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四星剣  作者: KUMA
勇士を目指す少年、記憶を求める少女
6/22

第6話 レニの力


 クラウスはフリードの様子を伺っていた、一瞬であるが不穏な気配を感じ取ったらしい。

 道具袋から眠りの粉を取り出し、振りかけようとした瞬間フリードは目を見開いた。


「なぁッ?! お前、起き―――」

『ゥゥゥ……ゥゥウウウッ、ォォォオオオオオオッ!!』



メキ……メキメキ、バキッ……バギンッ!



 フリードは拘束され、指一本動けないはずの状態であった……ジークは鉄並みの強度があると言っていたがそれを容易く変形、破壊し身体を無理やり内側へ丸め込む。

 叫びながら大きく身体を反らせると、拘束していた岩を周囲に飛散させる。


 身体は一回り大きくなっていた。そして胸、腕、足回りには岩の殻が残っている……元々着けていた防具は岩の殻と一体化させたしい。


『フゥーッ……フゥーッ……』


 目が合った瞬間に後退した事もあってか、クラウスは幸いにも軽傷で済んだようだ。咆哮による振動、そして飛散した岩の影響で出口が塞がれてしまう。


「マジかよ……」

「クラウスッな、何があったのッ?! 」

「俺も分んねぇよ、とりあえず戦うしかないッ! 」


 二人は武器を構え、フリードと対峙した。

 敵意を感じ取った彼は無造作に近くにあった岩へ拳をめり込ませる……引き抜く様な動作をすると、そこから両刃の大斧が出現した。大小さまざまな鉱石・結晶が無作為に刃を形成しているらしい。


「ウウ……絶ッ対強いよね? 無理をしちゃダメだよ」

「分かってる、こういう相手には一撃離脱だろ? シショーが言ってたもんなッ!」


『俺……オデはッ、ゼッダイニィィィィィッ!! 』


 フリードは斧を地面に叩きつけ、そのまま大きく振り上げる。

 大小さまざまな岩を飛ばしてきた。


 二人は左右に分かれ、何とか回避……着地と同時にそれぞれ特技(スタント)を打ち返す。


「風刃! 」

「シャインボールッ……えいッ! 」


 レニの周りには3つの光球が出現……彼女は両手で槌を回すと、連続で光球をフリードに打ち出した。

 風刃は岩の鎧に掻き消されてしまうが、光球が当たると……



キィィィン……パンッパンッパンッ!


 フリードの右肩、左膝、そして胸部に張り付くと数秒間を開けて光は弾け散る。

 予想外の衝撃に彼も思わず膝を着いてしまう。


『グゥッ?! 』


「俺の特技じゃ鎧に傷一つ付かないか、やっぱ肌が露出している所を狙うしかないな」

「効いてるみたいだけど……アレじゃ何発打っても同じかも」

「いや、それでいい。 攻撃を繰り返すぞ! 」



             ※※※



旋風(つむじかぜ)! 」

『グウウウッ?! 』


 隙を見つけ接近したクラウスは回転斬りで小規模の竜巻を発生させ、追撃で真上に斬り上げた。

 多くの攻撃を重ねた結果フリードの岩の胸当ては限界を迎え、真っ二つに割れてしまう。十字の赤い線が身体に入る……軽く血も出たがすぐに止まってしまう。

 踏み込みが甘かったからか傷は浅いようだ、フリードは自らの筋肉を収縮させて止血したらしい。


 一度後退しレニと合流する。


「やっとまともな一撃が入った! 」

「で、でもちゃんと加減しないとこの人……」

「分かってるよ! だけどそんな余裕は―――」


『ゥゥゥ……ォォォオオオッ! 』


 フリードは拘束を破った時と同じように雄叫びと共に身体を大きくそらせる。

 岩石の飛散……ではなく地面が隆起し黒色の岩が彼の身体を覆っていく。ジークのロックロックに似た現象だが輝術陣(アーツサークル)は見られない、胸部には不思議な光を放つ結晶が出現しすぐに岩で覆われてしまう。


「あ、あれ! ジークさんに話してた結晶! 」

「……本当か? 」

「ホントだってば! 一回り位大きくなってるみたいだけど……私に向けるとピカって光ってたんだよ」

「壊したくない……とは言ってられないよな、隠れるって事は攻撃されたくないって事だ」

「で、でも―――」


 言葉を交わしている内に岩はフリードの頭部まで覆ってしまう、瞳のような穴が二つ開き、それぞれ紅い光を放つ。ゆっくりと反らせた身体を起こすとナックル・ウォークのような動きで一歩ずつ……ゴリッ、ゴリッと重い音が部屋に響かせながら近づいてくる。


『※※※※※※ !! 』


 もはや人の言葉ではなかった。内部で反響しているからかその声は正確に聞き取れない。身体を軋ませながら肩を突き出し突進してくる。


「ッ、俺狙いか! 」


 二手に分かれ回避行動をとるが相手もクラウスに向けて軌道修正を掛けてきた……このままでは間に合いそうにない。危険を感じ取ったクラウスは脚に輝力を集中させ、力いっぱい地面を蹴る。彼の姿が一瞬消えたと思うと数メートル先に現れていた。巨体はそのまま塞がれた出口の元に向かい激突する。


「……プハッ! あ、アブねぇッ!! 」

「だ、大丈夫?! 一瞬消えたように見えたんだけど……」

「少し無理した。シショーみたいに連続ではできないけど数歩くらいならイケる」


 クラウスの使ったのはシショーが組手の時に見せた特殊な歩法、”俊足”と言う特技であった。未熟ゆえに使用できるのは2~3歩ほど……そのため彼は”俊歩”と呼んでいる。顔には疲労の色が見えたが、袋から取り出した小瓶を飲み干す事で回復は出来たらしい。


「うぇ、苦ッ……」

輝力薬(マナポーション)? 」

「そ、この技消費が激し―――」


『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!! 』


 砂煙の中から再びフリードが出現、クラウスも次は攻撃を試みようとしていた。

 レ二には離れるように告げ、相手に向けて走り出す……ギリギリの所で軸をずらし剣を振るった。


 鉱石に刃がぶつかると激しく火花が舞う、さすがに負荷に耐え切れず武器が砕けてしまう。


「クソッ、武器が……硬すぎるぞアイツ」


「クラウス、こっちこっちッ! 」


 声に反応しレニの方向を向くと、彼女は瓦礫の中から飛び出している柄を指さしていた。

 槌で岩を砕くとポールアックスが姿を現す……それは変異する前のフリードが扱っていた武器であった。


 相手が壁に衝突して動けない隙に合流し、クラウスはポールアックスを手に取る。


「重ッ! 」

「相手の勢いと斧を利用して何とかできないかなって思ったんだけど」

「両手なら何とか、でも動きがかなり遅くなるぞ……っと」

「それじゃ回避が……そうだッ! クラウスちょっと良い? 」


 レニには何か考えがあるらしい、クラウスへその内容を説明すると彼も顔をしかめた。しかし、相手の攻撃による負傷と天秤に掛けると彼女が提案した方法が最善策である事を理解し、渋々承諾。

 クラウスはポールアックスを脇に構えて攻撃に備え、レニは少し離れて前方に光球を出現させる。その光球は最初に放ったモノよりも大きくなっていた、輝力を1つに集中させ威力を上げているらしい。


『※※※!! ※※※※ッ!!! 』

「来るぞッ! 」

「じゃぁ行くよ、せぇ~……のッ! 」


 レニは真横から光球を放った。

 クラウスの身体に触れた瞬間光は弾け、その衝撃で突進の射線上から位置がズレる。彼曰く、”あらかじめ分かっていれば耐える事は可能”らしい。


 想定外の事が起きた事でフリードも咄嗟にブレーキを掛ける、しかし勢いは中々治まらない。途中自身が飛散させた岩に引っかかり宙に舞ってしまう。

 落下してくる相手をしっかりと目に捕らえ、狙いを定めるクラウス……武器の間合いに相手が入り込むと力を込め、斧を振るった。


「グッ……ォラァッッ! 」


 刃はフリードの胸部に深々とめり込んだ。弱点まで到達したからか真紅の瞳は細くなる、おそらくダメージは与えられたのだろう。硬直した巨体がもたれ掛かってくるが斧がつっかえ棒代わりとなり、クラウスは折れる手前で脱出に成功した。


「大丈夫?! 」

「ギリギリッ! まだ油断すんなよ、さっきはそれで痛い目に遭ったんだ」


『※※……ム、ムゥゥゥゥッ!! 』


 ゆっくりと身体を起こし、再び2人の前に立ちはだかるフリード。

 頭部は半分割れ、彼の顔が視認できる。さらに胸部は結晶を覆っていた殻が砕け、ヒビの入った結晶が姿を現していた。


「岩が再生……しない? 」

「多分、弱ってるんじゃないか? 顔も苦しそうだ」


 その場から動かず、二人をジッと睨みつけている。

 胸元の結晶を腕で隠そうとしない……どうやら自身の身体を支えるだけで精一杯の様だ、倒れた際結晶に斧がさらにめり込んだことで大きく力を失ってしまったらしい

 時折唸り声をあげてこちらを威嚇してくる。


「レニ……”アレ”で決めるぞ」

「えッ、でも武器はどうするの? 」

「拳の特技(スタント)を使う、お前から輝力を分けて貰えば気絶しない……多分」


「多分なの?! なら全力でに―――」

「逃げるにしてもここから次の部屋まで真直ぐな一本道、さっきの突進が来たら二人とも潰されてお陀仏だ。今ここで決めるしかないッ」


 クラウスは腰を落とし、右腕を引いて脇に構える。

 レニも数秒悩んだが覚悟を決め、ある技の準備を始めた。


 彼女に光が灯り始め、足元には輝術陣に似た円陣が出現する。本来であれば術を構成する文字と自身の誕生月を司る星座の紋様が描かれるのだが、今現れた円陣には彼らの読めない特殊な文字に三日月、そしてその上には剣が描かれていた。


 彼女に灯った光はクラウスに伸び、彼の右手が輝き始める。


「クラウスッ、準備できたよ! 」

「……突っ込む! 」


 レニの目の前からクラウスの姿が消える。

 次の瞬間、フリードの目の前には光輝く拳を振りかぶったクラウスがいた。


「全てを打ち砕く、この一撃ッ! 灼光拳(しゃこうけん)ッ!! 」



 拳が結晶に接触すると同時に拳へ集められた輝力(マナ)が爆散。

 その衝撃はフリードの巨体へ響き渡る……身体を反らせ、大きく後退させる事は出来たが倒れる事はなかった。



『オオオォッ……』

「ウグッ……渾身の一撃だぞ? タフ過ぎるだろ、アンタ……」


 シショーから禁じられていた徒手空拳による技の使用、それは身体を巡る輝力を一気に放出する事とその反動に肉体が耐えられないからであった。急激な輝力消費により意識が揺らぐ……技を放った右腕は上がらずダラリと下がり血が滴っている。


 歯を食いしばり、残った左腕を引いた状態で対峙しているクラウス……とてもじゃないが、戦闘を続行できる状態ではない。


『ォォ……ォオレは…………まだ―――』



ビシッ……ビシビシッ、パキィンッ!



 一歩踏み出し、レニに向けて腕を伸ばした瞬間、胸の結晶に細かなヒビが入り、光の粒子となって散っていった。身体を覆う岩も徐々に塵となっていき、フリードは地に倒れる。

 クラウスも少し遅れて膝を着いて息を吐いた。


「ハァ~……ギリギリで倒せたみたいだな」

「クラウスッ! 手が……早く治療しないと」

「ちょ、ちょっと待……ギャ―――ガボォッ?! 」



 レニは自身の道具袋から治療薬(ポーション)を取り出し腕に直接かけた。クラウスは悲鳴を上げるもすぐに輝力薬を飲まされ遮られてしまう。右腕への激痛と酸欠によって彼の意識は刈り取られてしまう。


 この後駆け付けたジークとその仲間によって2人は無事保護。クラウスが目覚めたのは翌日の朝、交易都市の宿屋でだった。


 そしてフリードだが……多少の傷や打撲こそはあるものの命に別状はなかった。

 連行中に意識が戻り、尋問を行ったジークに対して口にしたのは”今まで王都に居た”や”盗賊団にお前を誘う所だった”と話がかみ合わない事ばかり……現在は交易都市の勇士協会で拘留中である。


魔物化したフリードの攻撃方法

・腕の振り回し

・タックル

・岩石飛ばし

・結晶からビーム(仮)


結晶ビームは胸部の殻を破壊した際に使わせる予定だった……結局斧による一撃でヒビが入ったので使用不可となる。仮に使用した場合は輝力を放出する際に暴走して自爆する。


討伐後のフリードの状態は、軽い打撲や裂傷がある程度。記憶の欠落に関しては”黒い霧”が関係している……?



・レニの使った技について。

現状で彼女しか扱えない技。効果としては対象(個人)に対して輝力譲渡と光属性付与、体力回復(小)。

魔法陣も普通のとは違う。古代文字のサークルに三日月と剣の紋様が浮かび上がる。



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