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異世界召喚は午前零時~神子は辞退し還りたい!  作者: 春賀 天(はるか てん)
【第一章】午前零時~目覚めた先は異世界でした
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【3ー⑤】四神の神子とオマケ神子

【3ー⑤】





「ううっ、だったらすぐにでも(うち)(かえ)してよ~(わたし)だって()(この)んで()たわけじゃないし、()わせてもらえば(とし)()ってるっていったって、30(さい)になったばっかりで、しかもついさっきまではまだ20(だい)だったんだから!」



すると周囲(しゅうい)視線(しせん)(おどろ)いたように私に集中(しゅうちゅう)する。



「ああ? 30歳!? おいおい(うそ)だろ? 『神子(みこ)』って普通(ふつう)10代から20代の若者(わかもの)(えら)ばれるんじゃなかったのか? しかも青龍(せいりゅう)(おう)よりも年上(としうえ)かよ。()()幼稚(ようち)くせぇから(まった)()からなかった」



そんな虎旺(こおう)にカチンときたので、すかさず()って()かる。



「ちょっと!そこの生意気(なまいき)坊主(ぼうず)!! さっきから年上(としうえ)(たい)して“お前”とか、いい加減(かげん)にしないとマジで(なぐ)るよ。しかも女性(じょせい)年齢(ねんれい)()くなんて紳士(しんし)風上(かざかみ)にもおけない最低(さいてい)なマナー違反(いはん)だって(こと)も分からないの? それに人間(にんげん)(だれ)しも歳は(かなら)()るのよ! だからあんただってその(うち)、若い子達から“ジジイ”って()われるようになるんだからね!?」



「はあぁ? お前こそ本当(ほんとう)無礼(ぶれい)なヤツだな! こう見えても(おれ)応龍(おうりゅう)(こう)息子(むすこ)で、この(くに)第四(だいよん)皇子(おうじ)だ。そして白国(はくこく)君主(くんしゅ)であり四神(ししん)眷属(けんぞく)白虎(びゃっこ)(おう)』なんだぞ?」



「はん、だから(なに)? 白虎王だのなんだの、この世界(せかい)の人間じゃない私には一切(いっさい)関係(かんけい)ないわ。それにどうせ私が目を()ませば(すべ)()えてしまう(ゆめ)なんだから、(まぼろし)(だま)ってなさいな。ああ~もう面倒(めんどう)くさいったら。私ってば(はや)く目が覚めろ~」



私は自分(じぶん)(ほほ)(かる)くひっぱたいたり、つねったりしていると、目の前の生意気な少年(しょうねん)(からだ)から白い(けむり)のようなオーラが()()ぼり、なにやら不穏(ふおん)空気(くうき)(ただよ)(はじ)めている。



「………はは、本当にここまで無礼な(おんな)(はじ)めてだ。まさかこの白虎王を馬鹿(ばか)にするヤツが人間の(なか)にいるとはな。しかも汚物(おぶつ)まで掛けやがったし、よほど()にたいとみえる。『神子』とはいえど、ここまで皇族(こうぞく)に対しての(たび)(かさ)なる侮辱(ぶじょく)処罰(しょばつ)(あたい)するとは(おも)わないか?」



ーーあ、なんかヤバ~イ方向(ほうこう)に。しかも(からだ)から白い(ほのお)?がメラメラ立ち上ぼって見えるわ! お、(おこ)ってるよね。しかも激怒(げきおこ)!?



虎旺(こおう)!! ちょっと(すこ)()()きなさいよ! 『天の神子』に危害(きげん)(くわ)える事は禁忌(きんき)とされているでしょう? 天との誓約(せいやく)(たが)えれば、この世界が(ほろ)びるわ!」



黒姫(くろひめ)仲裁(ちゅうさい)に入るも白虎王は不敵(ふてき)(わら)う。



「ーーふん、だったら一発(いっぱつ)(なぐ)らせろよ。それならいいだろうう? ここまで馬鹿(ばか)にされて(だま)っていられるかよ。たとえ女だろうがこの(さい)関係(かんけい)ない」



「な、なによ、ちょっと言っただけで、そこまで怒る事? それにあんただってかなり失礼な(もの)言いだったわよ。だったらお(たが)(さま)じゃない!」



「お互い様だあ? だったらお前が俺に掛けた汚物はどうなんだよ。しかもその(あと)、いけしゃあしゃあと(くち)()いたよな?」



そう言って白虎王は心底(しんそこ)不快(ふかい)表情(ひょうじょう)(かお)をしかめながら私の汚物で(よご)れたマントを見せつけてくるので、さすがに私も「うっ!」と体を退()く。



「そ、それは不可(ふか)抗力(こうりょく)よ。(けっ)してわざとじゃないからね? たまたま()()をもよおして、気が付いた(とき)には(すで)にーーってだけだよ。それに(かん)しては(あやま)る。本当に(わる)かったわ」



「はっ、今頃(いまごろ)謝られたって()せぇよ。それより俺に殴られる覚悟(かくご)出来(でき)たんだろうな?」



「ちょっと! 女に()をあげるなんて最低だから! (かり)にも皇子様ならそれくらいの教育(きょういく)()けてるでしょ?」



「そんな事()らねぇよ。それに(さき)に俺を殴ったのはお前だからな? “やられたらやり(かえ)す”そういうもんだろ?」



ジリジリと私との距離(きょり)()めてくる白虎王に思わず(いき)()む。



ーーう、嘘でしょう? 私ってもしかしなくても万事(ばんじ)(きゅう)す!?



すると私の視界(しかい)(さえぎ)るように青龍王が(あいだ)に入って(かば)うように私の前に立つ。



「ーーいい加減にしろ、白虎王。たとえ冗談(じょうだん)にしろ、応龍皇の御前(おんまえ)で悪ふざけがすぎるぞ」



ーーえ? 冗談? 悪ふざけって。



思わず青龍王を見上げると、(きび)しげな表情で前方を見つめる精悍(せいかん)(よこ)顔に直視(ちょくし)出来ずに(あわ)てて視線を()らす。


それでなくても普段(ふだん)イケメン美男子(びなんし)など見()れていないだけに、その姿(すがた)を自分の視界に入れる事自体、(おそ)れ多くて()(がた)い。



ーーああ、でもこのイケメン皇子、私より年下なんだっけ? すごく大人で落ち着いているから、てっきり年上かと思った。それに(くら)べて私なんて歳はくってても中身なんて、ほとんど中高生のまんまで()わらないから、幼稚くさいと言われても、まあ、仕方ないんだろうけど。



すると白虎王の体から上っていた白い炎がたちどころに消えて、私に背を向けると「ふん」と(はな)()らす。



「ふん、ちょっとからかっただけだろ? こいつがあまりにああだのこうだの(うるさ)いから(おどか)かし半分(はんぶん)で大人しくさせようと思っただけで、いくらぶてぶてしくて全く可愛(かわい)げすらもない非常識(ひじょうしき)なヤツでも本気で女なんか殴らねーよ」



「なっ、からかうって本当に年上に対する態度がなってないわね。しかもぶてぶてしくて可愛げがないのはあんたの方でしょ? 一体(いったい)どういう(そだ)ち方をしたら、こんな(ふう)になるのかしら? あんたの(おや)の顔が見てみたいわ」



「親の顔ならもうすでに見てるだろ? 俺の父親(ちちおや)はそこにいる応龍皇だからな」



白虎王がくいっと親指を()す方向には、複雑(ふくざつ)な表情の応龍皇の顔がある。



ーーあ、ヤバ。そういえば第四皇子って言ってたっけ。



そんな応龍皇は深いため息を付いた。



「天の神子よ、()息子(むすこ)非礼(ひれい)(われ)()びよう。末子(まっし)という事もあり(ほか)兄弟(きょうだい)達よりも(あま)やかしたせいか、どうにも粗野(そや)に育ってしまってな。(だれ)に対してもあんな(かん)じなので、どうか気にしないで()しい」



(もう)(わけ)なさそうに口を(ひら)く応龍皇に、私は慌てて片手を左右(さゆう)に振る。



「え~っと、いえ大丈夫(だいじょうぶ)です。私もいちいち子供の言う事にムキになったりして少し大人げなかったかな~って。ーーあ、『親の顔が見たい』なんて、あれは言葉の(あや)ですから気にしないで下さい。こんな大きな子供のやる事にいつまでも親が干渉(かんしょう)するところでもないですし、自分の事は自分で責任(せきにん)取らせればいいですよ。なのにいつまでも手が掛かって大変(たいへん)ですね」



「誰が子供だ!! 俺は成人(せいじん)しているし、これでも一国の君主だぞ! しかも誰の庇護(ひご)一切(いっさい)受けてないからな!?」



ムキになって反論(はんろん)する白虎王に、私は「ふふん」と意地悪(いじわる)げに笑う。



「あら、まあ~君主って事は、あんた王様だったの? 全然(ぜんぜん)そう見えないから全く分からなかったわ? でもそれなら尚更(なおさら)、態度や言動(げんどう)は気を付けた方がいいわよ。あんたがよくっても自国の(たみ)達が(はじ)をかくんだから」



「なんだと!!」



白虎王が声を(あら)げて(さけ)ぶ。ーーああ~私も何やってんだか。余計(よけい)な事言わないで聞き流せばいいのに、日頃(ひごろ)のストレスからか、つい相手しちゃったりなんかして、さっきは冗談だったにしても、これで本当に怒らせて殴られたらどうすんのよ?


うう~だけどなんか口が勝手(かって)(うご)いちゃう。口喧嘩(げんか)なんて滅多(めった)にしないだけに、私ってばストレスの()け口をこの子に(もと)めてんのかしら?







【3ー続】




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