18 B
温かいティーは、美味しかったです(*´ー`*)
ーーー
「マキタさん!こっちです!」
「うっす!」
揺れている。
頭が重くて、熱くて、割れそうだ。
声が……シアンさん?…マキタさん?
頭に霞がかかったような、、
「もうすぐ街道に出ます!まだ行けますか!?」
「大丈夫っす!このまま突っ切るっす!警戒は継続っす!」
マキタさんの声が、すぐ近くから聴こえる。
揺れが激しくなる。
身体中が燃えるように痛い、苦しい、、
「っく!……はぁっ……っ……はぁっ……はぁっ、マキタっさん?うっ、」
「ソウマ君?起きたっすか!もう少しの辛抱っすよ!」
「街道見えました!坊や、頑張って!」
シアンさんの声が、少し遠くから聴こえてくる。
気を失ってたのか?
呼吸するのも苦しい
まるでインフルで高熱を出した時みたいな、、
それ以上かも、、、
身体の中を何かが暴れまわってるような、掻き回されるような、、
僕、死ぬ?
目を開けるのも、しんどい
なんだ?視界が上下してる?
視界のすぐ右にマキタさん?
おぶわれてる?
頭がズキズキする
「ソウマ君!しっかりするっすよ!」
「……ふはぁ……っはぁ…、僕は、、」
「大丈夫っすよ!近くの村に優秀なお医者さんがいるっすから!」
……医者?
ガサガサ音と自分の呼吸音が、頭の中でガンガン鳴っている。
落ち葉の音か、、身体が溶けそうだよ、、、
「ソウマ君?ソウマ君!大丈夫っすか?」
「……………ぅぁっ…」
「まずいっすね!シアン!街道に出たら、スピード上げるっすよ!」
マキタさんの声が遠のいていく、、
「了解です!、、街道出ます!前方クリア!このまま行けます!」
「うっす!ソウマ君!死んだらダメっすよ!」
死ぬのか
意識が遠のい、、、。
ーー昨晩ーー
ダメだった。
まったくダメだった。
脚には自信があったのに。
通用しなかった。敵わなかった。
足手まといになってしまった。
メディナさん達の行軍スピードが速すぎて、全然ついて行けなかった。
落ち込むなぁ、、、
皆さんには明かせないけど、レンダントさんの魔力を身に宿し、この世界には存在しない狼人族の力を持っていて、しかも、運が良いことにライアンさん達に出会えた。
甘く見ていたとしか言いようがない。
落ち込むなんて、おこがましいかもしれないなぁ。
今は、何時かわからないけど夜で、野宿をしていて、僕とマキタさんが焚き火の番をしている。そのマキタさんは、少し離れた所で剣の手入れをしている。
焚き火に薪を足しながら、お昼ご飯からの事を思い出していると、自分の情けなさと、この世界の人達の凄さを再確認させられる。
「はぁ……やっていけるのかなぁ僕」
お昼ご飯に、魔猪のステーキや温かいティーを頂いてから、僕達はキャンプの片付けをし、出発した。
ライアンさん達が拠点にしているマイルトンという街までの道のりは、最初に川沿いを歩き、途中から山の中の獣道を行き、野宿、獣道、街道に出たら街道を歩き、途中の村で一泊し、馬車を借りてマイルトンまで行く。というものらしかった。
最初の川沿いは、まだ良かった。
なんとか付いていけたし、ガクベンさんとザクソンさんに色んなことを教えてもらいながら、進んだ。
ちなみに、行軍メンバーの順番は、シアンさん→マキタさん→メディナさん→ザクソンさん→ガクベンさん→僕→ライアンさん→ケイトさんの順だった。
川は、途中で滝になっていて、そこからは山道というか、道なき道を行くことになった。
そこからがダメだった。
足場の悪い山道を、皆さんスイスイ進んでいくんだ。
もちろん、僕も負けじと歩いた。
小太りな商人風のザクソンさんですら、嘘のような脚捌き身体捌きで、どんどん進んでいくんだ。
明らかにオーバーペースだった。
それでも、狼人族の血脈を受け継いだ17歳だ。
負けじと頑張った。
皆さん、僕の事を心配してくれたけど、大丈夫と頑張った。
結果、途中から付いていけなくなった。
申し訳なかった。
僕のために、皆さんが休憩を増やして、ちょこちょこ休ませてくれた。
僕のためじゃないよ。と言ってくれたけど、たぶん僕のためだった。
途中、トレントにも遭遇した。
ゲームやラノベでお馴染みのあの木のモンスターだ。
僕は、まったく気づかなかったけど、シアンさんが発見して、マキタさんとメディナさんが二人でサクッと倒していた。
僕にできることはなくて、ただ見ていることしかできなかった。
モンスターだし、怖いと思っていいはずなんだけど、怖いと思う暇もなく、サクッと倒されていた。
本当に、よくわからないまま、言われたまま、見ているしかなかった。
ライアンさん達のパーティーからすれば、僕はイレギュラーのはずで、道端で拾った迷子みたいなものだと思う。
そんな僕を皆さんは、心配して、街まで連れて行ってくれるという。ありがたい話だと思う。
僕には、レンダントさんから習った覇者の咆哮があるけど、まだ威力の調整も完璧じゃないし、人前で使わない方がいいとレンダントさんに言われているから、使えない。
まだわからないけど、狼人族としての脚力も、この世界では通用しないのかもしれない。
今朝、レンダントさんと別れた時、僕はこの世界の事を甘く見ていたのかもしれない。ラノベで読んだみたいに、とんとん拍子に事が進んでいくんだと、無意識に思い込んでいたのかもしれない。
でも、マンガやラノベの主人公達も強くなるために努力していた。現状を分析して、持ちうる知識を総動員して、危機を切り抜けて。
今日、僕は完全に足手まといだった。
お世話になりっぱなしだった。
これからは、受け身じゃダメだ。
別に主人公になりたいとかじゃないけど、この世界で生きていくためには、しっかり考えて、学んで、強くなっていかないといけないんだ。
はぁ……でも、やっていけるんだろうか……不安だ、
そういえば、ガクベンさん達から聞いた話には、正直びっくりした。
驚いたことに、依頼主であるザクソンさんと助手のガクベンさんは、山師や測量などの本業とは別に、冒険者の資格も持っていて、もし戦闘になれば、自分の身を守ることくらいはできるらしい。
というか、このドイスベルグ王国の国民は、ほぼほぼ全員が冒険者の資格を持っているらしい。そういう国策らしかった。
なんでも、ドイスベルグ王国は、かなり大きな国ではあるらしいけれど、まだまだ開拓時代であり、いつどこで魔獣や山賊が出るかわからず、全領土を治められるだけの数、兵士もいない。
そのため、基礎教育の中に冒険者スキルがあるのだそうだ。
どうやら、この国にはちゃんと学校があって、平民でも基礎教育は受けられるらしい。そして、冒険者スキルを学んで、自分の身は自分で護りましょう。ということらしい。
ただ、その学校は15歳で卒業になるらしく、17歳の僕はすでに成人と見なされるみたいで、学校には行けないだろうということだった。
つまり、この国の国民が基礎教育で学ぶ冒険者スキルを、僕は学校で学ぶ機会がないということだ。それは、卒業と同時にもらえるはずの冒険者ギルドの登録カードももらえないかもしれないという事を意味する。
泣きたい。
でも、街に着いたら、ライアンさんが僕の身元照会なんかをしてくれるらしい。それでも、僕の身元がわからなければ、冒険者ギルドに頼んで、新規発行してもらえるように掛け合ってくれると約束してくれた。ホントにありがたい話だと思う。
僕は、違う世界から来たから、この世界に戸籍みたいなものはないんだけど、それを伝えることはできなくて、ホントに申し訳ない気持ちになった。
いつか、なんらかの形で恩を返したいな!
はぁ、でも、冒険者の登録をしても、スキルはまったく知らないわけで、どうしたらいいんだろうか、、本当にメディナさんの弟子にしてもらって、魔法使いになるか?それもいいような気がするけど、、やっぱり冒険者スキルとやらを習得しないといけないよう気もするし、、
なんだか、頭がぼーっとするし、うまく考えがまとまらないなぁ。
今日、頑張りすぎたのかもしれないけど、頭がぼーっとするし、身体もだるい。
でも、せっかく唯一できそうだった夜番の仕事を任せてもらったんだから、交代の時間まではなんとか頑張らないとね。
はぁ、でもこれからの事を考えだすと、更に気持ちが重くなるんだよなぁ、、、
「そろそろ交代しますよ。ソウマ君。」
メディナさんだ。
メディナさんとケイトさんが夜番交代のために、起きてきた。
いつの間にか、そんなに時間が経ってたのか。
「はい。ありがとうございます。」
「特に以上はないっすよ。じゃあ、お願いするっす!」
「お休みなさい。」
「お休みっす。」
マキタさんと空いてる場所に移動して、横になった。
だんだん身体のだるさも重くなってきたし、朝までゆっくり休ませてもらおう……
ーーーライアン&ガクベンーーー
焚き火が、小さく爆ぜる。
夜の帳を淡く照らし出す炎が、帳に二人の姿を映し出している。
「収穫祭も間近ですし、夜は少し冷え込むようになってきましたね。」
「そうだなぁ、収穫祭かぁ。今年も豊作だといいんだがなぁ。」
「気候もいいですし、今年は特にオリーブが豊作になると言われてましたからね。今から楽しみですよ。」
「オリーブかぁ、収穫に間に合うなら、ちょっと休んでから参加してもいいかもしれんな。」
「そうですね。今回は、想定よりも長旅になってしまいましたし、少し休みたいところではありますが、タイミングによっては、サージェさんがお迎えに来られるかもしれませんよ?」
「ちげぇねぇ!はっはっはっ!ベッソンのとこも人手が足りんだろうからな、帰ってからも休めんな。」
「ええ、私も叔母の農園に呼ばれる予定なので、今回の旅のレポートは、明日の宿でまとめておかないと、大変なことになりそうですよ。」
「この時期は、どこも変わらんな!はっはっはっ」
「ですね。ふっふっ」
「任務も上々、収穫祭も盛り上がり間違いなし。うまい酒にありつけそうで、なによりだなっ!」
「ええ。、、ところで、ソウマ君ですが、どうされるおつもりですか?このまま見捨てるわけにはいきませんが、マイルトンに連れ帰って大丈夫なのでしょうか?」
「そうだなぁ。大丈夫なんじゃないかぁ?たぶん。」
「たぶん。ですか。おそらく、ギルマスは納得しませんよ。最近の情勢は危うい。おかしな火種は手元に置きたくないでしょうからね。」
「それは、わぁかってるけどよぉ。ソウマは、大丈夫。そんな気がするんだわっ。」
「それは、、、勘ですか?」
「おうっ!なんなら、占ったらどうだい?得意だろっ?」
「むやみに人の吉兆を占う癖はありませんよ。」
「そぉうかい。まぁ、なんか隠してることはあるみたいだが、嘘をついてるわけでもなさそうだしな。今日1日動きを見てたが、完全に素人だ。染み着いたものは誤魔化せねぇ。着てる服からして、どっかの偉いさんの子息って可能性が高いんだろうが、本人が言わないなら、どうだっていいさ。それよか、見ただろ?ソウマの前向きさつーっか、必死さを。俺達についてこようと、一生懸命だった。あれは、本物だ。」
「そこは、私も同意です。彼の知ろうとする姿勢は、疑いようのない本物でした。」
「だろう?それに、もし俺達がソウマに騙されているんだとしても、なにかあれば、俺達が押さえればいいだけだろ?最低限の注意さえ忘れなきゃ、問題はねぇよ。」
「それは、そうなんですが、、」
「ザクソンさんにも、あんたにも迷惑はかけんよ。ギルマスには、俺がちゃんと話をつけるからよっ。なんなら、これもなんかの縁だ。うちで預かってもいい。」
「そこまで言われるならば、お任せしますが、、、ソウマ君は、今からが大変ですね。」
「そっから先は、ソウマの運と頑張り次第だなっ。だがな、やっぱり、ソウマなら大丈夫って気がするんだわ。うまいこと星が導いてくれるだろっ。」
「星は、私の専門なんですが?ふっふっ。ですが、、そうですね。確かに、これもなにかの縁ですから、お手伝いできることは、致しましょう。」
「大の大人が二人も、ソウマを応援しよう!ってんだ。それこそ、星の導きって感じがしねぇか?」
「そうですね。強い星の導きは、その前途に多くの困難もあると考えられますからね。私たちで、できることはしてあげましょう。」
二人の視線は、離れたところで眠る一人の少年へと向かう。
ーー今朝ーー
「……ぅっ…………ふっ……」
「ソウマ君?大丈夫っすか?ソウマ君!」
「どうしたぁ?」
「ライアンさん!ソウマ君がなんだか苦しそうっす!……熱もあるっす!」
「坊や!?ちょっと……ほんとだ。すごい汗…顔色も悪いし、脈も変則的になってますね!坊や?私がわかる?シアンだよ?」
「………ふぁ……っ…」
「意識もはっきりしないですね。」
「毒か?なにか噛まれたとか?」
「確認します!」
「……………………服の下も、目視できる限りでは、噛まれた形跡はないっす!」
「じゃあ、ソウマはどうしたってんだよ?これは、明らかにヤバいぞ?」
「……これは、魔力暴走?…だとしたら、大変です!」
「メディナ?どういうこと?」
「一応、魔力の乱れがないか確認しようと、魔力計で診てみたら、異常値が出ています。ここまで乱れている異常値は、初めて見たくらいです。はっきりとはわからないんですけど……恐らくは、体内で魔力が暴走しています。」
「魔力暴走って、確か6歳とか7歳の頃に発症することが多いやつよね?魔力の増幅と身体の成長の不具合とかで」
「そうです。シアンさんの仰る通り、幼少の頃に発育と魔力の増加のバランスがおかしくなって、魔力が通る経絡が乱れ、暴走することがあります。ですが、今では対処療法がある上、幼少期の魔力量はそこまで多くないために、命に関わる病気ではなくなりました。ですが、ソウマ君の魔力量はかなり多い……もし、これが本当に魔力暴走なら、命に関わる危険性があります!私では、対処できません!」
「なっ!ガクベンさんは?!」
「残念ながら、私にも対処は難しいですね。これは、魔導医の資格のある方に診てもらう必要があります。確かレリの村に、確かロゾーム先生がいたはずです。」
「ロゾーム先生なら……なんとかなるかもしれません!」
「おっしゃ!じゃあ、少年抱えて急いで移動だ!ザクソンさん、いいですね?」
「もちろんです!急ぎましょう!」
「シアンとマキタは、街道までの方向と移動方の確認!他は、撤収準備!」
「「「はい!」」」
「ソウマ君!お医者さんまで連れて行きますからね!しっかりしててくださいね!」
ーーー
「フィッシュワーム2体を確認!右前方です!」
「くそっ!なんで、こんなタイミングで!まだ街道までは半分はあるぞ!」
「ソウマ君、どうするっすか!」
「時間がおしいな!……マキタ!そのまま、少年をおぶって行け!シアンは、マキタの装備を確保して、サポートだ!フィッシュワーム2体なら、俺達だけで余裕だ!先行しろ!」
「「了解!先行します!」」
「フォーメーションを変える!マキタ達から注意をそらすぞ!」
「接触までカウント40!」
「戦闘準備急げ!」
「ここは、我々も加勢しましょう。」
「ザクソンさん。……感謝します!」
「カウント30!」
「少年、無事でいてくれよっ!」
ーーー