異世界に夢はあるのか#3
バルタン王国1番のお金持ちといえばやはり国王である。その名をファーシルといい、シーク家の大黒柱である。持ち前の強運とその財力でバルタンの国を築き上げた実績は侮ることは出来ない。また、ビジネスにも長けており、王国をひとつの会社と見立てた貿易構造はこの世界では有名なことである。そんな国王はこの国を物で溢れかえらせて、国民の支持を得ていた。そう、あのことさえなければ。
この国の問題点といえばやはり経済格差だろう。事実、国王もお金の奴隷で、お金さえあればなんでも出来る、裏を返せばお金がなければ何も出来ないというある意味歪んだ正論の信者だった。そのせいか国王は貧乏な人たちを無能な人たちだと勘違いしてしまったわけである。
貧乏の差別はエスカレートしていき、参政権を剥奪したことから、スラム街は無法地帯となり、デモが横行するようになった。それを見た国王はついにスラム街を隔離させてしまう。スラム街ではよく聞くことだが、「金の壁」なるものが住み分ける世界を変えている。スラム街から街へ出るには通行料を払わなければならず、それを払うのは到底無理なほど高く設定されている。
僕の場合、学校が金の壁の外にある訳だが、それによって例外的に金の壁を通過できる。刺青によってスラム街の人々と区別されているのだ。
ただし許可なく通行するのはもちろんだめである。
その母がだ。外の世界で宝くじを当ててお金をたんまりと持ってくるなんて到底馬鹿げた話である。今までに感じたことの無いくらいの寒気がさした。
その寒気を抱えたまま僕は何日も過ごした。体調もいつもよりすぐれなかった。もう貧乏いじりも対応している暇もなく、無気力とも脳が別世界に行ったようでもなくぼーっとするようになっていた。
その寒気は当然のように当たってしまう。母の帰りが遅い。遅いのは当たり前だが、こんなにまで帰ってこないのはさすがにおかしい。その夜はどうも眠れる様子になかった。そして裁きの光は放たれる。
サリヤ「国王様、どうかお許しを!」
ファーシル国王「貴様は私の金庫から金銀財宝を盗んだ。これだから貧乏百姓は…私の金庫から盗むとはよく私に歯向かえたな!貴様などこの国にいらん!死刑だ!」
怒りの鼓動は動き出す。