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17 A


2022/02/05 改稿しました。


 木村さんが駅前店の仲間になってから、数日が過ぎた。

 俺は、春休みが終わって、今日から大学の二回生になる。履修登録は、すでに終わってるから、初日から講義だ。

 でも、その前に、


 「おはようございまーす!」

 駅前店に入店すると、つい癖で挨拶しちゃうだよなぁ。

 お店の中は、朝のピークが過ぎたのか、お客様は疎らだった。

 店前も、この数日が嘘のように、静かだ。


 「あら、やだっ?恭一くんじゃないの?どうしたのこんな朝早くから?あっ、もしかして、私に会いに来てくれちゃったり~??」

 お店に入ると、レジ前のお菓子を整理している荒井さんがいた。

 荒井さんは、いつもクネクネしている。全体的に。


 「荒井さん、おはようございまーす!今から大学なんすよ!で、ちょっと朝ごはんを買いに!」


 「あら~、残念だわぁ。もう春休み終わっちゃったのね~。でも、いいわねぇ、大学生!私も青春したいわぁ~。」

 荒井さんは、今日も元気だなー!

 荒井さんは、人族で、オネエ様だ。駅前店のチーフで、ムードメーカーみたいなところがある。明るい人で、常連さんともよく会話をしている。相談なんかすると、なんか深そうなことを答えてくれる、素敵な人だ。


 「青春かぁ。俺も青春したいですねぇ。今日なんて、丸一日講義があった後は、そのままバイトですよ!バイト好きなんで、全然いいんですけど。」

 荒井さんと話しながら、朝ご飯の定番の在庫を確認しにいく。

 あったあった。朝はこれだよねー。

 そう!!ウシ丸印のぶどうパン!

 新鮮なミルクをたっぷり使用した贅沢なミルクパンに、甘味とほのかな酸味を持ち合わせた大きめレーズンを多過ぎず少な過ぎずナイスな塩梅で混ぜ混んだ、朝にも昼にもおやつにも、もしかしたら夜ご飯にもなれちゃう国民的ぶどうパン!そして、そのお供にフルーツ豆乳もゲット!


 「いいじゃなぁい!青春してるわよ、恭一くんっは!別に、恋したりとかだけが、青春じゃないもの。」

 荒井さんのウインクは、目が覚めるわー!いい意味で!


 「そんなもんですかねえ。これ、お願いします。シールでお願いします。」


 「はいはーい。ウシ丸ちゃんとフルーツ豆乳ね。恭一くんっ、これだけで足りるの?まだまだ食べ盛りでしょ~?」


 「お昼に、学食でがっつり食べるんで、大丈夫っすよ!支払いは、ロミペイでお願いします。」


 「あらっ、そう。しっかり食べなきゃだめよ~!はいっ!オッケー!」

 ちなみに、駅前店は、まだセルフレジを導入していないので、レシートやおつりは、手渡しだ。


 「それじゃっ」

 「あっ、待って、恭一くんっ!、、もう大丈夫なのっ?無理はだめよ。なんかあったら、おねぇ~さんに相談なさいっ。いいっ?」


 「あぁー、はい。ありがとうございます!でも、もう大丈夫っす!」

 

 「そ?じゃあ、気をつけてっ、行ってらっしゃ~いっ!」


 「はーい!行ってきまーす!荒井さんも、シフトの残りファイトっす!」


 「もちろんよっ!」

 荒井さん、今日もガッツポーズのキレがいいわぁ。


ーーー

 

 荒井さんに見送られてから、道を渡って、駅舎に入り、改札を通りながら、駅長の赤い鱗のリザードマンさんに挨拶をする。確か、駅長さんの名札に『渡辺』って書いてあったと思う。見かけるといつも、「いってらっしゃい」と「おかえり」を言ってくれる、とっても優しい駅長さんだ。

 改札は、やはり多種族が使うことを想定して、サイズが大きめと小さめが並んでいる。俺は、大きめの方を使う。


 今日は、一人で通学している。

 家から大学までは、片道1時間ちょいの道のりだ。電車と地下鉄を乗り継いでいく。けっこう大きな大学なのもあって、地下鉄の駅がすぐ近くにあるから、利便性はいい。

 ニャコは学部が違うけど、同じ大学だから、一緒に通学することもある。だけど、今日は一限かららしくて、朝『先に行くにゃん』とライデンがきていた。ニャコと一緒の時は、しゃべりながら電車に乗るけど、一人の時は大抵本を読んでる。歴史小説からラノベまで、何でもござれだ!


 今日は、あの!神アニメ!ハマり過ぎて、俺が異世界行きたいと、つい神様にお願いしちゃった!あの『魔法が君とつなぐなら』!の原作ラノベ新刊がやっと出たので、それを読むのだ!!

 ハマってしまって、原作を一気に8巻買い集めたから、金欠になってしまったのは、内緒だ!俺の心は泣いている!!

 そして、やっと待ちに待った新刊が出たんだ!

 前巻とこの新刊で、『学園都市と神の意思編・上下巻』。

 前巻の最後、ヒロインが主人公をかばって、神の使徒からの攻撃的を受けてしまい、天空の学園都市から落ちていくところで終わり、主人公は助けられるのか!?というのが、この9巻の下巻だ。

 でも、俺の予想では、ここでライバルが戻ってきて、ヒロインを助けるんじゃないかと思っている。なぜなら、5巻で別の道を歩み始めたライバルが、主人公達の危機を知って、地上から天空の学園都市に向かうシーンがあったんだ!ライバルが、ヒロインと一緒に主人公の元に駆け付け、三人で戦う。

 このシーンが早く読みたい!

 今からすでに胸熱だよ!


 そんなことを考えつつ、ホームに降りていくと、ぽつんと立っている木村さんがいた。

 あれから木村さんとは、バイトで時間がある時とか休憩中にいろいろ話して聞いてみた。

 木村さんは、大学進学のために田舎から引っ越してきて、叔母さんの家に居候させてもらっているらしい。通う大学を聞いてみたら、有名な女子大であることがわかった。あそこは、偏差値が高いことと、可愛い子が多いことで有名な所だ。なんでも、学内もオシャレらしい。あの女子大に知り合いができたなんて、うちの大学で漏らせば、質問責めにあうことは間違いないからな、秘密にせねばなるまい!

 

 しかし、今問題なのは、ここで木村さんに話しかけてもいいんだろうか?

 バイト中ならまだしも、駅で話しかけるのは、ナンパみたいにならないだろうか。。

 まだ連絡先も知らないしなぁ。。

 でも、見かけたのに挨拶もしないのは、逆に変だよな?

 バイト中は、仲良くなってきてると俺は思ってるし。。

 挨拶だけして、別の車両に向かう?

 いやいや、それだと他人行儀過ぎだよ!

 うわっ、どうしよう、、

 

 「……おはようございます」

 悩んでいる間に、木村さんが先に俺に気づいて、挨拶してくれた。

 そうだよな!難しいこと考えず、とりあえず挨拶しときゃよかったー!


 「あっぁあ、おはよう!木村さんも、大学行くとこ?」

 ちなみに、木村さんとは昨日の夕方ぶりだ。もちろん、バイト終わりな!


 「……はい。森山さんもですか?」

 木村さんは、相変わらず可愛い。可愛いくて、困る。

 とてとて近づいてきて、首を傾げつつ見上げてくる。

 しっぽが、ふりふりしている。


 誰か!この子に、その行為は攻撃力が高すぎると教えてくれぇー!!俺の心がもたん!!


 「…うん。そうだよ。今日は二限目から講義あるから、ちょっと早めに行こうかと思ってね。木村さんも、今日から講義があるの?」

 内心は確実にHPを削られつつも、外見は平静を保てているはず!


 「……今日は、説明やレクリエーションがあるそうです。」

 木村さんの声は、丸みがあるんだけど、そんなに抑揚がなくて、可愛いんだけど、落ち着く。不思議な感じがする。

 バイト初日こそ、緊張があったのか、そんなに喋ってくれなかった木村さんだけど、段々慣れてきてくれているっぽい。と、俺は信じたい!


 「あっ、そうだよね。俺もそういうのあったわ!あれから一年かぁ。意外とレクリエーションとかで最初に仲良くなった人達とは、その後も友達として付き合っていける人がいるから、大事にした方がいいかもよ。」

 俺の場合は、友達というか腐れ縁な感じがしなくもないけど、あいつらはたぶん友達なんだろう。


 「……友達。…森山さんは、友達ですか?」


 …………ん?


 ……誰が?誰の友達?


 「えーと、、俺が友達??」

 木村さんが、じぃーっと見つめてくる。

 その瞳を頑張って見ていると、ピンときた!


 「あぁ!木村さんと俺が友達ってこと?」

 木村さんが、こくこくと頷く。


 「そーだね。……木村さんは、バイトの仲間っていうか、友達っていうか、むしろ、俺なんかが友達って言ってもいいのかなーなんて、、」

 頬をぽりぽりしつつ、力なく笑う。

 木村さんと出会って、まだ数日だし。バイト中に、ちょこちょこ喋ってはいたけど、まだご飯とかも行ってないし、、ていうか、友達の定義ってなんだ?!男女の友情が成立するか?的なあれか??木村さんとは、成立して欲しいけど、成立して欲しくないような、、いや、俺は何を言ってるんだ!?


 内心、めっちゃ狼狽えつつも、木村さんを見てみると、変わらず静かに見つめてくれている。


 あ、そうか。そうかもしれない。

 木村さんは、こっちに引っ越してきたばかりだし、居候先の叔母さんと、バイト仲間以外は知り合いがまだいないのかもしれない。それに、バイトを始めてからの数日が、あんなにバタバタしたわけだしな。

 バイト仲間で一番一緒にいるのは、俺だ。


 「あー、木村さん。そのー、木村さんがよければ、友達になろうよ!まぁ、別に何かが変わるわけじゃないけどさ。」

 木村さんは、今から大学で友達がたくさんできるだろう。いや、たくさんじゃなくても、一人か二人大切な友達ができるだろう。でも、その前にこの街で、友達第一号が俺だっていいはずだ。

 下心は、ないぞ!たぶん!


 「……友達です!」

 おぉ!木村さんが、嬉しそうにしている。気がする!

 木村さんは、リアクションが小さいから、反応を判断するのがまだ難しいけど、たぶん今のは喜んでくれているはずだ!

 しっぽも、さっきより嬉しそうにふりふりしているし!


 トゥルルルル

 『電車が入ります。』


 そんなこんな話していると、電車がきたらしい。


 「じゃあ、並ぼっか?」

 俺達は、列から離れたところで話していたので、そろそろ近くの列に並んだ方がいい。


 「……はい。」

 二人で並んで、電車を待つ。


 そして、電車がホームに入ってきて、木村さんと二人で乗った。


ーーー


 木村さんとは、電車を降りてから、別れた。

 俺は、地下鉄へ。

 木村さんは、バスセンターへ。

 また、夜にはバイトで一緒になるんだけどね。


 地下鉄に乗ってる俺は、傍目に気持ち悪かったかもしれない。

 たぶん、かなりニヤニヤしていたはずだ。

 だって、木村さんと友達になれたんだもん!

 あんな、面と向かって、友達になろうか!なんて言ったの、人生で初めてだわ!

 別に恋人になったわけじゃないけど、木村さんの友達になれるのって、なんだか嬉しい。

 そんなことを考えていたら、自然とニヤついてしまう。

 

 それは、大学の講義室に入り、席についてからもだった。


 「なんだよ、恭一?その気持ち悪いニヤケ面は?やっとニャコと付き合うことにでもなったのか?」


 「ん?あぁ、ポンか。お前も、この講義取ってたんだな。てか、なんでニャコが出てくるんだよ?あいつの好きな人は、別にいるだろ?たぶん。」


 「春休み終わっても、変わらんなぁ。お前ら。じゃあ、なんでそんなにニヤついてんだよ?なんか良いことでもあったのか?UMAでも見たか?」


 「いやいや、UMAなんて見かけてニヤニヤするのは、お前くらいのもんだよ。」

 

 「いやいやいやいや、UMAだぞ?皆喜ぶだろ?」

 こいつは、ポン。

 水間(みずま)・ポン・柳之助(りゅうのすけ)

 狸人族のハーフで、俺から見てもイケメンだと思う。

 スラッとした背丈に、長い手足。お前、ほんとに狸人族か?と聞きたくなるくらい、シャープな顔立ち。しかし、狸人族の証とも言える、全身を包む柔らかな毛。たぶん、ファッションとかメイクすれば、普通に芸能人イケるな。

 ただ、こいつはそのイケメン度をゴリゴリに自分で下げに行く。

 なぜならば、ゴリゴリのオカルト部だからだ。

 俺は、オカルトそのものは嫌いじゃないし、むしろ面白いと思っているけれど、ポンは情熱的なオカルト部だ。

 ちょっと情熱的過ぎて、何言ってるかわからん。


 「まぁーたUMAの話しよっと?ほんとに、好きっちゃねー。あんたたち。」


 「葵唯(あおい)じゃん!久しぶり!てか、ポンだけだぞ!その話で盛り上がれるのは!」


 「いやいや、そんなことはないだろう!うーん、じゃあ、今度一緒にUFO呼ぶか?」


 「どんな発想の転換しよんのって!?おかしかろうもん、その流れは!」

 

 「みんなで円陣を組んでだな!」


 「いややし、せんけん!あたしは。」

 とか言いつつ、俺達の横に座ってくるこの方言バリバリの女性は、赤井葵唯だ。

 方言が、博多弁と地方の方言がミックスになってるから、俺でも何言ってるかわからん時がある。

 

 あぁ、ちなみに葵唯は、小鬼(ゴブリン)だ。

 

 小鬼特有の綺麗なエメラルドグリーンのようなブルーのような肌を持ち、モデル体型に、まんまモデルのような美貌を持った美女。額には、二本の角がはえている。

 去年は、一回生で唯一ミスコンに出場して、審査員賞を貰っていた。

 ただ、喋るとこんな感じで、気さくだし、男気もあって、性格でいうならば、俺やポンよりもイケメンかもしれない。

 俺達三人は、去年の一回生のレクリエーションで、同じクラスにいて、そこからずっと友達でいる。

 最初は、もう少し人数いたけど、部活で忙しかったり、彼氏彼女ができたりで、離れていった。まぁ、普通に学内で会えば挨拶はするけどね。

 葵唯は、正直モテるはず。でも、高嶺の花感があって、ガツガツ来るより、遠目に見てる連中が多いかもしれない。

 俺とポンは、不思議と葵唯を特別視しない。

 一応、男女だし、何かあってもおかしくはないはずだけど、何もない。たぶん、今の距離感が一番好きなんだと思う。


 あとは、ニャコがここに入って、四人で過ごすことが多い。

 けど、ニャコだけが、学部が違うこともあって、クラスは三人で一緒になることが多い。


 去年は、なんでこのメンツで一緒にいるんだろう?と思うことがあった。俺は、別にイケメンじゃないし、そんなに面白いわけでもない。ポンは残念とはいえ、イケメンだし。葵唯は、性格イケメンで美人だし。俺だけ釣り合ってないんじゃないかと思った時期もあったけど、一緒に過ごしてたら、そんなことどうでもよくなった。

 居心地がいい。それだけで良かった。


 「てかさ、恭一のバイト先に、新しい子が入ったっちゃろ?ばり可愛いらしいやん?」


 「なんで知って、、あぁニャコか。」


 「ニャコちゃんから、めっさ可愛い子が入ってきて、恭一と仲良くしよるったい。ってライデンがきとったったい。」

 ニャコは、方言ないと思うから、方言補正が入ってるな。一応通訳しておこう。『ニャコちゃんから、とても可愛い子がバイト先に入ってきて、恭一と仲良くしている。とライデンがきたよ』である。

 木村さんと俺が仲良く?いかん。またニヤけそうになるから、ここは我慢だ!


 「それに、春休みの間にニャコちゃんのバイト先の猫カフェに一回しか行かんかったっちゃろ?なんしよんの?行っちゃりーよ。ニャコちゃん、寂しかろうもん。ねぇ、聞きよんの?」


 「聞いてるけどさ。でも、バイトで忙しかったし、ゼミの手伝いで出掛けたりしてたから、時間がなかったんだよ。それは、ニャコにもちゃんと謝ったよ?」

 てか、久しぶりに聞く葵唯の方言が強すぎて、そっちに意識持ってかれたわ!ちなみに、葵唯の方言は喧嘩っぽく聞こえるけど、全然そんなことなくて、普通の会話の温度である。

 あぁ、それとゼミは本来二回生から始まるのが、うちの大学の決まりだけど、俺は正式なゼミ生ではなくて、手伝いという形で考古学教室のゼミに出入りしている関係で、春休みも大学に何度か来ていた。

 

 「もうー、ちゃんとニャコちゃんのこと、構っちゃらんといかんよ。」


 「わかったよ。まぁ、どうせ今日からはキャンパスで毎日のように会うわけだし。いいじゃんか。」

 ニャコは、妹だ。本当の妹じゃないけど、幼なじみとして、ずっと一緒に育ってきて、俺にとっては甘えん坊な妹みたいなものだ。そりゃ、ニャコは可愛いし、昔意識した時期はあったけど、中学の頃に、あいつには別に好きな人がいるんだとわかってからは、変に意識せずに付き合えるようになって、昔よりも仲良くなったと思う。それにしても、葵唯に怒られるようなことなんだろうか??


 「なぁ、それより、恭一の通ってる神社で、神隠しがあったじゃん。あれって、本当なんかな?カプチキとサイダーの謎。」


 「あぁ、あれね。そんなに噂が広まってんの?」

 例の神社で、トラックにひかれそうになったお婆ちゃんが、もう一人少年がいたと証言した事件。あの後、その少年の捜索願いが出ていると、ニュースに載っているのを見かけた。やっぱり、俺がカプチキとサイダーをレジに通した少年だった。


 「そりゃあ、もう噂にもなるさ!神隠しだぞ!少年の捜索願いに、お婆ちゃんの証言。彼はどこに行ったのか!?うちの部のグループライデンでも、その話題で持ちきりだぜ!」

 そりゃそうだよな。オカルト部の本分みたいなもんだし。


 「それ、あたしも見た!ニュースになっとったやろ?神隠しは、異世界転生か?っち。こわかねぇ。」


 「てか、お前のバイト先、めっちゃメディアに出てたじゃんか。異世界への扉の鍵は、カプチキかっ!?って。」


 「配信系の人達もきとったとやろ?なんか、迷惑とかかけられんかったん?」


 「あぁ、、まあね。店長が、うまく捌いてくれたからさ。お店には、実害はなかったよ。お客様のフリをして、あれこれ話を聞こうとする人とかはいたけどな。」

 事件の詳細が判明していくうちに、カプチキとサイダーが神社に落ちていたことも報道され、その流れでうちのロミマにも取材が殺到した。お店側から、話せることはない。と説明があったにも関わらず、昨日までの数日は店の周辺にたくさんの人が集まっていた。バイト始めたての木村さんが、取材の人達に囲まれそうになったりと、いろいろ大変だった。

 

 「むしろ、ポンが突撃かましてこなかったのが、不思議なくらいだよ。」

 オカルト好きの友人が、連絡してこなかったのは、今思えば不思議だ。


 「いろいろ大変だろうから、今はそっとしとこうやっ。って、葵唯が言うからさ。オカルト魂、我慢するのに苦労したんだぜ?」

 イケメンが、キメ顔すると、まじイケメンだわ。


 「なんばいいよっとね。恭一のとこのコンビニ行ってくる!ってライデンしてきたから、止めるの大変やったんよ?」

 やっぱり突撃かまそうとしてたんかい!?


 「うっ、それは、、まさか、世界線がいれかわったのか!?」


 「世界線は、一緒だよ。バカポン。、、まぁ、そっか。サンキューな。二人とも。助かった。」

 実際、いろいろ大変だったし、そっとしてもらえたのは、ありがたい。さすが、葵唯だなっ!

 春休みいろいろあったけど、またこのメンツで集まれるのは、なんだかほっとするな。


ーーーーーー

 


 「異世界転生?太古の異世界大移動みたいに、異世界への扉が開いたってことか?」


 「うちの部の考えでは、今回の件は異世界転生もしくは転移の可能性が高いと見てるぞ。昔から神隠しは、あったんだが。神隠しにあった場所とは、違う場所で発見されることもあったし、見つからないこともあった。この見つからないケースに関して言えば、異世界への移動ではないかってのが、今の定番になってる。それを証明するための実験は、毎年のように行われてるけど、まだ一度も科学的に証明されたことはないな。」


 「そんな話になってんのか。。」

 異世界転生。

 ……まさかな。そんなことはないよな?

 ……俺があの神社で転生したいって願ったのって、いつだっけ?少年が失踪する前の日だったか?

 関係ないよな?とは、思いつつも、この数日それが気になってしょうがない。

 ありえないとは、頭ではわかってる。だけど、あまりにもタイミングが合いすぎて、どこかで引っ掛かりを覚えてしまう。


 【俺が、転生したいと願ったら、その神社で神隠しが起きた。】

 そんな偶然あるのだろうか、、、


 「、、一、おいっ、恭一っ」


 「うんっ?どしたっ?」


 「どしたっ?じゃねえよ。急に考え耽って、こっちが、どしたっ?だわっ!」


 「大丈夫なん、ほんとに?疲れとっちゃっないと?」


 「すまん!本当に大丈夫だから!、、なぁ、さっきの話なんだけどさ。神隠しって、必ず神社でおこるもん?」


 「ん?神隠しと神社の関連性かぁ。気持ち的には、神社と神隠しってワードだけで、カツ丼3杯は食べれるんだが、、んー、ないとは言えんが、あんま聞いたことないな。俺が知ってる限りだと、神隠しの発生したと推測される場所に一貫性はないっぽいぞ。スーパーの駐車場とか、学校のトイレとか、心霊スポットのトンネルなんかも聞いたことあるな。」


 「ちょっ!怖いこと言わんとってよぉ!」


 「言っても、年に一回報告されるかされないかくらいのもんだし、大丈夫だよ。むしろ、ここまではっきりと神隠しが起こった状況証拠が揃ってる方が珍しいし。」


 「珍しい?」


 「あぁ。まずは、お婆ちゃんの証言だろ。そして、同日に出された捜索願。ほんで、カプチキとサイダー。どこまで本当かはわからんけど、発表されてない証拠や証言もあるみたいだし、誰かがそこから消息を絶ったのは間違いないだろ?」


 「たしかに。」


 「普通は、トイレに入ったら戻ってこなかったとか、忘れ物を取りに車に戻ったはずがいなくなってしまったとか、それくらいアバウトな状況が多いんだわ。むしろ、後からこじつけて神隠しって言ってるだけの方が多いだろうな。」


 「なるほどなぁ、、神社と神隠しは関係ない、か、、」


 「なんか気になるのか?」


 「えっ?あっ、いや、そういうわけじゃないんだけどさ」


 「おはようございます。講義を始めますから、皆さん座ってください。」


 「やばっ、その話はまた後でな!」


 「おう!昼飯の時な!」


 気になることはあるけど、それが何かははっきりしない。

 なんとなくモヤモヤした感じが残ってる。

 あぁぁ!だめだ!切り替えていかなきゃっ!

 講義に集中集中。





 なんで、異世界って言葉に、こんなに胸がざわつくんだ?






ゴブリンのことを調べていたら、世界的に必ずしも悪者として書かれたものばかりじゃないと知って、それから生まれたのが葵唯です。

この恭一のいる世界の小鬼(ゴブリン)は、勇敢で賢明な種族です。物語には出てこない設定ですが、日本の現首相は、小鬼です。自然環境について、とても先進的な努力をしている政治家で、国際企業の押し売りに負けずに、本当に環境問題に貢献するには、何をしたらいいのかを提唱していることで有名です。とかいう設定も、一応は考えてあります。物語には、一切関係ないのですが(笑)

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