02 B
サブタイトルを考えるのも、なかなか難しいですね。
故に、シンプルにいこうと思います。
2021/02/13 少しですが、ルビ振りと改稿をしました。
やっと、機能の使い方がわかってきました。
使いこなすまでの道のりは、まだ遠そうです。
2021/08/06 改稿しました。
2022/01/04 改稿しました。
水の中を揺蕩っているっているような感覚に、意識が少し浮上する。
色のない世界だ。
どこが上か下か、方角さえもわからない。
自分の呼吸だけが、静寂な世界で唯一存在を感じられる。
ここは、、
「はよう、目を覚ますのじゃ!」
誰かの声が聞こえた。
なんだか、水面の向こうから聞こえるような声だった。
「いつ迄、寝ておるのじゃ!」
……寝ている?僕は、寝ているのだろうか、、
「神を待たせるとは、いい度胸なのじゃ!」
…なのじゃ?
神、、神様、、何かの夢を見ているのだろうか、、
「のじゃ?……のじゃっ、えっ、大丈夫なのじゃ?返事をして欲しいのじゃ?………はぅぅぅぅ!失敗したのじゃ!?間に合わなかったのじゃ!?」
のじゃのじゃ煩いなぁ、、神様は初めてお会いするけれど、語尾が「のじゃのじゃ」なのかなぁ
そんなことをぽやっと思い浮かべていると、段々身体の輪郭を思い出してきた。
まず、肺。呼吸に上下する胸。お腹。手足。
頭もはっきりしてくる。
「なんてことじゃ!わらわとしたことが!?でも、失敗なんて、ありえないのじゃ!神なのじゃ!」
…やっぱり、のじゃのじゃ煩い。
あぁ、目を開けられそうだ。
ゆっくりと目蓋を開いていく。
そこには、どこまでも続く青空が拡がっていた。
「ん???目を覚ましたのじゃ??」
ほんとに、のじゃのじゃ煩い。耳に響く。
視界の端に、何か色鮮やかなものが映った。
少し身体を重く感じながら、頭を持ち上げてみると、そこには色鮮やかな衣を纏った幼女がいた。
「のじゃ!!」
「・・いや、のじゃってなんなんですか?」
ーーーーーーーー
「どうじゃ?気分は落ち着いたのじゃ?」
意識がはっきりするのに、少し時間がかかったけれど、なんとか身体を起こして、とりあえず胡座をかいてみた。
そして、目の前を、幼女がうろうろしている。
いや、のじゃのじゃしている。
「あの~、あなたは神様なのですか?」
「そうなのじゃ!神なのじゃ!敬ってもいいのじゃぞ!」
「はぁ?…あの、とりあえず、神様、これは夢か何かですか?ここは、いったい、、」
そう言って、周りを見てみると、なんだか雲の上にいるようだった。青と白の世界で、空はどこまでも続いているようだった。
まだ、頭が少しぽわぁ~っとしている気がする。
「これは、夢ではないぞ!うむ、とりあえず、わらわの部屋へ行くのじゃ!」
「のじゃ様の部屋??へっ!?」
気づいた時には、そこは雲の上ではなかった。
完全な和室の中にいた。
さっきまで青空が拡がっていた場所には、天井があり、僕は畳の上に座っている。
とても天井が高くて、畳のいい匂いがする。
そして、のじゃ様は一段高くなった場所にいた。のじゃ様の後ろには、立派な金の屏風がある。あれは、なんの絵だろうか?ドラゴン?
「うむ、やはり、ここが一番落ち着くのじゃぁぁぁぁぁ」
のじゃ様は、とてもリラックスされている。
にゃはぁぁぁとでも表現すればいいのだろうか。とても可愛い。
「え~と、、、のじゃ様。おくつろぎの所、申し訳ありませんが、ご説明をお願いしたいのですが、、」
「うむ。そうじゃな。ところで、先ほどから、のじゃ様とか言っておるようじゃが、のじゃ様とは、誰のことなのじゃ??わらわは、のじゃ様ではないのじゃ。まぁ、名乗るほどの神でもないのじゃがな。間借りしておるだけじゃし。」
「はぁ?それでは、なんとお呼びすればよろしいのでしょう?」
「神様でいいのじゃ!便利な言葉じゃのう。はよう、呼んで欲しいのじゃ!」
ん?……呼んで欲しい?
「・・・神様?」
「のじゃ!!」
神様が、ゴロゴロのじゃのじゃしている。
可愛い。嬉しいのだろうか?
「神様」
「のじゃぁぁぁぁ!」
うん。神様って、可愛いんだな。
ーーーーーーーー
「お主は、さっき死んだのじゃ。」
「・・・・・・のじゃ??はっ!?のじゃが乗り移った!!」
「こりゃ!真面目に聞くのじゃ!!これは、夢でもなんでもないのじゃ。現実なのじゃ。お主は、さっき死んだのじゃ。正確には、死にかけたのじゃが。」
「え?あの?はい??」
「覚えておらんのじゃ?神社の前で、お婆さんがトラックに引かれそうになっておったのを、お主が助けたのじゃよ?その代わり、お主が犠牲になりかけたのじゃ。」
「まさか、そんなことが、、」
記憶を探ろうとすると、霞がかかったような感じがしたが、お婆さん、トラック、神社の前、、靴ヒモ、カプチキ、サイダー、とイメージが浮かんで繋がっていくような感覚とともに、段々記憶がはっきりしてきた。
「…そうだ。思い出してきた……コンビニでカプチキとサイダーを買って、家に帰る途中で、……神社の前の道でお婆さんが横断歩道を渡ってて、そしたら、トラックがふらふらしながら突っ込んできて、助けなきゃ!と思って、走り出したら、靴ヒモがほどけかけてて、それで転びそうになって、でも、なんとかお婆さんを…………」
「お婆さんは、助かったのじゃ。よくやったのじゃ。えらいのじゃ!でものぉ、靴ヒモさえ、ちゃんと結んでおけば、お主も助かったかもしれぬが、お主は間に合わなかったのじゃ。じゃから、死が避けられぬものと確定した時に、わらわがこちらへ呼び寄せたのじゃ。」
「そう…なんですね。間に合わなかった。。」
「残念なのじゃ。でも、事実なのじゃ。受け入れて欲しいのじゃ!」
「じゃあ、これは、夢じゃないんですね。……カプチキ。最後に、ちゃんと食べたかったなぁ。。。」
「……でも、ギリ死んでないのじゃ!!それを、救いと思って欲しいのじゃ!」
「………神様、その、それはどういう?死んでないなら、戻れるのですか?元の世界に?」
「それは、無理じゃ!死は確定したのじゃ!不可逆なのじゃ!でも、死んでないのじゃ!死ぬ前に、呼び寄せたからな!トラックにも、ぶつかっておらん。じゃから、痛みはなかったはずじゃ。わらわは、優しいのじゃ!」
「………??不可逆?死んでないけど、死んだ??え……ええ?、、」
「神社の前で死なれては、縁起が悪いのじゃ!それに、あそこは元々参道故に、力が及ぶ。死の確定は避けられなかったが、新しい道は与えられるのじゃ!異世界転生なのじゃ!」
「異世界、、転生??」
「そうなのじゃ!・・いや、転移なのじゃ??ややこしいのじゃ!!転生とか転移とか、細かい事を気にしすぎなのじゃ、この国は!!レッツゴー異世界なのじゃ!!」
「いや、そんな、、雑な説明されても。。」
「元気を出すのじゃ。確かに、元の世界には戻れないのじゃ。カプチキは、もう食べれないのじゃ。」
「っうぐ!カプチキ、、、」
「のじゃ!なんだか、トドメをさしたような気がしたのじゃ!!ごめんなのじゃ!でも、異世界には、もっと美味しいものがあるかもしれないのじゃ。」
「異世界、、異世界は、本当にあるんですね。歴史の教科書では、読んだことありましたけど、まさか本当にあるなんて。」
「それは、あるのじゃ。わらわ達も、その存在は知っておるが、行ったことはないし、これから行くこともない。こことは、違う次元にあるが故に、わらわは越えられん。力もほとんど及ばんのじゃが、それは確かにあるのじゃ。異世界は、恐らく星の数ほど存在しておると、考えられておるが、それも定かではないのじゃ。じゃが、ちょうど扉が一つ繋がっておったが故な、お主をレッツゴーさせられるのじゃ。」
「異世界への扉、、」
どうやら、この世界の自分の死が確定したということは、間違いないらしい。なんだか、不思議な気持ちだ。それを、事実だと、心が受け止めている。
ショックではあるが、のじゃ様のキャラのおかげか、そこまで落ち込んではいない。それに……お婆さんは、助かったみたいでよかった。
まあ、高3の受検戦争からは逃げられたと思えばいっかな。
家族は悲しんでくれるかな。友達は、忘れずにいてくれるだろうか。。そういえば、喧嘩したんだった。最後に喧嘩して、お別れだなんて、、
「すまぬが、あまり時間がないのじゃ!扉の間へ移動するのじゃ!そなたは、今仮初の存在なのじゃ。故にお主は、そんなに長く存在できない。繋がりも、危ういのじゃ。もうすぐレッツゴーしないとなのじゃ!」
「えっ!?そんな!!急に!?」
次の瞬間、先ほどまで和室だったはずの場所が、大きな扉の前に変わっていた。のじゃ様の後ろに、大きな二枚扉があって、周りはよくわからないけど、白っぽい空間だ。そこに、いつの間にか立っていた。
「誰かの願いが、扉を引き寄せたのじゃな。これの存在がなければ、お主を救う道も存在しなかったのじゃ。じゃが、いつまでもこちらとあちらが繋がっているわけじゃないのじゃ!たぶん、もう繋がりが切れるのじゃ!」
「あの!えっと、じゃぁ!?」
「これも、何かの縁なのじゃ。次元が違う故に、あまり力にはなれぬが、一つくらいなら加護を与えられるのじゃ。うーん、そうじゃのぉ。向こうは、恐らくまったくの別の世界、、違う文化、、、そうじゃ!!言葉が通じないのは、とっても困るのじゃ。言語の加護を与えるのじゃ!!感謝するのじゃ!!」
「言語の加護?というか、加護ってなんですか!?」
「お守りみたいなものなのじゃ。言語の加護があれば、意志疎通で困ることもないのじゃ。言葉さえ通じれば、なんとかなるかもしれんのじゃ。・・・本当の事を言えば、あちらは、未知の世界故、どんな危険があるかもわからんのじゃ。もしかしたら、こちらで死んでおいた方が楽だったかもしれんのじゃ。じゃが、わらわの目の前で、誰かが亡くなるのは見たくなかったのじゃ。わらわの我が儘で、お主を異世界に送ることを許して欲しいのじゃ。たった一つの、役に立つかもわからん加護しか与えられぬ。ごめんなのじゃ、、、」
「神様、、大丈夫ですよ。僕は、異世界に行きます。せっかくなら、異世界でカプチキより美味しいものを探して、食べ歩きますよ。、、あの、神様、、?」
「のじゃ??」
「異世界に行く前に、最後に、失礼ながら、神様の頭を撫でさせていただけませんか?」
「のじゃ!?わらわの頭を、、、何故、、特別なのじゃぞ、、」
「ありがとうございます。神様。だから、そんな悲しそうな顔をしないでください。助けてくださって、感謝しております。」
「のじゃぁぁぁ。泣いてなんぞ、おらんのじゃ!神様は泣かないのじゃ!」
ヨシヨシ( *´д)/(´д`、)
「のじゃぁぁ、、そういえば、、ぐすっ、お主の名前を、ぐすっ、、まだ聞いておらんかったのじゃ?ぐすっ、、」
「僕ですか?僕は、クォーターですけど人族のソウマ・クラレットです。」
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「行ってしまったのじゃ。ソウマよ、異世界での新たな道に、幸があらんことをなのじゃ。」
それにしても、加護を与える時に、なんだかごっそり力を持っていかれたような気がするのじゃが、『あらゆる言語と意志疎通ができる加護』は、そんなに大した加護ではないと思うのじゃがなぁ。
むぅ、気にしてもしょうがないのじゃ!!
疲れたし、寝るのじゃ!!
誰かが、異世界転生を願ってくれていて良かったのじゃ。
そういえば、なんだか懐かしい匂いがしたのじゃ~。
ふにゃぁ~、おやすみなのじゃぁぁ、、。
お気づきの通り、この物語には主人公が二人おります。
Aが、恭一君の物語。
Bが、ソウマ君の物語です。