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異世界召喚は午前零時~神子は辞退し還りたい!  作者: 春賀 天(はるか てん)
【第一章】午前零時~目覚めた先は異世界でした
6/21

【3】四神の神子達とオマケ神子

【3】




「ほら、あともう(すこ)しよ、頑張(がんば)って」



(わたし)()っぱらいの千鳥足(ちどりあし)(ある)きながら何度(なんど)となく気分(きぶん)(わる)くなって、その()にしゃがみ()みを()(かえ)何人(なんにん)かの女性(じょせい)(ささ)えられ黒姫(くろひめ)(はげ)まされながら歩いている。



ーーそういえば私、どこに()くんだろ?にしてもリアルな『(ゆめ)』だなあ~ 具合(ぐあい)が悪いのもリアルなんだもん。出来(でき)ればもうベッドで()たいんだケド。だって歩くと(さら)に酔いが(まわ)って、なんだか()()が………うぇっぷ。



私は口許(くちもと)をハンカチで()さえながら前方(ぜんぽう)()ると、(おお)きな中国(ちゅうごく)のお(しろ)(よう)建物(たてもの)の入り口が見え、中には沢山(たくさん)のこれまた古代(こだい)中国衣装(いしょう)()人間(にんげん)がわんさかいる。



ーーおいおい、マジで韓流(はんりゅう)ドラマ? どうなってんの?



そんな私達が建物の()(ぐち)(はい)ると、中に()た古代中国衣装のオジサン達の視線(しせん)一斉(いっせい)にこちらの(ほう)集中(しゅうちゅう)して異様(いよう)(こわ)い。



「………あのぅ~黒姫さん。どうやら私、場(ちが)いなんで、ここで(かえ)ってもいいかな?」



私は入り口付近(ふきん)()()まると中に(すす)(こと)(からだ)全体(ぜんたい)(かたく)なに拒絶(きょぜつ)するも、黒姫は(うで)()()る。



「なに()ってるの! ここまで()て帰るとか召喚(しょうかん)された意味(いみ)()いでしょ!」



「いやいや、(むし)ろ『召喚』って(なに)それ?だから。漫画(まんが)小説(しょうせつ)じゃあるまいし。しかも中のオジサン方もメッチャ怖い(かお)でこっち(にら)んでるじゃん。だから私、絶対(ぜったい)帰った方がいいって!」



(なお)も先に進む事を徹底(てってい)して(こば)(つづ)けるも、私を(かこ)む女性達が体にまとわりついて(はな)れない。



「はあ~大丈夫(だいじょうぶ)だから。(だれ)貴女(あなた)危害(きがい)(くわ)えないわ。貴女の『属性(ぞくせい)』を確認(かくにん)するだけよ。それが()んだらちゃんと帰れるから安心(あんしん)して?」



「あ~なんか本格的(ほんかくてき)に頭(いた)くなってきた。それにスッゴく具合も悪いし、その属性だかなんだか()らないケド、後日(ごじつ)(あらた)めてという事で今日(きょう)はもう家に帰してよぉ~」



「あ~もう! いい歳して我儘(わがまま)言わないの! しかも貴女は神子(みこ)達の中でも最年長(さいねんちょう)なんだから、みっともない姿(すがた)を見せたら()ずかしいわよ? 大人(おとな)なんだからしっかりしなさい!」



「え~大人だからって、しっかりしないと駄目(だめ)だなんて偏見(へんけん)よぉ~ 大人だって(いや)なものは嫌なんだから。しかもこれって私の夢なんだから、そこまでする必要(ひつよう)ないでしょう? あ~もう面倒くさいったら。ああ~(はや)()()めろ~」



私はその場にしゃがみ込んでしまうと、黒姫が眉間(みけん)(しわ)()せて苛々(いらいら)した口調(くちょう)(おこ)る。



「ちょっと! いい加減(かげん)にしてよ、この酔っぱらい! 面倒くさいのはこっちの方よ! 他の神子達は素直(すなお)に応じているのに、どうして貴女だけはこうも()こずらせるのよ!」



「みんな同じじゃないと駄目だなんて誰が()めたんですかぁ? 私は私だも~ん。それに面倒なんだったら私を呼ばなきゃいいでしょ~」



「くうぅ、なんか無性(むしょう)(はら)()ってきたわ! 酔い覚ましでひっぱたいてやろうかしら?」



そう言って黒姫が(こぶし)()げるのを(まわ)りの女性達が止める。



「黒姫! どうか()ちついて(くだ)さい!」



「黒姫! 相手は酔っていて正気(しょうき)ではないのです。それに(てん)の神子に暴力(ぼうりょく)(ゆる)されません」



すると人々がざわつく中、中央玉座(ぎょくざ)(すわ)っていた国王(こくおう)らしき人物(じんぶつ)がこちらに(こえ)()けてくる。



「黒姫、一体(いったい)どうしたのだ? その(もの)は召喚されてきた天の神子であろう?」



「はあぁ~どうもこうも完璧(かんぺき)に応龍の人選(じんせん)間違いよ。しかも酔っぱらいの神子なんて前代未聞(ぜんだいみもん)だわ。応龍にはきちんと責任(せきにん)をとってもらわないと」



黒姫が(あき)れたように大きなため(いき)()く。



「仕方ないーーそこの衛兵(えいへい)、神子をこちらにお()れしろ」



「はっ」



国王の言葉(ことば)()ぐ様、(ちか)くにいた衛兵の二人が(あるじ)一礼(いちれい)し、こちらの方に近付いてくる。



「ーー失礼(しつれい)します。神子。皇帝(こうてい)(めい)により貴女をお連れ(いた)します」



そう言って衛兵が私の腕を(つか)もうとするので私は大(あば)れするように手足をバタつかせて抵抗(ていこう)する。



「きゃああーーちょっと!何すんのよ! 私に(さわ)らないでよ! この痴漢(ちかん)!!変態(へんたい)!! 女の体に気安(きやす)く触んないで!! あんた達!セクハラって言葉知らないの!? 警察(けいさつ)通報(つうほう)するわよ!!」



「ちょっと! 酔っぱらいのくせに暴れないで!! それにこの(くに)にセクハラなんて言葉は無いわよ。そして警察もいないから通報もまず無理(むり)ね」



「はああ? セクハラも警察も無いって、今時どんな国なのよ!? とにかくなんでもいいけど私に触んないで!! もし私に(ゆび)一本(いっぽん)でも触れたら、それこそ『天罰(てんばつ)()らわすからね!!」



するとその『天罰』という言葉が()いたらしく、衛兵達が(おのの)くように私から離れて困惑(こんわく)している。



「ーー黒姫、どうしたらよいでしょうか? 我々(われわれ)では神子に触れる事が出来ぬようです」



「はあぁ~そうね。それでなくとも神子にはそれぞれ特有(とくゆう)の『神通力(じんつうりき)』があるから下手(へた)刺激(しげき)すると、こちらが(あぶ)ないし仕方(しかた)ないわね。ここはやはり私がーーー」



黒姫が衛兵を(うし)ろに下がらせ私に近付くかと同時(どうじ)に、私の後ろからいきなり両脇(りょうわき)から(すく)い上げるようにして体を()ち上げられ両足が地面(じめん)から()くと、そのまま両(ひざ)に腕を通され、いわゆるお姫様(ひめさま)()っこの状態(じょうたい)だ。



「えっ? え?」



「天の神子よ、最早(もはや)時間(じかん)が無いのだ。『天罰』ならこの私が(あま)んじて受けよう。そして我等(われら)()してそなたに危害は加えぬゆえ、大人しくこちらの()(したが)って()しい」



そう言って私を抱えているのは青い衣装を(まと)った高貴(こうき)気配(けはい)(ただよ)わせた王子様のような(ちょう)イケメンの(わか)青年(せいねん)だった。



ーーえ、えっ、ウソ。何? この超イケメンは!? どっから(あらわ)れた?? ーーっていうか、こんなカッコいい(おとこ)、今まで見た事ないーーー



「助かったわ、青龍(せいりゅう)(おう)。さすがに龍王に『天罰』など恐れるに()りないですものね」



「それは過言(かごん)に過ぎぬ、黒姫。私とて人の()である以上(いじょう)、この身に何があってもおかしくはないのだ。したがこのままでは、いつまでも(らち)があかぬゆえ、神子に(たい)して無礼(ぶれい)承知(しょうち)でこのような行動(こうどう)を取らせて(もら)った。


ーー天の神子よ。無礼を(はたら)大変(たいへん)(もう)(わけ)ないと思っている。そなたも色々と困惑している事だろうが、どうか()()けてくれ」



「へっ? え、あ~と、その、は、はい」



ーーイケメン恐るべし。という事を人生(はじ)めて身を持って体験(たいけん)した。ーー勿論(もちろん)『夢』だけど。


『夢』とはいえ、こんな超イケメンに軽々(かるがる)とお姫様抱っこされている自分(じぶん)。あり()ない。ーーうん。だって『夢』だもん。


ああ~見れば見るほどカッコいいな。こんなイケメン本当にいるんだ。ーーうん、だって『夢』だから。



私は先ほどまで暴れていたはずなのに、まるで()りてきた(ねこ)のように大人しくというか、全身が(かた)まったまま(うご)けないでいると、黒姫がやれやれと言わんばかりに(かた)(すく)めた。



「ーー今度からこういう場合(ばあい)は貴方に(まか)せようかしら?青龍王。その方が仕事(しごと)が早いわ」






【3ー終】


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