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四星剣  作者: KUMA
勇士を目指す少年、記憶を求める少女
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第4話 反撃開始

 倉庫から飛び出るとジークはサイクロプスの猛攻を武器で攻撃を受け流していた。しかし威力を殺しきれておらず、状況は劣勢となっているようだ


「グゥッ……何しとぉっ?! 武器を取りに行くだけやなかったんかい! 」

「スマン! 」


 クラウスは後方から輝力(マナ)の斬撃を放ち援護しながら接近。

 攻撃に気づいたサイクロプスは振りむいた瞬間、彼が最後に放った風刃が目に直撃した。


『ゥオォッ?! 』


 巨大な身体を持っていても急所への一撃は辛いようだ。目を抑えながら数秒暴れた後、足がもつれ座り込んでしまう。その隙にジークはクラウスの元まで後退し、体勢を持ち直した。


「やるやないか……で、何やっとったん? 」

「あの中の人達から早く出せって言われてた。外の様子を伝えたらさっさと倒せって」

「救助対象者か、なら(はよ)うせんとなぁ……そろそろ奴さんも立つぞ」


『グゥ、ガァラァァァァァァッ!! 』



ドドドドドドッ!!



 サイクロプスは雄たけびを上げながら自身の胸を両腕で叩く。目は血走り、2人を睨みつけていた。

 ドラミングが終わると地面にめり込ませ、地中から大岩を取り出す。


「やっべ……おいッ、輝術(アーツ)使えるか?! 」

「いやあまり得意じゃ―――」

「ならさっきの刃を飛ばすヤツでええッ! 掛け声と同時に放つぞ! 」


 【輝術(アーツ)】とは輝力(マナ)と気中のエレメントを反応させる事で火や水を生み出し攻撃を行う戦闘手段の1つ、クラウスの使用した風刃(ふうじん)は【特技(スタント)】と呼ばれており原理が多少違う。


 言い終わったジークは攻撃の準備を始める。足元には黄色の光を放つ円陣が出現する。

 クラウスも剣を構えると青い風が刃に纏い始めた。


『アアアァァァッ! 』


 サイクロプスは肩を突き出し、巨体を揺らしながら突撃してくる。

 迎え撃つように二人も溜めた輝力を解放した。


「グランスパイク! 」


ドドドドドドッ


 ジークの放つ輝術(アーツ)が効果を発揮した、地面から無数の槍がサイクロプスを目がけて射出される。攻撃に気づくが進行方向は変える事は出来ず、槍は次々と突き刺さっていく。


『オオッ、オォォォッ 』


 しかし相手は大地の槍を砕きながら突き進んでくる……身体中の肉が裂け、骨がむき出しとなっても止まる事はなかった。


「コイツッ……風刃!! 」


 相手の勢いを利用して放った技であったがその巨体で掻き消されてしまう、勢いは弱まらず距離は確実に詰められていく。


「アホォッ! あんなデカい胴体狙って意味ないやろ? 脚狙え、脚!!」


 ジークから怒鳴られ相手を注視すると下半身は守りが薄くなっており、胴体に比べて裂傷が酷かった

 クラウスは再び特技を放つ体勢に入った。


「じゃぁこっちだ……真空蒼刃(しんくうそうは)ッ! 」


 放たれたのは刃ではなく楕円状の蒼い風弾であった、それはサイクロプスの元へ真直ぐ向かっていく。

 命中すると片脚は蒼い風に包まれ、突如複数の裂傷が発生……傷口から勢いよく血が噴き出し脚が縺れ、巨体は地面へと叩きつけられた。


『グゥォォッ?! 』


 地面で擦られるように滑り、2人の数メートル前で停止する。

その場でもがくが徐々に動きも鈍くなる、輝術による負傷が影響しているようだ。大きな瞳から光が失われていく……その様子を見て安全と判断したクラウスは近づいて魔物を観察する


「やっぱシショーみたいにはいかないか、いくら巨体でも動いてたら上手く当てられなかったな」

「おい(あん)ちゃん、まだ近づくな。ソイツは……」

「煙出てるし大丈―――ガァッ?! 」


 声に反応し視線が魔物から外れた時、サイクロプスは再び動き出す。目の前にいたクラウスを掴み、持ち上げ咆哮する。


『アアアァァァァァッ!! 』

「コイツまだ生きて……イィッ?! 」


 サイクロプスは相手を握りつぶそうと力を強める。

 クラウスも対抗するが振りほどく事は出来ない、彼の身体は悲鳴を上げていた。


「コイツ……! 大人しく、()ねやッ!! 」


 その場から助走をつけながらジークは武器に輝力を込め、全力で投げた。金色の輝きを放つ棍は相手に近づくにつれて先端が徐々に変化し始める。地の輝力が棍の先端に集中し始め、槍のように鋭利な刃を形成していた。


「ゴガッ……ガァ、ァァァ……」

「アダッ?! 」


 サイクロプスは自身の急所を一撃で貫かれ、最後の力も使い果たしたようだ。

 天に腕を突き上げたまま絶命し、手に隙間が出来た瞬間クラウスは地面に落ちてしまう。その衝撃で手荷物の一部が地面に投げ出されてしまった。


「大丈夫か?! 」

「あ、あぁ、何とか……ッ?! 」


 立ち上がろうとするもすぐにその場へ膝を着いてしまう。

 一瞬であってもあの巨体に潰されかけた事による身体へのダメージは大きかったようだ。


「無理すんなや、お前さん回復錠(ヒール・タブレット)持っとるか? 」

「ヒー……? ポーションならあったけど、今ので割れちまったよ。イツツ……」

「ポーションって、あの苦いヤツか? いまだに使っとるのがいるとは……ってあるやないか、回復錠」


 ジークは地面に投げ出された荷物の中から小さな箱を取り出した。クラウスが脱出した際に遭遇した盗賊の持っていたモノである、振ってみるとカラカラと音が鳴る。

 箱の側面に指をかけ、軽く力を込めると端の一部分が開き、中から白い錠剤が出て来た。


「何だコレ」

「知らんのか? 遅れとるなぁ……まぁ飲んでみ」


 錠剤を受け取り、一瞬躊躇したが彼の言葉を信じ口に運んだ。


 飲み込むとすぐに効果が発揮される、一瞬だが身体の内側から緑の光が溢れてきた。同時に身体から痛みが引き、光が治まる頃には立ち上がれるようになった。


「痛みが……」

「コレが回復錠の効果や、ポーションみたいに苦くもないし手軽に持ち運べる。勇士を目指すんなら覚えとき」

「なんで俺が勇士を目指してるって―――」

「荷物。中の封筒見せてもらったんや、外に出るまで無くすなよ? 」



 その後ジークはこれから来る勇士と共に坑道から脱出するように告げる。しかしクラウスはそれに反論した。


「助けるって……誰をや? 」

「俺と一緒に捕まった奴だよ。作業着みたいな格好してて、栗色の髪をポニテにしてる」

「あぁっ、あのカワイ子ちゃんか! ……しかしなぁ、一般人を危険にさらすわけには―――」

「さ、さっきみたいなことにはならない様に注意はする! アンタの指示にも従うから頼むッ」


 手を合わせて必死に頼み込む様子を見て悩むジーク。

 彼も現状で戦力は欲しいと考えるが、クラウスはまだ見習いの【助士(サポーター)】にすらなっていない。自身の立場上、一般人を危険に巻き込むわけにもいかないのだ。


 そこである考えを思いつく。


「……せや、この方法ならまだなんとかなるかもなぁ。クラウス、書類貸してみぃ」

「あ、あぁ。ホラ、これだろ? 」

「おおきに。少し待ってな~」


 ジークは書類を受け取ると背を向けてしまう。

 書類を取り出した時に一瞬動きを止め、クラウスをチラリと見るがそのまま作業に戻る……どうやら何か書き込んでいるらしい。


「よ~しッ! じゃぁ今から【助士(サポーター)認定試験】を始めるでぇ。気張って合格せぇよ? 」

「……は? 」

「んでもって俺が試験官や。コレ、受験票な」


 ジークは封筒と共に一枚の小さな紙を渡す、大きさは名刺程で顔写真が張られていた。

 クラウスはいまだに理解が追いついていないようだ。


「試験内容は坑道に潜む盗賊団親方を無力化する事。安全を考えてこっちの指示には従ってもらうが、無理は禁物やで。ええな? 」

「あ、あぁ分かった……いや、待っ―――」

「しっかり着いてきてなぁ、さっきみたいな事が起きたら減点対象やさかい気ぃつけぇや。じゃぁ試験開始やで」


 一方的に話を終えると捕らえられてる民間人の元へ向かってしまう。

数分で出てくると扉の前に小型の機械を設置、機械のてっぺんから棒状の金属が出てくる。先端にはライトが付けられており、伸びるのが止まると一定の間隔で光り始めた。

 ジークは軽く説明をするとそのまま坑道の道を戻り始める、どうやら坑道前に待機している味方へ連絡を取っているらしい。クラウスもようやく状況を理解し、ジークの後を追った。



 クラウスとジークがエリアから離れてほぼ同時だった。サイクロプスの遺体は徐々に黒く染まり、地面へ溶けるようにゆっくりと沈んでいく。民間人の救助に来た勇士が到着したときには完全に姿を消していた。


 坑道の最奥に到着した二人が対峙したのは―――




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