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第5話『遺跡より発掘されし兵器』

リフレッシュしたとはいえ、大変な任務の後に序列戦を行ったのだから、その疲れは取りきれていない。

それでも、さほど難易度の高い任務でなければ問題ないと思われた。

だが、〈莉緒小隊〉はよく考えてみれば、将真が狙われている身だ。

そして何かと良くない事を引きつけやすい、不幸体質のリンまで共に行動しているものだから、学園長からは「しばらく外に出ての実戦は禁止」と、都市内での簡単な任務をこなす羽目になっていた。


リンは少しでも実戦をこなして、現在も続くこの原因不明の弱体化を克服したいようだが、無茶をしていいことは無い。

将真も、〈魔王〉の力を無闇矢鱈と使うわけにも行かず、故にあまり難易度が高い任務を受ける余裕はない。

とはいえ将真は、〈エクス・ブラスター〉を使えるので、以前に比べれば遥かに強く、素のままで戦えるのだが。


それはそれとして、今までと比べて極端に低い難易度の任務を、ぽつぽつとこなしていく将真たちは、経験して初めて、〈日本都市〉の中にもかなり多くの任務が存在することを知ったわけである。

魔導師からしてみれば雑務でも、一般人からしてみれば大仕事、機械を使わなければ難しいという事もある。


例えば、大量に積み重ねられた木材や鉄柱があるとして、一般人ならば機械を使わなければならない。それを魔導師は、場合によっては軽々と持ち上げる。

もちろん、何もせずにそんなものが持ち上がる訳ではなく、基礎的な肉体強化である。

魔導師が、〈自警団〉以外にも、工場などで重宝されるのは、そういう大きなメリットがあるからだ。


今もまた、将真とリンがひょいひょいと大荷物を抱えて動き回り、繊細に扱う必要のあるものは、莉緒が担当していた。


「リン、大丈夫そうかー?」

「うん。まだ軽い方だからね」


その会話を、ありえないと言いたげな表情で見つめる工場の従業員。

魔導師を手伝いに呼ぶたびに見ているはずなのだが、何度見ても慣れないようだ。


まあ、少年少女が、人が持つには重い軽いもないような超重量物を持ち運んでいるのだから無理もないが。


加えて莉緒は、割れ物などを跳び回りながら運んでいる状態だ。


「……何度見ても信じられんな。魔導師が強いのは分かっていたが、まさか子供の時点でこれだけ力があるとは」

「しかもあの、小柄な女の子まで、大の大人の何倍だってくらい力ありますよね」

「あれは学園内でもトップクラスらしいから、普通の魔導師と比較してもしょうがないぞ。それよりさっさと仕事にもどれ」


彼らの仕事は様々だ。

工事、引越しの手伝い、運搬業。

現状、将真とリンは工事の手伝いにあたり、身軽な莉緒は、色々と運搬を担当していた。


将真たちは、途中から気がついていた。

ただ力のある魔導師と言うだけでは、この任務は完遂できないという事に。

例えば、将真やリンが持ち運んでいる木材や鉄柱。出来れば迅速に運搬してしまいたいところだが、何分、物の長さがある。

人や物に接触させる事なく、出来るだけ多くを素早く持ち運びしなければならない。


その結果、集中力と視野を広く保つという点においての鍛錬になる。

さらに重いものを持ち上げていることもあって、肉体的には勿論、基礎的な強化魔法の成長も見込めるのだから、戦闘任務に比べると地味だが、十分すぎるほどのメリットがあった。


そして莉緒の仕事も、運搬する物の中には、壊れやすいものもある。

それらをいかに傷つけることなく、迅速に必要な場所へと届けることが出来るか。

勿論、仕事が優先なので、傷つけないことを第一に考え、最初は慎重にならざるを得ない。

だが、慣れてくると莉緒は、そのペースを徐々にあげていったのである。

莉緒にとっては、集中力はもちろんのこと、動きをより精錬させる鍛錬にもなっていた。


現状、不調が続くリンでもこなせる上に、基礎から見直すことが出来るいいチャンス。これを機に、リンが復活を遂げることもあるかもしれない。


「__よし、サクッと終わらせるぞ!」

「うん!」


改めて気合を入れ直した将真とリンは、莉緒に負けじとペースを上げていった。




従業員と交代で休憩に入っていた夕方頃、柚葉から呼び出しを受けた将真たちは、一度集合して、依頼主からの許可をもらった。

これで、任務は完遂したことになり、心置き無く柚葉の元に駆けつけることが出来る。


そうして学園長室に到着すると、将真たち同様、呼び出された何人かの生徒が視線を向ける。

あまり関わることのない生徒が多かったが、中には知っている顔もあった。


将真たちは、その二人の元へと駆け寄る。


「ん、将真か」

「リンさんと莉緒さんも一緒だね!」


猛と真尋、御白兄妹だ。

どうやら猛も真尋も、小隊メンバーと一緒ではなく、兄弟で呼び出されたということらしい。

正確には、呼び出されたのは真尋であって、猛は付き添いだったが。


そして少し離れた位置には、〈星宮家〉の三人も。


一体なんの集まりかと思ったが、将真たちの後に入ってきた生徒で全員だったらしく、柚葉が立ちあがる。


「呼び出した全員がいる訳では無いけれど、まあ強制ではないし、むしろ大勢来てくれて感謝するわ。……〈莉緒小隊〉と〈空小隊〉は強制だったけど、ちゃんと来てくれてるしね」

「えっ、私たちですか?」

「俺らなんかしたか?」


戸惑うような空と、なにか呼び出されるような覚えもなく首を傾げる将真。

その小隊メンバーも似たような表情を浮かべ、それに対してむしろ少し呆れたように、柚葉はため息をついた。


「あのねぇ、わざわざあなた達二つの小隊は強制で呼び出したんだから、検討つくでしょ?」

「いや、そんな事言われても……」

「……あ、もしかしてこの前の遺跡の任務っすか?」


思い出したように声を漏らすと、莉緒がそれを口にする。柚葉は肯定するように頷くと、何故か少し笑みを浮かべた。


「そうよ。報告に受けたマッド〈嫌悪〉の出現は予想外だったけれど、あの遺跡の難易度は本来、そこまで異常な難易度ではないのよ」

「まあ、それは分かったけど」


最大でも第七階層まで、と言っていた柚葉の予想は外れて、さらに一層、先があったのだが。


「五層より先がある遺跡には、何かあるってのはもう知ってると思うけど」

「昔の財宝とか魔導具とか、あとは当時の文明に関する物……、そんな感じだっけ?」

「そうよ。そして今回、遺跡の難易度からは考えられない、とんでもないものが出土したの。まあ、本来なら最深部にあるはずのものを、何故か地下で見つけたんだけど」


柚葉の言葉に、将真たちは首を傾げる。

あの遺跡は上に続くタイプだった。行きは余裕がなかったものの、帰りも見てきたのだから覚えている。


地下に続く道を、見た覚えはない。


「どうやって地下に行ったんだよ?」

「下から魔力の反応があったから、床をぶち抜いて」


(強引すぎるだろ……)


方法があまりにも力押しだった事に、呆れを隠さない将真だったが、柚葉はあまり気にすることなく、話を戻す。


「そこにあったのは、少なくとも現在明らかになっている昔の技術力では、到底作れるようなものでは無い__ロボットよ」

『……ロボット?』


大半の生徒達は、意味がわからないと首を傾げて呟く。

それを見て柚葉は、説明を続ける。


「そう、ロボットよ。大きさはだいたい五メートルくらいかしらね。乗り込むタイプと言うよりは、装着する感じだと思うわ。おそらく、パワードスーツみたいな感じで、操縦士の能力を高めてくれると思うんだけど……」

「何でそんなに曖昧なんだよ説明下手かっ!」


思わず突っ込む将真だが、柚葉に強く睨まれて目を逸らす。すると柚葉は、ため息をついて曖昧なわけを口にした。


「仕方が無いでしょう? 〈自警団〉の研究部で調べてもわからないことが多いのよ。それにどうも、起動には何らかの条件があって、明確になっているのは魔力の強すぎない魔導師である事だけ」

「何でそれだけしか分かってないんすか?」

「〈自警団〉の魔導師で調べて見たところ、魔力が強すぎると……、まあつまり多過ぎると、起動以前にロボットの方が耐えられないのよ」


実験において、既にそういうデータが出ていて、それが唯一分かっていることらしい。

そして、こうしてここに何十人もの学生が集められた意味も、ようやく明らかになった。


「〈莉緒小隊〉と〈空小隊〉、そしてそこにいる猛を除いて、ここにいる生徒達はそのロボットに適性があるかもしれない、そういう子たちよ」

「猛は妹の身を案じて見に来ているんだけども、残りの二小隊は、任務を完遂したわけだから、見る権利くらいはあると思ってね」


ふうさんいたのかよ……)


将真たちからは見えなかったが、大勢の生徒達が集まる中に埋もれて、どうやら美空楓もいたようだ。

柚葉の秘書として動いているので、当然といえば当然だが。


そんな風に、内心で少し驚いている将真は放っておいて、柚葉はその場から移動し始める。


「今から早速、そのロボットのところまで案内するわ。全員ついてらっしゃい」

『はいっ』


期待と不安が混ざり合うような心境の生徒達が、少し上ずった声ながらもしっかりと返事をした。

そんな生徒達を見ながら、将真は思わず顔を顰めた。


(こいつら、大丈夫なのか……?)




学園の地下の方へと入っていくと、少し大きな扉が目に入る。

それを柚葉が開けて、全員がその中へと入っていく。


中は薄暗く、結構先があるのか、奥が見えない状態だった。


「ここは……?」

「ここはね__」

「__あら、思ったより早く集まったのね」


将真の問いかけに柚葉が答える前に、暗がりの奥から女性の声が聞こえてきた。

そして現れたのは、いつものように、〈自警団〉の服を身につけ、吸血鬼の貴族の正装を肩にかけた瑠衣だった。


「なんで瑠衣さんがここに?」

「それは、この倉庫が、私の中だからよ」

『……は?』


瑠衣の言っていることがわからず、生徒たちは首を傾げていた。

その様子を見た柚葉が、苦笑を浮かべながら、改めてこの場所の説明をする。


「ここは、瑠衣さんが使う〈影魔法〉の中よ。瑠衣さんの影の中には幾つもの空間があって、この倉庫はその一つ。貴重なものだからということも理由の一つだけれど、直接街中まで持ち込むと騒ぎになりそうだから、現地で直接、瑠衣さんの影の中に保管したの」

「そういう事」


柚葉に続いて、頷き肯定を示すと、瑠衣はパチンっと指を鳴らす。

すると、倉庫の中の灯りがついて、中の全貌が明らかになる。


予想していたよりも空間が広がっていた。

倉庫と言うよりも格納庫の方が近いかもしれない。

ここは瑠衣の影の中だと言うから、ロボットを収納する為の場所として、新しく作ったのだろうか。


そして、明かりに照らされる事で暗がりの奥が見通せるようになった。

そこにそれはあった。


パワードスーツというのもわかる気がする。

確かにこれは、乗ると言う感じのものではなく、装着するという方が正しいのだろう。

間違いなくロボット兵器のような形状をしているが、そこに人が入るのか、中心だけは特に目立ったものはなかった。


「色々調べさせてわかったんだけど、どうやら周囲の魔力を無害なものへと変換できるみたい。多分、使用者の魔力をそうやって補うんでしょうね」

「……このロボット、名前とかあるの?」


呆気に取られたまま、リンが気になっていたことをぽつりと呟いた。

柚葉は、少し目を見開いて、瑠衣の方を見る。だが、瑠衣もまた頭を振る。

どうやら、名前はないようだ。


「いまから、これを起動できるかのテストをしようと思ってね。ちなみに、起動できた子には、もれなくこれをプレゼントするわよ」


柚葉のその言葉を聞き、生徒達が沸きあがる。

少しうずうずし始めた将真だったが、それを見つけた莉緒が、近くの将真やリンにだけ聞こえる程度の小さな声で、ぼそっと呟いた。


「将真さんは使えないっすよ」

「べっ! ……別に使いたいとか思ってたわけじゃねーよ」

「……」

「…………興味あったんだよ悪いかよ」

「そ、そうだね……」


将真をからかう莉緒をみて、リンが引きつった笑みを浮かべた。

その表情の意味は分からなかったが、直ぐにリンがソワソワとロボットのほうに視線を移していたので、何となく察しはついた。


「……もしかして、リンも興味ある……、のか?」

「え、えっと……、まあその……」


図星だったようで、リンは少し顔を赤くして口籠もった。

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