そうとするサリュンさんの前に、カティナさんが一歩進み出て、緊張した面持ちで。
「あの、サリュンさん。ありがとうございます。こんな機会を作っていただいて。ご迷惑をおかけするかもしれないのに、、、アドバイスをいただけるだけでもいいんです!私、もっと強くなりたいんです。」
サリュンさんに頭をさげて、感謝の言葉を伝えるその横顔は、少し不安そうに見えます。だけど、その気持ちの強さが伝わってくるようです。
「カティナちゃん。まず、最初に確認しておくけど、私は基本的にクラスランジ流の人間よ。カティナちゃんは、恐らくロレイア流、で合ってる?」
サリュンさんが、看護師さんの姿ではなく、チュニックにズボンという姿に、剣を持っているからか、もう本物の剣士さんみたいで、なんだか緊張感もすごいです。
「はい。ロレイア流ウェッジ先生の下で鍛練しています。」
「そう。流派のタブーは、わかってるのよね?」
「師範代もしくは黒組紐以下は、他流派に技を習ってはいけない。と聞いています。」
「カティナちゃんの段位は、今どれくらいなのかしら?」
「赤組紐、ロレイア式三色です。」
「なるほどね。ソウマ君」
「はい!?」
いきなり、話を振られて、思わず声が裏返りそうになりました!いや、なんか二人の緊張感がすごくて!
「そんなにはっきりと、頭に???が浮かんでる人、初めて見たわ。ふふっ。ソウマ君にも関係ない話じゃないから、ちょっと解説するとね」
「あ、はい!ぜひお願いします!あの、タブーは、なんとなく先ほどの話でわかったんですけど、、黒組紐?とか、よくわからない言葉が多くて、、助かります!」
「ロレイア式三色は、後でカティナちゃんに説明してもらうとして、簡単に段位の話をすると。私を例にするなら、段位がクラスランジ流黒組紐、伝位が免許皆伝ということになるわね。組紐っていうのは、これね。」
そう言って、サリュンさんは手首につけていたミサンガみたいなものを見せてくれました。綺麗な色の糸が黒を基調にして、金色と銀色の糸で組み上げてあります。とっても素敵なアクセサリーです!
「組紐は、こうやってミサンガにしてもいいし、装備につけてもいいし、付け方は自由なんだけど、その人の段位を示すものだから、訓練の時には付けておく必要があるの。で、なんで組紐があるかというと、、」
「あるかというと?」
「流派が多く誕生しすぎて、もう強さの基準がわっかんない!ってなった先達が、とりあえず、白が一番弱くて、黒が一番強い!以上!って感じで、力業で全流派にシステムを組み込むことにしたのよ。まぁ、無理な話だったはずよ。流派の在り方は千差万別だし。強さなんて、その時々、シチュエーションやコンディションでも変わってくるのに、全流派を同じシステムで計れるわけがないもの。」
「な、なるほど」
なんか前も同じこと言った気がするけど、わかったような、わからないような、なるほどできてないけど、とりあえず、なるほど!
「ただ、当時の中央評議会とギルドは、依頼や仕事の仕分けをするために、共通の物差しが必要だったらしいの。だから、全国にちらばっていた全流派が、揉めに揉めて、最終的に組紐式を採用したって話なのよ。でも、その結果、流派によって微妙に段位の数が違うっていう、ちんぷんかんぷんなことになってしまってるんだけどね。ちなみに、どれくらい違うかと言うと、最少七段で、最多で十二段よ。」
「そんなに違うんですか!?よけいにわからなくなってないですか??」
「まあねぇ。でも、どーしても、流派の中で、哲学的実力的技術的に体系化すると、段位が七じゃ足りないってとこがあったりしたみたいで、数に違いが出たらしいわ。ただ、基本的に、白から黒へというのはどこも同じで、白・黄色・オレンジ・赤・青・紫・黒の順で決まっているから、あとは、その組紐の組み合わせで段位を増やしているの。例えば、クラスランジ流なら、全10段のうち、白1色が入門。次に白と黄色の組み合わせになって、その次は黄色とオレンジの組み合わせって感じで、段位が上がっていくわね。組み合わせはそれぞれだけど、配色は同じ流れだから、ギルドとしては問題ないらしいわ。」
「なるほど、、黒が一番強い。そして、サリュンさんは黒組紐、すごいです!」
「ふふんっ!ドヤッ!ってね。ふふふ」
「あれ?うーん、でも、サリュンさんの組紐は、黒が基調になってますけど、金と銀も入ってますよね??」
「おっ!そうなのよ!ソウマ君、そこで、思い出してみて。私は、さっき段位の後、なんて言ってたか?」
「段位の後、、えと、クラスランジ流黒組紐、、伝位が免許皆伝です!そっか、段位と別に伝位が別にあるんですね!?、、って、どういうことですか??」
「そう!クラスランジ流には、段位と別に伝位があるのよ。白が入門だとしたら、黒が師範代ね。」
「黒で、師範代?ん??えと、でも、たぶんですけど、師範代の上には師範がいますよね?もしかしたら、その上にも位があって、、サリュンさんの免許皆伝は、もっと上??あれ、でも、黒が一番強いんですよね??」
「そー!そこがやっかいな話なのよ。でも、全部話すと長くなっちゃうから、端的に説明すると。流派にもよるんだけど、師範代より上って、師範だったり、師聖、免許皆伝、宗家とかがあるんだけど、絶対数が少ないの。簡単にはなれないからね。とすると、黒組紐が受けるべき仕事を受けられる人が少ないってことになるでしょ?それは、ギルドが困るってことで、長い年月でいろんな変遷があったみたいだけど、多くの流派が、今では師範代から黒組紐をつけることになっているの。師範代って、師範に代わって人に教えることができるレベルの人だから、十分に強いってことでね。それだけ、裾野が拡がったってことでもあるんだけど。」
「なるほど、、えーと、じゃあ、黒組紐の意味が一番強いから、一人前に変わったって考えで合ってますか??うーん、いや、ちょっと違うのかなぁ、、」
「いえ、だいたいそれで合ってるわよ。そして、うちでは師範代で黒組紐をもらえるんだけど、更に師範や免許皆伝にも色をつけることで、わかりやすくしているの。で、私は免許皆伝だから、黒に金銀を絡めた組紐になっているの。ちなみに、クラスランジ流の最高位は、宗家の黒金銀朱の四色だったりするわね。」
「宗家なんて、なんだかすごい世界ですね。。サリュンさんは、免許皆伝で黒に金銀。ということは、カティナさんの赤組紐、ロレイア式三色も、段位と伝位ってことですか?」
「そう。これが、私の組紐。」
そう言って、カティナさんがズボンの右腰側のベルトにつけているウォレットロープのような組紐を持ち上げて見せてくれます。
サリュンさんのミサンガみたいな組紐とは、編みかたも糸の質感も違って、赤ベースの平らな組紐に三色の模様が入ってますね。きれいな浅い緑に、茶色と白の三色が、それぞれ柄というか、模様になって順々に織り込まれています。
「ロレイア式は、段位は全部で七段。そして、白組紐以外には、最大で五色の模様が入るの。それぞれに、体術・武器術・暗器術・弓術・精神術を表していて、取得している術によって、模様の数が変わるの。」
「つまり、カティナさんの組紐には、三色があるので、そのうちの三つを取得しているってことになるんですね?」
「うん。私は、暗器術と弓術は習ってないから、その他の三色が入ってる。」
「体術に武器術、その他にもいろんなことがあるんですね。。暗器術、、そういえば、川辺でシアンさん達に出会った時に、僕が暗器を持ってないか確認したとかなんとか、、言われたような気がします」
「聞いた話から考えるに、私でもチェックするわね。暗器の方が致死性があったりして、危険だからね。まぁ、そこら辺は追々、ソウマ君が通う道場で教えてもらったらいいわ。話を戻すと、ここまで組紐や段位の話をしたけど、なんとなくでもわかったかしら?」
サリュンさんが、まなでぃしーって言いながら、足にくっついてるムーリちゃんの頭を撫でつつ、先生っぽく質問してくれます。
「あっ、はい。流派でかなり違うんだってことも、理解しました。」
「そうね。そして、ここからが本題。流派の違いは、段位や伝位のシステムだけじゃない。さっきも言ったけど、流派は千差万別。その源流、成り立ち、哲学、ありとあらゆるモノゴトが違うのよ。私からすれば、古臭いしきたりなんだけど、だからこそ、タブーがある。」
「黒組紐か師範代にならないと、他の流派の技を習ってはいけない。ですよね?」
「そう。流派の一番の違いは、戦闘術の体系、在り方、想定にこそあるわ。立ち方一つを取っても、違う。よく聞くのは、どこが一番強い流派か。なんて話もあるけど、そんなのナンセンスにも程があるわ。それぞれに得意とする地形、兵法、戦術があって、その上に繊細な技術体系があるのだから。一つの流派の中に、学ぶことがたくさんある。多くを学び、崩れないだけの軸が自分の中にできて、初めて黒組紐へ手が届く。その軸が不安定なうちに、他流派を習うということは、軸をさらに不安定にさせる。それが、タブーの理由。つまり、まずは自分の流派で一人前になりなさい。ってことね。」
「じゃあ、良いとこ取りで、少しだけ他の流派からも学ぶなんていうのもダメなんですね。僕には、想像もつかないですけど、一つの武術を極めるって、とっても大変なんですね」
僕は、一人前になることはできるんでしょうか、、、
「そうなんだけどねぇ、矛盾するようだけど、実は、暗黙のルールの上で、それができちゃうのよねぇ。だから、もうタブーなんて言わないで、古臭いしきたりなんて、なくしちゃえばいいのに。ソウマ君も、今日その景色を見てるわよ。私と散歩に行った先で。」
「え??散歩に行った先で見たといえば、道場での稽古ですよね?、、そういえば、さっき、道場のフレイト先生は、稽古はつけても、技術的指導はしてないはずと、サリュンさん言ってましたよね?つまり、フレイト先生は、ロレイア流ではない??あ、そっか!サリュンさんは、カティナさんの動きを見て、ロレイア流じゃないかと推測されたわけで、あの道場がロレイア流の物というわけじゃないんですね!え、ん?稽古はいいけど、指導はだめ??もう、よくわからなくなってきました、、えーと」
「あそこは、レリの村道場だから、いくつかの流派が共同で使ってるの。今日は、フレイト先生が所属しているカザン流の日だったわけだけど。早い話が、実際の戦場では味方にも敵にも、いろんな流派が入り雑じることになる。その時に、自分の流派しか知らないんじゃ、不利になるのは、わかる?」
「えーと、相手が自分の流派の動き方?とかを知っているんだとしたら、確かに一方的に不利になりそうですね?研究とか対策とかされてるかもしれないですもんね?」
「まさに、そうなの。だから、出稽古は認められているわけ。実際に、他の流派との稽古を積むことで、戦闘で有利に戦ったり、連係がとれるようにね。」
「えぇーと、つまり、一人前になるまでは、他の流派の技を習ってはいけない。けど、戦闘で不利にならないように、他の流派への出稽古はした方がいい。ってことですね。」
「そういうこと。そこで、暗黙の了解があるわけ。出稽古の中で、教わることはできないけど、勝手に学ぶことはしょうがない。ってね。もう、くだらないでしょ?それなら、タブーなんか、なくせばいいのに。」
「確かに、なんだか、ややこしいですね。。あれ、でも、それなら、カティナさんにサリュンさんが稽古をつけるのもアリなんじゃないんですか?建前とか関係なしに」
「だ!か!ら!タブーがややこしいのよ!私は、道場に今は所属してないし、開いてもいない、フリーの状態なの。さっきの暗黙の了解は、道場間でのモノ。フリーの私が稽古をつけるのは、了解外ってことになるの。だから、私が直接カティナちゃんに稽古も指導もできないのよ。そういうわけだから、ソウマ君に頑張ってもらわないといけないの。」
「あの、サリュンさん。」
ずっと聞いていたカティナさんが、おずおずとサリュンさんに向かって話始めました。
「サリュンさんに迷惑をかけるわけにはいきません。私は簡単なアドバイスをいただけるだけでもいいんです。どこがダメとか、この動きが悪いとか、、私才能がないみたいで、時間かかるかもしれないですけど、そこからは、自分でなんとか頑張ってみますので」
「あら?なに、言ってるの、カティナちゃん?」
「え?」
「そんなのもったいないじゃない。せっかくなんだから、強くなりなさい。カティナちゃん。時間を積み重ねることで解決することもあるけど、ほんの少しのキッカケで、大きく一歩前進できることもある。それが、武術の世界よ。そのキッカケを、今日、今から、ここで、持って帰りなさい。大丈夫。ソウマ君が、頑張ってくれるわ。うふふ」
「ムーリも、がんばりゅっ!!」
ムーリちゃんが、ピョンピョン跳ねてます!
負けてられませんね!
「僕も、頑張ります!ムーリちゃんも、カティナさんも、一緒に頑張りましょう!」
そうだよ!お世話になってるカティナさんへの恩返しなんだから!
「あぁ、うん。でも、大丈夫?ソウマは、病み上がりだよ?」
「うっ、、それは、そのぉ」
確かに、勢いで言ってたけど、言われてみれば、村を散歩したくらいで、疲れて寝ちゃってたのに、僕にできることあるんだろうか、、
「大丈夫よ。バチバチに稽古をつけるわけじゃないから、安心して。それに、ここ、診療所よ?なにかあっても、大丈夫。」
めっちゃ素敵な笑顔ですけど、サリュンさん!なぜか、ヒュンってなりましたよっ!?
「早速始めていくけど、じゃあ、まずは、カティナちゃん。」
「は、はい!」
「ロレイア流とは、どんな流派か簡単に説明してみてくれる?」
「はい。ロレイア流は、流動的な技の繋がりを大切にしていて。ゼロからミドルレンジを得意としています。」
「まぁ、ざっくり言えば、そうね。ロングレンジも、かなり強いと思うけど、まぁそれは置いておいて。ロレイア流の最大の強みは、その流動的な技の連続性ね。ムーリちゃん、ちょっとソウマ君のとこに行っててくれる。、、うん。じゃあ、ロレイア流の動きは、こんな感じかしらね。」
「え?うぁっ!」
すごっ!!
ムーリちゃんが、僕の横に来たのを確認したサリュンさんは、持ってきていた剣の一本を抜いて、誰もいない方向に向かって、ふわっとすごいスピードでエアー戦闘って言うの??を始めて、めちゃくちゃキレっキレな動きで、剣をふったり、蹴りをいれたりしています!
確かに、流れるように技が繋がっていってて、それに、上下にもよく動くけど、左右にも、なんかめっちゃスルスルと移動していて、よくはわからないけど、なんかすごい!!
「ふぅっ。どう?こんな感じ?」
「しゅごーい!かっくいいね!」
ムーリちゃんも、ピョンピョンものです!
「本当にすごいです!サリュンさん!ロレイア流もできるんですか!?」
「なんちゃっての見よう見まねだけどね。カティナちゃん、どう?わりと近い動きができたと思うんだけど?」
「、、、」
「カティナちゃん?」
「えっ、あ、すみません。。さすが、サリュンさんです。ロレイア流のお手本のようなムーブでした。」
カティナさん?なんだか、すごい衝撃を受けたような、また元気が少しなくなったような表情だけど、大丈夫かな??
「そう?良かった。ロレイア流本家に出稽古に行った時に、けっこうシゴかれたのよねぇ。それから、かなり研究したから、他の流派よりは、うまく再現できたと思うわ」
本家に出稽古???サリュンさん、何者??
「サリュンさんって、本当にすごいんですね。看護師さんの姿とのギャップがすごくて、なんかもうビックリです」
「サリュンさんは、すごい人だよ。クラスランジ流は、完全な実力至上主義。その実力至上主義の流派で、最年少で免許皆伝を得たのが、サリュンさん。ほんとに、すごいです。」
最年少?!
「あら、よく知ってるわね??」
「さっき、道場で聞きました。サリュンさんが今日道場に来た時に、皆さんがざわついていて、稽古終わりに他の方達が話していたのを聞いてしまって。ごめんなさい、勝手に」
「そんなことは、いいのいいの。気にしないで。でも、なるほどね。それで、私にアドバイスを求めたいと思ったわけだ。」
「はい。同じ女性で、実力のある方にアドバイスをいただけたら、私でももっと強くなれるかなと思って、、」
「ふむふむ。うーん、カティナちゃん、さっきからずっと気になってるんだけど、なんでそんなに自分に実力がないような言い方をするのかしら?その年で、赤組紐なら、同世代ではトップの実力じゃないの?」
「えっ!!?そうなんですか!?」
えと、白黄色オレンジ赤だったはずだから、赤組紐は四つ目だよね?
「ソウマ君とカティナちゃんは、同い年なのよね?それくらいの年齢なら、さすがに白組紐って子は少ないだろうけど、黄組紐からオレンジ組紐の子がほとんどで、赤組紐はほとんどいないはずよ。」
「え、カティナさん、すごいじゃないですか!?」
「そんなことないよ。同世代のみんなは、なんとなくでやってるだけで、本気でやってないし!私は、本気でやってるのに、まだまだダメなところばかりで、もっと強くなりたいのに、上手くできなくて、、才能がないんだよ、、」
カティナさん、、、
毎日、素振りをめっちゃ頑張ってて、すごいなぁと思ってたけど、そこまでの強い想いが。
「なるほど。カティナちゃんの場合は、お母さんの影響もありそうだけど、なんとなくわかったわ。カティナちゃんは、目標が高すぎるんじゃない?目標というか、強さの物差しかしらね?それが、焦りにつながって、力みになっちゃってるのかも。」
「お母さん?ですか?カティナさんの?」
「そう。カティナちゃんのお母さんは、昔凄腕冒険者で名を馳せた人で、ここら辺じゃあ、有名人なのよ。一番身近に、そんな実力者がいたら、自然と頑張っちゃうわよね。」
なんと!メディナさんとカティナさんのお母様も、凄腕冒険者!?お世話になる方が、凄腕ばかりだよっ!?
「あれ?あのぉ、純粋な疑問なんですけど、カティナさんのお母さんも凄腕冒険者なんだとしたら、こういうことはお母さんに習ったらいいんじゃないんですか??」
「お母さんは、もう冒険者は引退してて、宿と食堂の経営に集中してるから。それに、自分のことは自分で決めなさい。って言われてるから。流派も違うし。」
親子で、流派も違うの!?
この世界の流派ってやつは、なんか複雑っ!?
「なるほどねぇ。カティナちゃん、いろんな想いがあるんだろうけど、私から言えることは、一つだけ。焦っちゃだめ。焦りは、視野を狭めるし、身体に緊張を生んでしまう。目標を高くもつことは悪くないけど、必ずしも今の自分を否定する必要はないのよ。ソウマ君、突然だけど、質問。」
「は、はい!なんでしょう!?」
「ふふふ。ソウマ君、今、急に質問されそうになって、緊張したでしょ??」
「え?あぁぁぁ、はい。。」
なんか恥ずかしい、、、
「ごめんなさいね。急に。でも、緊張した時、身体の動きがギクシャクしなかった?」
「それは、、確かに、ギュッとなって、ジュンってなったような気がします。」
「ギュッ。ね。いい表現だわ。まさに、そう。一瞬緊張したことで、筋肉がギュッとなったの。これは、人である以上、流派とか関係なく、身体操作で大事なことだから、覚えておきなさい。」
おぉ??一気に授業っぽくなったよ!!
「人は、骨と筋肉で動いているの。動きの配分は、流派で違うから置いておいて。まず、筋肉っていうのは、力を出したり伝えたり、走ったり、いろんな動きに必要よね?」
「そうですね。腕を伸ばしたり、しゃがんだり、そういう動きは、筋肉あってこそだと思います。」
体育の授業で、速筋とか遅筋とか習ったもん!
「そう。もちろん、武術的動きにも、筋肉は関係してくるんだけど、ここで大事なのは、筋肉は動きを加速もさせるけど、制動効果も持っているってことなのよ。カティナちゃんも、ここ大事だから、忘れないでね。」
「はい!制動効果っていうのは、減速させるということですか?」
「そうよ。こんな感じねッ!ふっほっ。パンチも、途中で止めたり、違う動きに繋げたりできるわけだけど」
サリュンさんが、ストレートのパンチを打つような動きから、途中でふわっと腕を止めて、そこから肘打ちっぽい感じの動きをされましたけど、本当に滑らかな動きです!
「こんな感じで、筋肉には、加速と減速の両方の働きがあるの。そして、今と同じ動きを、緊張というか、力んだ状態でやると、ふぅっほっ!」
おぉ、なんというかカクカクした動きになりましたね??
確かに、緊張してると、身体の動きが変になりますもんね。
「これだけ動きに差ができてしまう。カティナちゃんは、その強くなりたい!って気持ちが全面に出過ぎて、動きにこの力みが乗っかってる状態なんだと思うわ。無意識に、自分のパフォーマンスを下げてるってことね。さらに言うなら、こういう状態だと、余計にエネルギーを使うから、持続的でもないわ。ロレイア流なら、先生達から口酸っぱく脱力しなさいって言われてるんじゃない?」
「、、はい。ロレイアの真髄は、脱力にこそあり。と教わりました。でも、意識すればするほど、わからなくなって、、」
「大丈夫。カティナちゃんは、まだまだ今からなんだから。さっきも言ったでしょ?焦っちゃだめよ。ソウマ君。さっきの私が見せたロレイア流の真似っこは、どんな動きだったかしら?」
「えっ!どんな動きだったかですか??えーと、なんというか、スルスルシュシュッって感じで、流れるように滑らかな動きだったと思うんですけど、、当ってますか?」
「正解!うふふ。ソウマ君の擬音は面白いわね。まさに、そうなの。ロレイア流は、流動的な技の連続を得意としていて、つまり、逆に言うなら、カクカクしてちゃ、うまくいかないの。技が繋がらなくなるって感じかしらね。カティナちゃんが、自分の上手くいかないと思ってるところを表現するなら、そんな感じなんじゃない?」
「!!そうです!一連ならまだいいんですけど、二連三連と続く動きだと、だんだん動きがずれていって、なんだか上手くいかなくて、さらに焦って、、その繰り返しだったかもしれません、、、」
「気持ちが焦るのもあるだろうけど、それが続けば、身体がそれに適応して、癖になっちゃうから。今のうちに、治すべきだと思うわ。まずは、無心になれとは言わないけど、なるべく気持ちを抑えて、その場に集中することね。言われて、すぐにはできないかもしれないけど、意識を変えることで、段々変化していくと思うから、やってみてね。あぁー、これは独り言よー。独り言ー。うふふ。だから、タブーには関係なしっ!よしっ、それじゃ、早速ソウマ君始めましょうか!!ビシバシ鍛えちゃうわよー」
サリュンさん、めっちゃ笑顔だけど、、
「えっ、、、?」
あれ、病み上がりだし、バチバチにはやらないんじゃ??
えっ???
ーーーーーー
その後、うん。頑張ったよ、僕。
つかれたぁぁぁぁぁぁあ!!!
サリュンさんの脱力講座は、地味にキツかったです、、
次回からは、もう少しサクサクストーリー進めていきます!