~異世界に夢はあるのか~#5
僕は学校に行くとだけ言って、門番をくぐり抜けた。が、学校に行くはずもなかった。貧乏を馬鹿にされた時よりも、母が嘘をついて泥棒していたことよりも、怒りの矛先は王国へと向いた。とは言っても、王宮の警備はこれまでよりいっそう強化されている。太刀打ち出来るわけがない。しかし、それによって警備が薄れたところがある。貴族の屋敷だ。何もしていないのに王によって恩恵を受けているのは癪に障る。どれだけ頑張っても報われない生まれながらの負け組もいると言うのに。王国に反乱することを厭う必要などどこにもない。
「従うだけの常識なんていらない」
そんなことを考えながら僕は最初の屋敷に入った。
それはとても格式高そうで、時代の流れを思わせない堂々とした佇まいだった。
ザカル「お前の命か金を出せ!」
僕には目の当てられないような屋敷の中で、主に刃を向けた。とは言っても彼の命が目的では無い。僕はありったけのお札を彼から奪った。犯行は屋敷に対してとても静かだった。やせ細った老人のようになった主とは裏腹に、皮肉にも豪邸はしっかりそびえ立っていた。
2つめの家は、とても騒がしく、どこか庶民らしかった。ここでは、相手がいない隙をつき、お札を当然のように奪っていった。
連続強盗は終わることを知らぬように続いた。
そしてもう何軒目か数えられないようになった頃、ついに王宮で決着をつけることにした。これまでに集めたありったけのお札を抱え、王宮に堂々と入場した。もちろん騎士に捕まったが、僕は不敵の笑みを浮かべた。騎士に連れられ、王の間に放り出された。もう、どんなブレーキも僕を止めなかった。今まで集めたお札を一斉にばらまき、道中で買った油の缶を倒し、火をつけた。もう戻れない。僕は笑うことしか出来なかった。慌てふためく王の表情、お金が燃える絶景、溶けていく欲望。全て思い通りだった。はずだった。
国王「こんな宮殿もういらん。馬を引け。」
王は宮殿を捨て、使徒たちは馬を引き、残ったのは僕と焼けた宮殿、屑になったお金だけだった。王にしてやられた。これくらいのことは予想済みだったのかと。僕はただ呆然と立っているのみだった。王の宮殿が崩れ落ちて行くとともに自分の体も焼け落ちて行くのだった。
G A M E O V E R
コンティニューする?
⇒はい
いいえ
はい、を押すと1人の青髪の紫陽花のような精霊(自分と身長は同じくらい)が僕の元へ現れるのだった。