11 B
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
なんとか序章を書ききることができました。
章の分割に関してですが、AとBがあるために明確な章の管理が難しいと思われますので、ナンバリングのみで進めたいと思います。
それでは、本編をお楽しみくださいませ。
狼人族とドラゴンの力が覚醒したらしい!
ーーー
「ソウマ!ファイヤーブレス!!」
「いきなり!?そんなポカモンみたいなこと言われても!!」
「そっ、そうか。それもそうだな。…ん?ポカモン?」
「あー、それはまた後で説明するから!」
ポカモンの説明をしだしたら、とんでもなく時間がかかりそうなので、ここは阻止する!
「そうか?必ずだぞ!ソウマ!」
「もちろんだよ!で、ファイヤーブレスって、口から火を吐くことだよね?」火炎放射には、名前があったらしい!
「そうだ。口を開けて、ハァッーーー!という感じで火を吐くんだ。気合いが大切だぞ!」
気合い論法が出るの早いな!てか、今ちょろっと火が出てたよ!危なっ!!
「気合いって…まぁ、やってみるね。」
「うむ!最初は、加減の調整が難しいだろうからな、あちらの壁が崩れた方で、空に向かってやってみようか!」
「あっ、なるほど。了解だよ。」
壁が開いている方へ向かう。あまり近付きすぎると、下が見えて恐いので、ある程度の所で止まる。
「さぁ、ソウマ!遠慮はいらないから、おもいっきり気合いを込めて、ファイヤーブレスだ!」
「わかった!…………はぁー」
何も出ない。
「…………ソウマ、がっかりしたぞ。。なんだ、その力のない『はぁー』は?気合いがまったく籠っておらんではないか。。」
「いや、、だって、いざやろうと思ったら、恥ずかしくて……」
「ドラゴンの誇り高きファイヤーブレスが、恥ずかしいというのか!?ソウマ!?」
「えっ!?いやっ、違うよ!!そうじゃなくて!なんていうか、ブレスが出なかったら、嫌だなあって思って!!」
「……むむぅ、まぁ確かに、ドラゴンの誇り高きファイヤーブレスがいきなりできるとは限らん。慢心は、良くないからな。だが、やるからには、ちゃんとやらないといけないぞ。ドラゴンの誇り高きファイヤーブレス、俺ならできるんだ!と、信じることが大切なのだ。信じていないモノゴトが、形になることはない。むしろ、信じた先に、初めて、自らの望むものが手に入る。ソウマ。信じるのだ。想像するのだ。ドラゴンになって、ファイヤーブレスを成功させている自分を。」
「……うん。…わかった。やってみるよ!」
正直、いきなり、魔力が宿った、ドラゴンの力が覚醒した、ファイヤーブレスできる、って言われても、心がついていけてない。これまで魔法のない世界で生きてきたのに、急にそんなこと言われても、実感がわかない。
でも、この三日間レンダントさんと過ごした時間は、本物だ。空想の生き物だと思っていたドラゴンと友達になれた。こんなスゴいこと、ちょっと前までの自分は、信じるどころか、想像すらしていなかった。だから、僕はレンダントさんを信じてやってみる。自分の想像を越えていくんだ。
「いくよ。……っはぁっーーーーーーーッ!!うわっちゃっっ!」
あまりの勢いに、僕は後ろに倒れて、尻餅をついてしまった。
火は、出なかった。
ファイヤーブレスは、できなかったけど、何か出た。なんだ、今の?何かが、すごい勢いで飛んでいった。風?超音波?わかんないけど、何かが口から出た!!
「レンダントさん!今のって!?」
「………………なんだ、今のは?」
「えーー!?わかんないの!?」
「たぶん、ハウリングの一種だと思うんだが、、それとー、ソウマ……その…すまない!」
「えっ、なにが?」
「実は…今思い出したんだが、ドラゴンがファイヤーブレスをできるのは、魔力が源ではあるが、専用の臓器があるからだ。」
「臓器??なに、それ??」
「ドラゴンにしかない臓器だ。魔力を炎に変えるモノで、それがなければ、ドラゴンもファイヤーブレスができない。劣等種は、それがないが故に、劣等種である。と言われるくらいに、大事なモノだ。すっかり、そのことを忘れていた。誠にすまない!!」
「ちょ!……さっきの名言みたいなやつは、なんだったのさ!ちょっとジィーンときて、頑張ろうと思ったのに!!」
「本当に申し訳ない!この通りだ!」
なっ!ドラゴンにも、土下座文化が!?
「……まぁ、忘れてたなら、しょうがないよ。…でも、さっき何かが出たよね?あれは?僕に、その臓器ができかけてるとか?」
「いや、それはない。先程のモノからは、炎の属性を感じなかった。むしろ、ハウリングに近い。狼の遠吠えのようなものだな。」
「じゃあ、ただ吠えただけってこと?気合いをのせて?」
「いや、それも違うな……ソウマの身体は、狼人族の血をひいている。だから、ハウリングができてもおかしくはない。だが、さっきのアレは、恐らくなんらかの攻撃力があると思っていいだろう。」
「ほんと!?あれっ?だけど、ハウリングには攻撃力って、元々ないの?」
「その獣人達が元いた世界では、どうだったのか、それはレンダントにはわからない。だが、この世界の狼の遠吠えや、他にハウリングをできる生物を参考に考えるなら、威嚇や縄張りの主張が主な効果だ。だが、先程のモノは、それだけに留まるような威力ではなかった。空に放ったから、正確なことはわからないが、実際に敵に叩き込めば、吹っ飛ばすか、気絶させるようなことは可能かもしれない。」
「吹っ飛ばすか、、じゃあ、僕の切り札になりえるってこと?」
「現状、ソウマに他の戦闘能力がない以上は、確かに切り札になりえるだろう。ただし、魔力を使っていることを忘れるなよ。魔力には、限度がある。限度を越えれば、魔法は発動しない。丸腰になるということだ。それは、死を意味する。」
「死……確かに、それはアニメやゲームでも定番だ。……僕に、どれくらいの魔力があるか、レンダントさんわかる?」
「そうだなぁ、ドラゴンといえど、完璧ではないからな。正確なことはわからん。だが、かなり魔力量が多いのは、間違いない。レンダントが見てきた人間達の中では、かなり多い方だと思うぞ。」
「おお!やった!」
それは、朗報だ!
「ソウマ、もう一度ハウリングしてくれないか?レンダントが、瓦礫を空に放るから、それを目掛けてやってみてくれ。」
「わかった!全力でやる??」
「そうだな。まずは、全力を知ることで、加減ができるようになるはずだ。ソウマの全力をぶつけてくれ。」
「了解!」
「いくぞ?準備はいいか?」
レンダントさんが、器用にほどよい大きさの瓦礫を握って、確認してくる。準備は万端だ。静かに頷く。
「よし!投げるぞ!それっ!」
僕の胴体より少し大きいくらいの瓦礫が放物線を描いて飛んでいく。
あれを目掛けて、思いっきり気合いをぶつけるんだ!
「っっはぁぁぁぁッーーーーーーーーーー!」
バギッ
ハウリングが瓦礫にぶつかって、瓦礫が粉々に砕けていった。
僕を、もし今客観的に見ることができるなら、恐らくポカーンとしていることだろう。
「ぇっ?まじか」
「ソウマ…ソウマ!すごいじゃないか!」
「あれって、僕がやったの?…え、こわっ!破壊力やばっ!」
「ソウマ!確信したぞ!あれは、ドラゴンの覇者たる魔力が具現化したようなものだと思う!」
「ぇっ?えっ?どういうこと?」
「ソウマには、今レンダントの魔力と狼人族としての魔力が宿っていて、狼人族の身体的特徴でもあるハウリングを行使している。ここで大切なのは、前にも話したが、ドラゴンとは魔的にとても高位な存在なのだ。この世界で、ドラゴンとは覇者たる種族だ。その魔力を、人でありながら、ソウマは持っており、ハウリングにそのまま強力な魔力をのせているんだ!つまり、『覇者の咆哮』なのだ!ソウマのハウリングは!!」
「……ぇ」
言葉を失ってしまった、、覇者の咆哮って、、、中二病なのか?レンダントさん?
「ソウマ。本来の人間の魔力とドラゴンの魔力では、『ただの水』と『千年の熟成を遂げた濃厚な葡萄酒』ほどの違いがある。濃厚な魔力は、それだけでも恐ろしい力を持つと考えていい。ハウリングは、砲台だ。戦艦をも沈める砲台だ。そして、その砲弾がドラゴンの魔力なのだ。恐らくだが、並の人間がまともに食らえば、跡形も無く吹き飛ぶだろう。これを、『覇者の咆哮』と呼ばずして、なんと呼ぶのだ!」
うわー、これはあれだろうか?チート能力?
僕は、旅に出る前に、最終兵器を手にしたらしい。
こわいよ!えっ?僕、下手したら簡単に人を殺せちゃうの!?うっかりくしゃみとかしたら、目の前の人を殺しちゃうじゃん!!えっ、こわっ!?
「……ソウマ、これは人族の中では使わない方がいいだろう。。」
「そ、そうだよね。。危ないよね。。。」
「異端と恐れられてしまうかもしれない。」
「……異端?僕が?えっ、くしゃみしたら異端?!」
「くしゃみ?いや、そうではなくて、人の身でありながら、ドラゴンの力を持っているというのは、己と違うモノを認めない人族からすれば、異端となるかもしれない。普通に魔法を使う分には、わからんかもしれないが、覇者の咆哮はドラゴンの魔力そのものなのだ。わかる者が見れば、一目でわかる。」
「な、なるほど。」
「それと、これは後で言おうと思っていたのだが、ソウマが持つ言語の加護も、あまり大っぴらに人間に言うべきではないと思うぞ。やはり、異端となる恐れがある。レンダントが、人間の文化に詳しくない故に、はっきりとは言えないが、信頼できる者以外には、伏せておいた方がいいだろう。」
「神様が下さった加護も、異端になる………えっ、じゃあ僕は加護も使えないし、ドラゴンと魔力…魔法も使わない方がいいってこと!?」
「そうは、言っていないよ。加護の事は言わず、人間と普通に話す分には問題なかろう。ドラゴンや、他の人間ではないモノと話せるということは、秘密にする必要があるだろう。」
「なるほど。魔法は?」
「魔法も、人間から習えば、使って問題なかろう。覇者の咆哮は、ドラゴンの魔力をそのまま放つものだ。普通、魔法というものは、魔力を変化させて使う。風の魔法なら、風の属性に。水の魔法なら、水の属性に。それぞれ魔力を変質させて行うのだ。故に、強い魔力を持っているな。程度の認識で済むだろう。」
「……じゃあ、レンダントさんと話したことや、習ったことは、人前では使えないってことだね。」
「そうなる。すまない。もっと、力になりたいのだが、レンダントが力になればなるほど、人間の社会への適応が難しくなるかもしれない。」
「そんな!……レンダントさんの気持ちだけでも、僕は嬉しいよ。ありがとう。」
「ソウマ、加護の方は実際に他のモノと接しないと、その効果の程が確認できないからな、まずは置いておこう。今日は、覇者の咆哮を練習しよう。下界に降りるのは、明日からでも大丈夫だろう?」
「でも、覇者の…咆哮は、人前では使えないんだよね?」
「もちろん、そうだ。だが、加減を覚えれば、使えるかもしれんし、人里離れた場所なら、魔獣を倒すのにも使えるはずだ。技とは、繰り返し行うことで、身に付くのだ。加減も、まずは基本ができてからでないと、話にならないからな。」
「それは、必要だね。……うん!わかった!今日は、覇者の咆哮を練習して、下界行きは、明日にしよう!」
「よし!ならば、他にも魔力操作とか、レンダントが教えられそうなことをみっちり叩き込んでいくよ!下界の嵐は、今日にも過ぎ去りそうだし、ちょうどよい!」
「はい!お願いします!レンダント先生!」
「おぉ、先生がなんなりと教えようではないか!はっはっはっ!ところで、ソウマ先生。ポカモンとは、一体なんなのだ?」
ポカモンのこと忘れてなかったーーーー!!
さすがは、レンダントさんだ。
しょうがないなぁ、覇者の咆哮の練習をしながら、少しずつ話していこう。どうせ、ゲームやアニメの話にどんどん拡がっていくだろうし。でも、その前に!
「レンダントさん、ポカモンの話は朝ごはん食べながらにしませんか?お腹ペコペコですよ!」
まずは、腹ごしらえからだ!
それから、この異世界で生きていくための特訓が始まる!
魔法の練習!ワクワクしてるけど、寂しくもあるんだ。
この世界で初めてできた友達、レンダントさんと明日にはお別れだ。だから、今日を精一杯楽しもうと思う!
僕の異世界生活が、始まる!
お読みいただき、ありがとうございました。
新章は、まずソウマ君のお話を何話か続けて書こうと思っています。
なるべく、早めに更新できるように頑張りますので、今後もよろしくお願いいたします。