表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/48

12 B

今後の展開に矛盾が生じないように、慎重にプロットを組んでいたら、時間がかかってしまいました。

可能なら、今日中にもう一話投稿します。

それでは、新章スタートです!


 特訓しました!


ーーー


 「うわぁー、綺麗だなー」


 僕は、今レンダントさんの背に乗って、空を滑空している。

 季節は、秋なんだろうか、山々が紅葉し、朱や黄色に色付いている。日本は、春だったのに、この世界は季節が違うらしい。

 山脈が続く地帯を通過しているために、かなり高めの高度を飛んでいて、初めて見る世界の景色を、僕は楽しんでいる。高所恐怖症じゃなくて良かったと、初めて思ったりもしたけどね。

 レンダントさんは、かなり高速で飛翔できるらしいけど、背中に乗る僕に気を使って、ゆっくり飛んでくれている。

 それでも、十分に速いけど、、


 「ソウマ、少し加速するぞ。しっかり掴まれ。」


 「っ、わかった!」

 レンダントさんが、翼をはためかせ、高度を上げながら、少しずつ加速していく。僕にも見えているけど、もう少しでかなり高い山を越えるので、上昇しているんだろうと思う。

 人族達が住んでいる領域はまだまだ先らしい。


 朝日に照らされた美しい景色に心を踊らせながらも、新たな旅立ちに緊張していたりもする。


 僕は、この世界で生きていけるんだろうか、、、



ーーー


 昨日は、丸1日特訓に費やした。レンダントさんが徹底的に、魔法制御などを教えてくれた。

 そして、今日、僕の旅立ちの日である。


 僕達がいた城は、古代の建造物らしい。

 あの城は、この地域で一番大きな山の頂上に建っており、雲を眼下に見下ろせる程の高度にある。但し、魔素が濃く、乱れているために、周辺は天候が荒れやすく、一年の大半は嵐らしい。

 僕が長距離を移動するためには、高度を落として飛ぶ必要があるため、嵐ではない天候の時に移動する必要があった。そして、レンダントさんによれば、直近では、それが昨日と今日の二日間で、それを過ぎれば、また嵐になるらしい。レンダントさんは、長年あの城を根城にしているから、天候を予測できるっぽい。実際、昨日から雲が晴れ渡たり、隙間から地上を垣間見ることができた。


 レンダントさんとは、まだまだ話したいことや習いたいことがあったけれど、嵐ではない日に移動しなければならないこと、これ以上長時間レンダントさんと過ごすことが、僕にどう影響するかわからないこと、それらを理由に僕の旅立ちの日は決まった。


 そして、僕は空にいる。


ーーー


 山を超え、川を超え、レンダントさんは飛んでいく。


 飛んでいく。


 飛んでいく、、、どこまで飛ぶの!?かなりの距離を飛んでるよ!?


 「レンダントさん、目的地はまだ遠いの?」

 不安になってきたので、一応確認してみる。


 「もう少しだ。レンダントの姿を人間達に見せるわけにはいかないから、街のすぐ側には降りられない。離れた所に降りて、そこからは歩く必要があるだろうが、、、ん?あれは?」

 レンダントさんが、キョロキョロしたかと思うと、右前方を見ながら、頭を傾げている。


 「どうしたの?」


 「人の気配がする、、まだ遠いが、複数人、…悪い匂いはしない。冒険者達かもしれないな。」


 「冒険者!?」


 「……少し予定を変えようか。街からは離れているが、冒険者達が少し先にいるようなんだ。様子を見てから決めるが、ソウマ、彼らと合流してから、人間の街を目指すのは、どうだ?」

 レンダントさんが、頭を少し後ろに向けて、目でこちらに問うてくる。


 「ど、どうだって言われてもなぁ、、冒険者の人達って、恐くないんですか?」


 「レンダントの姿を見れば、襲ってくるだろうが、ソウマ一人なら大丈夫だろう。それに、いきなり街に行っても、入れない可能性があるが、冒険者が一緒なら、入れるかもしれない。推測でしかないが、このタイミングで冒険者に出会えるのは、幸先がいいかもしれない。どうする、ソウマ?」


 「うーん……」

 僕は、この世界の事を知らな過ぎる。レンダントさんが教えてくれたこともたくさんあるけど、彼は人間達の習慣や決まり、交流等はわからないそうで、出たとこ勝負な感はある。まぁ、同じ人族だから、受け入れてもらえるだろうくらいの……

 冒険者の人達が、いったいどういう人達なのかもわからない。アニメやゲームで見たような感じのまんまなのか、違うのか、何もかもが未知の世界なんだ。だから、街の近くに降ろしてもらうのと、冒険者達の近くに降ろしてもらうのと、どちらが最善なのかの判断が、僕には難しい。

 もう、わからんのじゃ!!あぁ~神様~…どうしましょ~……


 「ソウマ?大丈夫か?ちょうど降りられそうな場所がある、あそこに一度降りるぞ。しっかり掴まれ!」


 「うん!っぅげっ!!」

 レンダントさんが斜めに降下していく。空気の圧がすごい!落ちないように、レンダントさんの鬣をしっかり握りしめて、姿勢を低くする。空気抵抗を少なくしないと、落ちる!間違いなく落ちる!


ーーー


 「到着だ!ソウマ!」


 「………」

 

 「ソウマ?」


 「っだ、大丈夫。降りるから、ちょっと待って…」

 死ぬかと思った……リアル絶叫系ドラゴンだった…ジェットコースターを思い出したよ…


 僕達が降り立ったのは、川沿いの空間だった。岩や石が転がっているから、増水すれば、ここも川の一部になるのかもしれない。山と山の間を流れる川沿いに、まるで道のように続いている。開けているから、山の中を進むより、こちらの方が進みやすそうだ。


 「冒険者達は、まだ遠いが、この川の上流にいる。匂いが近づいて来ているから、そのうちここを通るだろう。どうする、ソウマ?」

 僕の嗅覚は、狼人族の特徴を受け継いでいない。だから、まったく匂いなんてわからないけれど、レンダントさんには冒険者達の匂いがわかるようだ。かなり鋭い嗅覚を持っているらしい。……数日、僕は近くにいたけど、臭くなかったことを祈ろう…


 「どう?って、…もう降りちゃったし…ここで冒険者の人達を待つよ。僕は、この世界の事を知らないから、正解はわかんないけど、なるようになるでしょ!」

 正直、こわいけど!


 「よく言った!ソウマ!それでこそ、ドラゴンの力を引き継ぎし者だ!勇気と誇りを持って挑めば、叶わぬことはない!」


 「おっ、おう!頑張るよ!」


 「うむ!その意気だ!」


 「……」


 「ソウマ?緊張しているのか?なんだか、不安そうな顔だ。」

 頑張る!とは言ったけど、やっぱり不安がないわけじゃない…冒険者じゃなくて、盗賊だったら?冒険者だけど、悪い冒険者だったら?悪い想像ばかりが、不安を大きくしていく……


 「…ソウマ。これをもらってくれないか?レンダントからのプレゼントだ。」


 「えっ?プレゼント?石?」

 レンダントさんが、どこから出してきたのか、勾玉のような石をこちらに差し出してくれた。


 「これは?」


 「これは、レンダントの石だ。これは、レンダントと繋がっている。」


 「レンダントさんと?繋がっている?それって、どういう意味?物理的にじゃないよね。」


 「その石には、レンダントの魔力を籠めてある。一度だけ。一度だけ、その石を強く握り、強くレンダントを呼んでくれれば、レンダントに通じる。場所もわかる。この世界にいれば、わかる。もしも、助けがいる時は呼んで欲しい。すぐに飛んでいくよ。友の証。レンダントからの贈り物。」 


 「レンダントさん……ありがとう!大切にするよ!」


 「うむ!だから、不安かもしれないが、旅に出るんだ、ソウマ。いつか、また会える。レンダントは、人間達の社会のことは、わからない。だから、ソウマ。旅をして、見て・聞いて・学んだことを、いつかレンダントに教えて欲しい。新たな知識は、最上の喜びだ。」


 「レンダントさん……わかりました!いつかまた、いっぱい話しましょう!僕が、この世界の事を勉強してきます!」


 「あぁ、我が友、ソウマよ。ドラゴンの炎の加護があらんことを。では、さらばだ。ソウマ。」


 「はい!またいつか!…必ず!お元気で!」


 レンダントさんは、無言で頷いた後、翼を広げ、飛び立っていった。


 これからどうなるかわからないけれど、この世界でレンダントさんに会えて良かった。

 ありがとう。レンダントさん。



ーーー


 冒険者、かもしれない人達を待つことにした僕は、とりあえず手頃な大きさの岩に座っている。下手に動いて、山の中で迷子になったりしたら大変なので、動かないで待つことにした。


 「レンダントさんは、まだ遠いって言ってたしなぁ、どうしよっ…覇者の咆哮は、下手に練習できないし、魔力制御の練習をしよっかな!」


 レンダントさんから教わったドラゴンの魔力の使い方は、二つ。

 一つは、覇者の咆哮。魔力の籠め方や咆哮のコントロールを指導してもらった。

 もう一つが、魔力制御。レンダントさん曰く、ドラゴンは魔力を皮膚に纏うことで、魔法耐性や物理防御力の向上をしているらしい。それを常日頃、無意識にやっているそうで、それがドラゴンが覇者足る所以らしかった。

 

 僕は、これまで魔法が使えない世界にいたから、まだ身体に魔力が馴染んでいないのではないかと、レンダントさんは推測していた。だから、僕が無意識に防御力向上できるようになるためには、日々の練習あるのみ!だそうだ。

 魔力は、心臓を中心に全身に巡っているらしい。だから、それを意識しながら、自分に魔力を纏わせるように想像して、魔力を感じることからスタートだ。

 

 昨日の特訓のおかげか、魔力は感じられるようになってきた。だけど、それはただ身体を巡っているだけで、形を与えて纏うレベルには、まだ達していない。

 もっと、しっかり魔力を感じて、コントロールできるようにならないと、纏う処か、普通の魔法も使えないかもしれない。だから、基礎中の基礎、魔力制御は暇さえあれば、練習していこうと思う。

 地味だけど、僕はそういう地味な反復練習が嫌いじゃないから、苦にはならない。むしろ、早く魔法が使えるようになりたい!


 「あぁっ、また!魔力が分散しちゃった……難しいなぁ」

 今は、とりあえず右手に魔力を纏えるように特訓中。だけど、これがなかなか出来ない。上手に魔力を纏わせると、薄い膜を張るように赤っぽいような、オレンジっぽいような色の魔力がその部分を覆ってくれる。だけど、失敗すると霧散していくんだ。制御は、なかなか難しいなぁ。


 あれ?それにしても、冒険者らしい人達は、まだ来ないのかなー?

 僕がいる辺りは、ちょうど長ーくストレートゾーンが続いているので、見通しはいい。まぁ、大きな岩があったりするから、死角はあるけど、上流の方から人が来れば、すぐに気づけるだろう。


 「まっ、いっか!レンダントさんが、けっこう遠くに降りちゃったのかもしれないし……はわぁぁぁー、それにしても、なんだか眠く…なってきたなぁ……夜はしっかり眠れたのに…………ねむけが…今寝たら………………」


ーーー


 ザザッザッ

 ソウマが背を向けていた後ろ側の森から、女性が二人そっと姿を現した。


 「…やっと寝たわね。あの子。」


 「……むぅ…魔法耐性が高いのかな?思ったより時間がかかっちゃった…」


 「メディナ、あんた、ちゃんと本気でやったの?」


 「もちろんですよ!シアンさん、それよりも早く拘束しないと!もし、魔法耐性が高いなら、すぐに目覚めるかも!」


 「そうね…急ぎましょう!」


 ロープのような物を手に、ソウマに小走りで近づく女性達二人。 

 

 すやすや眠るソウマは、そんな二人に気づくことなく、眠り続けるのだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ